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俺の学園生活は何かが間違っている  作者: いんぱらす
変則的な日々
14/21

許嫁と幼馴染に板挟み!?

 「ね・・ねぇ、彼女ってどんな感じに振る舞えばいいの?」俺の家の目前まで来て急に慌てた声をあげる心結。

「さぁ・・、何かキャキャウフフしてりゃいいんじゃないのか?」高校で見かけたバカップルがそんな感じだったし。

「きゃ・・きゃ・・キャッキャウフフ・・・うふふ・・うふふふふ・・・」「心結?」さっきから「ふ」だけを連続再生しているのだが大丈夫だろうか?

「さて・・っと」後は母の行動だ、流石に心結を連れてきて「幼馴染じゃん」とか言うのはないだろう、

「ただいまー」「はーい小遣い減額」「まだだよっ!!」入った瞬間に減額が確定しそうになった。

「嘘、連れてきたの?」あらまぁ、と適当な表情を作りつつ母はおどけてみせた。

「ふ・・見て驚くなよ、俺の彼女ぉー(仮ぃ)!!」「ど・・どーも、美奈叔母さん、ご無沙汰してます」心結は礼儀正しく挨拶をした。

「あれー、心結ちゃん?へ~、秋良と付き合ってたんだぁ」「あ・・えっと・・その・・なんていうか・・・」凄いしどろもどろになりつつ、一生懸命言葉を紡ぐ心結、頑張れっ!

「ま・・まぁ、そんな感じですね」アハハと軽く笑う心結、お前・・・なんてナイスなスルースキル持ってんだよ。

「へ~・・・秋良がねぇ」だが母の疑いの視線はまだ俺を捉えている。

「母さん、そろそろ信用してくれてもいいんじゃないかな、俺だって彼女は作れるんだよ」俺は演技っぽく断言する、勝った・・・はず。

「心結ちゃん、こっちこっち」「はい?」心結がトタトタと母さんに近寄る、そして耳元でこそこそ話。

「・・嘘って・・たら・・本当・・なれ・・・彼・・」「・・・んとですか!?・・なら・・そって・・ます・・」「???」内容がまったくもって分からない、一首の暗号みたいだ。

「美奈叔母さん、実はあっくんとは付き合ってません」「えええええ!?」心結っ!母さんと何悪い交渉しやがったんだ!?

「あらぁ、ってことは強制的に連れてこられたのかしら」「あ・・ええ」「嘘おおおおおお!!」いや確かに強制的っぽいけど、一応無理はするなって言っておいたし、強引に連れてきてないし!

「秋良、犯罪だけはダメだって言ったでしょ」「犯罪じゃねぇよ!今そこで闇取引した方がよっぽど犯罪だわ!」「法スレスレはいいけど違反はダメよ」「スレスレOKなんだ!!違反はダメでもスレスレはOKなんだ!!」相変わらず突拍子もなくブッ飛んだ事を言ってくる母親である。

「というわけでぇ、お小遣い減額ぅぅ」ニヤリと憎たらしい笑みを浮かべた母親、くそ・・腹立つ。

「ごめんね、あっくん」「まー・・仕方ねぇよ、たぶん最終的に俺の小遣い減額だったろうし・・」俺はどうでもよくなりつつ返答する。

「あー・・悪かったな、無理矢理連れてきたりして、家まで送るよ」「いいのに」心結は少し遠慮しながらも、「それじゃ、お願い」と頼んできたので俺は心結を家へ送り返すことに。

