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俺の学園生活は何かが間違っている  作者: いんぱらす
始まりは残念系・・・
6/21

因縁、そして想い

 「くそ・・・どこだ!」俺は愛華と回った店の近くを捜索しながら遠巻きを眺める。

「(まさか、遠くに既に運ばれたってのか・・・?!)」「秋良さん!」「あっくん!」「!!!!」俺の背後から聞きなれた声が聞こえる。

「涼花、心結っ!」「あっくん・・・」「秋良さん、大変です!」「どうしたってんだ、あれ・・柏木は・・?」「麗香ちゃんが数人の男の人に囲まれてあっちの廃ビルに・・・!」そういって指差した場所には見覚えのある廃ビル、あれは俺が中高生のヤクザグループともめた時の場所だ。

「くそっっ!!」「あっくん・・・どうしよ・・」「秋良さん・・・」「お前達はここで待機していてくれ、今電話で愛華と大樹を呼ぶ、そしたら4人で出来るだけ人目から離れた場所へ・・」「あっくんは・・どうするの?」「もちろん柏木を助けに行く」俺はその会話の間に愛華へと電話をかけていた。

『兄ちゃん!どう?見つかった?』「ああ、心結と涼花は発見した 柏木が廃ビルに連れてかれたみたいだ、今から助けに向かう 今二人がいる場所は・・」『兄ちゃん!警察に任せようよ、兄ちゃんが自ら危険に身を晒す意味はないよっ!』愛華の声はその怒声とは裏腹に泣き出しそうな声だった。

「・・・分かってる、分かってるんだけどさ」俺は言葉を切った。

「やっぱ、俺が助けないと 意味ないんだよ」『・・・・』通話先の愛華が黙りこくる。

『・・・分かったよ、その代わり怪我一つごとにお小遣い千円UPね』「そりゃ怖え、涼花と心結はたい焼き屋の屋台の前にいる、大樹とお前で迎えに来てくれ 後後の行動パターンは二人に教えておいたから」それじゃ、そういって俺は電話を切った、さて・・・柏木を助けに向かうぞ。


 「・・・」「愛華ちゃん、何ていってたんだ秋良の奴は」「今から廃ビルに助けに向かうんだって・・・」「バカ野郎・・・!」大樹と愛華はその場で立ち尽くす、

「・・・まずは心結さんと涼花さんのところへ向かいましょ、それからよ」「ああ!」大樹と愛華は駆け出す、目指す先は秋良に教えられた屋台の前だ。

「愛華ちゃん!」「愛華さん!」「心結さん、涼花さん・・・兄ちゃんは、もう行きましたか?」「そのことなんだけど・・・」歯切れの悪い言い方で話し始める心結、こういう時は大体危ない事しかない。

「何?」「その・・、あっくんが向かった廃ビルにはヤクザが沢山いるの」「その程度なら兄ちゃんが何とか・・」「それだけじゃないのよ!・・・彼らは武装していたわ、銃関連はないにせよ刃物は持ち合わせてると思うの・・」「うそ・・・!!」愛華の顔から血の気が引いていくのが傍目にも理解できる。

「・・・七瀬さん、姫岸」「大樹?」「大樹さん?」「お前らはどっか人目のつかないところに隠れててくれ、俺がアイツの援護に向かう」「!!!」「大樹さん・・・!」愛華と心結と涼花が驚きで目を丸く見開く。

「愛華ちゃんもだ、女の子に怪我させられないからね」「けど・・・!」「愛華ちゃんは頭がいいんだよね?なら理解して欲しい、今この状況で正常に動けるのは俺と秋良と君だけだ それに秋良との約束、愛華ちゃんを守るって事も無下にできない」「・・・」愛華は少し下を向いて何か考える素振りを見せてこういった。

「わかったわ、なら大樹さん、アナタも怪我したら怪我一つに付き千円ね」「ははは・・・ヤクザより怖いよ」乾いた笑い声を上げて大樹は廃ビルを眺める。

「今行くぞ、秋良」そういって大樹は駆け出した、それは衝動的な何かではなく、確信があった中で何故か走り出したような、右だと分かっているのに左に進むような そんな雰囲気で大樹は駆け出した。

