帰宅すると妹が・・・
「・・・チェックメイト、か」感覚でいえば、歩兵一枚と王将一枚のみの残った将棋・・って感じ。
今俺はダッシュで家へと向かっている、結局時間は4時オーバーしたので俺のゲーム時間がある程度削られた。
「はぁ・・」女子3人、勝手に争うのはいいんだが俺が巻き込まれるとか最悪だよ。
「ま・・・気にしても意味ない、過ぎた事だ まずは簡単な夕食を・・」ガチャリ、俺は鍵を開けて自宅へと入室した。
「ひやあ!」「なっ!?」俺が玄関で靴を脱いでリビングのトビラを開けると、全裸の愛華がいた。
格好からして風呂上りなのだろう、体の肌は薄い朱色に上気していて、髪の毛は少し湿っている。
「おま・・!何してんだよっ!?」「それはこっちのセリフよぉぉー!」ベゴシ、何故か風呂場にある風呂桶で俺が頭を殴られた。
「ちょ・・!俺悪くねぇだろ!お前が全裸でパーリーしてんのが悪いだろ!」「ぱ・・パーリーしてないもんっ!」「端から見りゃパーリーってんだよ!」俺は別に愛華の裸などに興味はないが、お互いお年頃だ、不健全な事は出来るだけ控えたい。
「ったく・・・さっさと服着て来い」「兄ちゃんのバカァ」スタタタと去っていく愛華、バカはお前だろ・・・あ、どっちかっていうと俺か。
「さってと、料理料理・・」冷蔵庫を開けると中はからっぽ、愛華の飲みかけのカルピスしか入ってない。
「あいつ・・・」出来れば飲み干しておいて欲しい、あんな白い液体を飲んでる姿を想像するといろいろとヤバイ。
「愛華ーっ!」「何さ」めっちゃ不機嫌ですやん。
「買い物行くんだけどついてくるか?」「・・・」しばらくの思考の後、愛華はこう告げた。
「いくっ!」「分かった、早く準備してこいよ」俺はエコバッグを持って、財布を持って玄関で待つ。
「お待たせーっ!」「おう」愛華は髪の毛をツインテールとかいうやつにして走ってくる、ツインテールが風になびく姿は中々様になってる。
「んじゃ行くか」「うん」さっきまでのギクシャクさは無く、自然に会話をする俺達 やっぱ兄妹はこうじゃないとね。
「あ、あとでお母さんに裸見られたって報告するからね」訂正、兄妹愛なんて嘘っぱちですよ。
俺の家から600m程先にある大型スーパー、ここは行きつけの店で 時々値引きサービスも行っていて消費者にとても優しい。
「ねぇねぇ兄ちゃん」「何だ?」「お菓子買って♡」「・・・」買い物に付いてくると毎回こうだ、お菓子をねだってくる、なのに体型が維持できてるのは日頃の行いの成果なのだろうか。
「うわ・・可愛いなあの子」「チョー綺麗じゃん、ツインテ似合う3次元とかパないわ」「え、あれ不良じゃん、もしかして弱み握られちゃってるの?」「助けてあげれば惚れられるかな?」「一撃必殺~・・無理でした」。
俺がスーパーまで向かう道のりで出会った老若男女のコメント集だ。
俺をバカにする声があると愛華が「お兄ちゃんだもん!」と威勢よくまくし立ててくれる。
だがしかし、かといってお菓子を買ってあげるわけにはいかない、なぜならば・・・!