「大樹さん、兄ちゃん・・・!」愛華がただひとり、その場で祈るように空を見上げていた。


 「ここか・・」俺は廃ビルの入口へとたどり着いた。

屋上で焚き火のような明るい灯火が見えたところからして、屋上でたむろしているのだろう。

「いくぞ・・・!」俺は廃ビル内部へとダッシュで駆け出した。


 内部はそんな古臭いイメージがなかった、日頃の手入れが行き届いているのか、業者にでも頼んでいるのか。

そんな真新しさがある廃ビルの階段をテンポ良く3段飛ばしで駆け上がる。

「おい!いたぞ!」頭上から声が聞こえる、ここは3階 屋上までは後4階 この階から喧嘩するのか・・・。

自分のスタミナを考えて俺は三段飛ばしを二段飛ばしへと変更し、階上へと上る、そこには。

「へへへ・・・」手には小型のジャックナイフを握る少年達10数名。

「っち・・・」心結達から聞いてはいたが、やっぱ刃物相手は厳しいな・・・。

「死ね!」突っ込み気味の刺突攻撃は、刃物に慣れてないのが功を奏し微妙に不安定だ。

「ハッ!」俺は刺突の際の腕を右手で掴み、顔の右横へといなす。

「な・・・!」「でや!」俺はいなした右手の刃物を左手のパンチで叩き落す。

「ぐ・・」「そら!」俺の膝蹴りが鳩尾にクリティカルヒットし、目の前の中学三年生らしき子は倒れ込んだ。

「野郎っ!皆ァ、やっちまえやぁ!」「「「「「おう!!」」」」」背後から残りの全員が突っ込んでくる。

「まずい・・!」「うぉおおおおりゃあああああ!!」「!?」突然背後から横薙気味の投擲で回転がかった手持ちサイズの鉄骨が空を舞う。

「が!」「ぐぅ!」「げふ!」「ぎゃあ!」「げほ・・!」「ぐぎ・・!」鉄骨は集団の中央へと飛び、メンバーの大半を痛めつける結果となった。

「誰・・だ?」「俺だよ、秋良」「!」聞き覚えのある、気持ち悪い声。

「大樹・・・か?」「おう、愛華ちゃんと約束したかんな、怪我をしてこねぇってよ」「お前・・!なんでここに!」「借りを作りっぱなしってのは癪なんだ、俺にも挽回のチャンス位くれよな?」ふざけたようなおどけたような、だがそれでいて眼光はしっかりと俺を見据える目の前の大樹は、とても頼りがいがあった。

「・・・仕方ねぇな、借金返済のチャンスをやるよ コイツらをそこらへんの鉄柱に縛り付けといてくれ」「あいよ」「その時お前が怪我したら借り5倍な」「ちぇ、ケチなやつだ」そう言いながら意識の途絶えていないヤクザへと右ストレートを叩き込み気絶させて縛り付ける、とても手馴れた感じだ。

「任せたぞ」「おう」俺は親友に背中を預けて階段を駆け上がる、目指すは屋上だ。


 「・・・着いたな」俺は廃ビルの屋上の扉前で肩で息をする。

「・・・開けるぞ」俺が扉へ手をかけて開ける、ギィィという古い金属製の扉によくある嫌な音が聞こえる。

「待ってたぜ」「テメェは・・・」目の前にいる男、身長190cm程で体重は100kg位の大仏のような男の名は「可香谷賢治」、このグループのドンで 俺とは因縁深い人物だ。

「あの時の事も含めて完璧に、木っ端微塵に叩き潰す・・!」「やってみろ」俺と賢治が対峙する。

「んーっ!んーっ!」背後からガムテで声を遮られた時の音がする、柏木か・・・!?

後ろに柏木はいなかった、目の前の賢治が声真似でその声を出していたのだ。

「あらよっ!」「が・・・!」後ろを向いた俺の背中に思い一撃が加わる。

「喧嘩中に余所見するたぁ、基本がなってねぇ」「くそ・・!」目の前の賢治はストリートファイトを生業とする根っからの悪だ、勝つためには手段を選ばない所からも見て取れるだろう。

「あの女はあっちだよ」指さした場所には手足を縛られガムテで口を抑えられて寝転された柏木がいた。

「けけけ、さっさと俺をやらねぇとどうなっか知んねぇぜ?」「くそ・・ったれがぁ!!!」俺が低空ダッシュで足元へと駆ける、そしてローキック。

「あめぇ!」あの図体で高く跳躍する賢治、そのまま俺の足へと直下降。

「うおらああああああ!」俺は足を咄嗟に引いて足骨折攻撃を回避し、降りてきた賢治へと渾身の回し蹴りを食らわす。

「が・・!」顔面にかかとが入る、だがその瞬間に俺の足を掴んでハンマー投げの要領でぶん回し地面へと投げつける。

「がっ・・ハァッ!!」肺から空気が抜け、血が口から溢れ出る。

「け・・、やっぱあめぇよ お前はあめぇ」目の前の賢治は左頬に靴のかかとによる切り傷ができている。

「だぁああああああああ!!」俺は鉄の味がする口で大声を上げて奴の鳩尾を狙い打つ。

「が・・!」「喰らえやあああああああ!!」鳩尾へと入り怯む賢治へ強烈なローキックで膝関節を蹴る。

その後は俺の無限コンボが続いた、蹴って後ろへ下がった勢いに合わせてドロップキックで押し倒し、マウントを取って顔面を殴りつける、途中マウントが崩れたが、それすらも予想に組み込んでコンボへと繋げる。

数分後には俺の額と頬、右腕左腕の各所に切り傷、足に打撲傷と重症の怪我を負いつつゆらゆらとお互いに立ち上がる。

「くそ・・愛華との約束・・守れなかったな・・・!」「・・・いくぜ」賢治の顔は腫れ上がり、顔の各所と体全体が傷に覆われていた。

「死ねぇ!!!」そういって腰から隠し武器であろう投擲短剣を取り出して柏木へと肉迫する賢治。

「やめろっ!!!!」俺は痛む両足へムチのように平手を打って無理やり追いかける。

「ひゃはははは!こうなりゃてめぇは前回と同じだぜぇ!」「クソ野郎が!てめぇなんざの好きにゃさせねぇ!」俺は玉砕覚悟で奴の背中に飛びついて足をかける、が。

「あめぇぜ!」その掛け技はいとも簡単に躱され、俺は振り落とされる。

「ひゃーーはっはっはっは!」賢治が立っている場所は柏木と正対する場所、柏木の背後は敗れかけのフェンス一枚、賢治の背後は緊急時の業務員避難用のマンホールサイズの抜け穴、今となっちゃ使えない代物だ。

「くそ・・・ったれが・・!」「見やがれコラァ!」賢治が倒れ込んで動けない俺の脇腹へと蹴りを入れる。

「ぐ・・・!」「見てろよ、テメェの大事な大事なお友達を痛めつけてやらぁ!」そういってまた柏木へと近づく賢治、やめろ・・・よせ・・・!!!

遠のきそうになる意識を必死に手繰り寄せ、匍匐前進の要領で少しずつ少しずつ近づく俺。

「死ねぇ!!!」「やめろおおおおおお!!」ガン、それは刃物で刺すには不釣り合いな音がした。

「て・・・めぇ・・は・・・!」「間に合ったみてぇだな!」「大・・・樹・・・か・・・」さっきの手持ちサイズの鉄骨を持っている大樹は業務員避難用の通路から飛び出して賢治の頭を叩いた。

「ありがと・・・よ・・・」遠のく意識、暗くなる視界 自然に身を委ねて俺は倒れ込んだ。


 目が覚めると病院だった、日付は7月5日 花火大会当日から三日も寝込んだらしい。

「痛っ!」ズキンと全身に走る鋭い痛み、重量級のあのナックルを何発ももらったんだ 当たり前か。

ガララ、病室の扉が開く音がする。

「桜田君・・・?」「柏木か・・!?良かった、助かったんだな!」綺麗で透き通った声を聞いて安心する俺。

「あの後大樹君が私の拘束を解いて、桜田君を肩に背負って先導してくれたんです・・」「大樹の奴・・・」これで例の借りはなくなっちまったなぁ・・・。

「私なんかの為に・・・どうして来たんですか・・・そのせいで怪我して、ホントに・・バカ」涙ぐむ柏木は俺の胸へ顔を押し付けて軽くポカポカと拳で叩く。

言葉とは裏腹に、その瞳には嬉しそうな色があった、その瞳は何故か懐かしい思いを連想させる。

『秋良は、いつまでたっても私のヒーローだよっ!』イジメられていた女の子を助けた時にかけてもらった言葉が脳裏を駆け巡る。

「・・・やっぱり、変わらないね」「?」その口調だと俺を昔から知っているみたいじゃないか。

「やっぱ・・・変わらないよ、相変わらずヒーローやってるね」「・・・」その言葉は今思い出した女の子の言葉に似ている、だけど何故か俺には柏木がその女の子には見えない。

「ふふっ、やっぱり髪を下ろしたら分からないよね・・・」そう言って髪の毛をツインテールのような結びにする。

「・・・お前は・・・」「秋良は、いつまでたっても私のヒーローだよ・・!」涙声でそう呟く柏木はその子と完璧に合致していた。

「レーちゃん?・・・」「そう、昔みたいに、またあだ名で呼んでくれる?」瞳にいっぱいの涙を浮かべ、今にも大声で泣き出しそうな感覚を必死にこらえ、俺に問う柏木。

「・・・あぁ、やっぱ俺はお前のヒーローじゃなくちゃな」「・・・秋良っ!!」「痛ぇよ」「知らないっ!私を心配で不安にさせた罰!!」威勢いい声とは真逆に俺の胸元で泣き叫ぶ麗香は、あの頃と変わってなかった。

「レーちゃん・・・」「秋良、また・・・仲良くしてくれる?」「勿論」俺はそう答えて目を閉じる。

良かった、俺は約束を破ってなかった これで、一安心だ。

「・・・あ」約束で思い出した、愛華・・・。

『傷一つに付き千円UP』俺の傷は少なめに見積もっても10はある、ってことは1万円・・・。

「・・はぁ」やっぱり感動の場面でも俺の生活は残念きわまりないのだった・・・、トホホ。

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