「お前、ポテチ3袋一日で食うじゃん・・・」そう、こいつは菓子を食べる時だけ大食漢になるのだ、漢じゃないけど。
容姿の端麗さとは裏腹にコイツの菓子代で結構な額持って行かれているのは事実なのだ。
「(見た目で判断する奴多いからな、もしそんなのが少なきゃ俺だって・・・)」ついイラっとする心を冷静沈着に押え付けて愛華の言い訳に耳を傾ける。
「だ・・だって、ポテチ美味しいんだもん」拗ねた口調は何も知らない男の人が見りゃもう、即お持ち帰りって感じだろうけど、見慣れてる俺からすれば小芝居に過ぎない。
「はぁ・・・仕方ねぇな 1袋で我慢しろよ?」「うんうんっ!」けど俺はあまり愛華に厳しく接しない、というよりした事がないしする気もない、元来のシスコンと言われりゃそれで終わりだが、まぁ・・俺も色々とね。
「ありがとぉー」袋を抱きかかえる愛華はとても可愛らしい、身長の小ささも相まって一種のお人形さんみたいだ。
「ったく・・・」「あれ?あっくん」「ほえ?」俺が振り向くとそこには心結がいた。
「心結?お前も夕食の買い出しか?」「まー、そんな感じかな」「誰この人?」「ああ、愛華は知らないのか、俺の幼馴染の心結だよ」「心結さん?」「えー、あっくんの妹可愛いぃぃ」ギュゥゥっと愛華を抱きしめる心結。
「く・・くるし・・」「あはぁ!」もうそれはそれはご堪能頂いたようで愛華は開放されるとケホケホいいながら俺の背後に周る、この場合は暗に「この人怖い」を意味する。
「お前だけか?」「うん」「あ・・・話さないといけないことが」「なになに?」興味津々、といった感じで俺を問い詰める心結、まぁどうせ俺がことを話し始めれば不機嫌になるのは目に見えて分かってるがな。
「あー・・・、花火大会の人数増えそうなんだよな、てか増えた」「Hueta?ちゃんと日本語話してよ、あっくん」「いや、『増えた』って日本語ですけど」「?」く・・コイツどうやっても認めない気だ。
「七瀬涼花、俺が入学当日助けた女の子だよ」「あー、そういえばあっくん入学式の時服ぼろっぼろだったもんね」「ああ」そこから俺のヤンキー疑惑へと話は繋がる、ったく俺の目の前で派手に見せつけるから俺まで被害受けちまったじゃねぇかよあのヤンキー共。
「で、涼花って人が加わると」「はい」ゴゴゴゴゴ、それは日常ではありえないオーラだ、いっそバトルアクションに方向転換した方がよさげかも知れない そう思うくらい目の前の心結は怖い。
「(ひぃぃ・・どうしましょ、どうしましょ・・・)」無言のプレッシャーと般若の形相が混じり合って圧倒的な恐ろしさが醸し出される、するとそこに割ってはいるかのように愛華が参戦。
「花火大会?私もいくーっ!」お前は悪魔か。
バカ野郎!ただでさえ男女比率がおかしいこの時にお前まで割り込んでどうすんだよ、絶対心結怒っ「愛華ちゃん来るのー?ならいいやぁ」「いいんかい!?」てると思ったけど勘違い、可愛いは正義とはよく言ったものだ。
「愛華がか?」「ダメ?」「う・・・」ウルウルと瞳を潤ませる愛華、俺のこの声は別に目の前の愛華が可憐だから出たのではない 愛華の右ストレートが鳩尾周辺にクリティカルヒットしたからだ。
「い・・いいんじゃ・・ないかな」「ほんとっ!?やったー」肯定しなきゃ俺の存在が否定される。
「んじゃ帰るか愛華」「うん」「じゃあね、あっくん、愛華ちゃん」「じゃあなー」「ばいばい」恐る恐るといった感じで手を振る愛華、「きゃは」という歓声に顔を引きつらせビクっとしているのは俺だけが確認できた。
「はぁ・・・」溜息一つ、ってか溜息以外に出る言葉がねぇ。
「(花火大会、戦場の柏木・心結、気持ち悪い大樹、筋肉フェチの涼花、サディストシスターの愛華)」新たに加わった新勢力、最も俺のHP(リアルな意味)を減らしてくる兵器が登場しやがった。
「・・・完璧チェックメイトだ」「?」俺のつぶやきに首を傾げる愛華、そりゃそうなるわな。
あー・・・ダメだ 絶対花火大会で事件起きるよ・・・修羅場だ・・・よ? 「修羅場・・・」大樹の言った言葉が蘇る。
『んじゃ拝ませてもらおっかなぁ 修羅場♫』まさか、奴の情報提供でこんな・・・。
「あの野郎・・・!!!」やっぱり大樹の情報は俺にとって損でしかない、明日アイツの顔面に北●百烈拳食らわしたるわ。