「うふふ、心結ちゃん、また今度ね」ウィンクする母。

「はいっ!また今度、お伺いします!」キラキラとした瞳で母を見つめる心結、どんな約束が交わされたのだろうか。

「・・行くぞ」「うん!」俺は心結を送り返す為に道を歩き始めた。


 その時アリスは秋良の家に向かっていた。

理由は簡単、桜田家で保管してあるであろう、許嫁に関する書類を引取りに向かっていたのだ。

アリス家の書類には桜田龍二(秋良の父親)の朱印が押されてあり、あちらにはマリアヌ=ワイデル(アリスの父親)の朱印が押されている書類があるはず。

アリスは少し足取り軽く、秋良の家へと向かった。

「今は思い出してくれてないけど、いつかは、絶対・・」アリスはそう胸に想いながら、溢れそうになる涙を堪えた。

「・・・え?」そして直後だった、目の前に桜田秋良が現れたのは。

だが、様子がおかしい、いやその周辺がおかしい。

秋良は仲良くアリスではない女の子としゃべっている、途中でお互いに笑い合う声すら聞こえる。

「・・・何・・誰・・誰なのよ・・何なのよぉ・・・!」激しい嫉妬心と憎しみが渦を巻く。

「(私の発言には辛そうな表情を浮かべるのに、あの女の前ではヘラヘラと笑っているなんて・・)」アリスは憤怒を通り越して殺意を感じた。

「何で・・・なんで・・・」彼女は思わず走り出した、意中の人物である、桜田秋良へと一直線に。


 「秋良君っ!」「・・?」聞き覚えのある声に眉間にシワを寄せつつ振り向く。

するとそこには、あのご迷惑な許嫁であるマリアヌ=アリスが焦った表情でこちらを見ていた。

「アリスさん・・・だっけ?どうかしたの?」「どうもこうもありません! 許嫁の目の前で不倫現場を見せつけるだなんて、言語道断ですっ!」「はぁ? イマイチ意味が分からないんだけど」相変わらず話の主軸が定まっていない会話の切り出し方だな、と嘆息する。

「不倫も何も、俺とお前は付き合ってすらいないじゃねぇか、それに不倫ってなんだ不倫って」迷惑極まりない言葉を出来れば控えて欲しい。

「俺は別に構わんが、心結が可哀想だろ、俺程度に不倫したと思われて」「べ・・別に・・・そんなことないけど・・」「はい?」「な・・なんでもないっ!」ゴニョゴニョと喋る心結、ハッキリ言えばいいのに。

「と・・ともかく! 今から秋良君の家に向かいますから、ついて来てください!」「えー? 家に母さん居るから母さんに話通しておいてよ」「ダメです!」「ってかなんでキレてんだよ・・・」「キレてません!!」一言一言にビックリマーク付ける勢いで喋っててキレてないとか、テンション高すぎる人だろ。

「あのさー、ともかく俺は心結に少し迷惑かけちまったから今送り返してるとこなんだけど」「知ったことじゃないです!」「まー・・そりゃお前は知ったこっちゃねぇよな」俺と心結と母親の小遣い戦争があったことなんて。

「でもな、俺はそういうの嫌いなんだよ」「あ・・」アリスは驚いたようにポカーンと口を開ける。

「迷惑掛けたらそれ相応のお返しっつーか、そういう事はすべきだろ? ってか出来ない時点で最低だろうし」だから、そういった筋の通らない事をするつもりはないし、大嫌いなんだ と俺は言った。

「あ・・そ・・え・・?」言葉が文章として形成されずに口から漏れ出る状態にまでパニックしているアリス。

コホン、とそこで心結が咳き込んだ。

「あー・・アリスさん、だよね?」「そ・・そうですが・・、何か?」気丈に振舞うアリスと少し引き気味の心結。

「あのさ・・私、昔からずっとあっくんと同じだったから、良く分かるんだけど」「私だって!昔から一緒でした!」アリスは心結の言葉を遮ってそう言った。

「(そういえば・・・)」俺は5歳まで、この街で心結やその他友達と仲良く遊んでいたのだが、一年間だけ、この街から離れて、遠くの幼稚園に行ったことがあった。

「(けど7歳、小学校入学時には既にこの街に戻ってきてたっけ・・・)」たった一年間、その一年間だけが空白のようにポッカリと穴が空いている。

「聞いて」心結は真剣に、真っ直ぐにアリスを見据えてこう言った。

「あっくんは、別に誰のものでもない、あっくんはあっくん、それ以上に無関係な人が入り込めば人権侵害だって訴えられてしまう位、あなたの行っている行為は危険極まりないの」「だからなんだというんですか!!」アリスはピステリックな金切り声でそう叫んだ。

「記憶にすら残れなかった私に! 秋良君との思い出に溢れるアナタが! 私の何を分かるっていうんですか!」「バカっ!!!」心結はツカツカと近づいてバシンとビンタをかました。

「だったら何なの!? また作り直せばいいじゃない! 記憶が何?思い出が何? そんなの幾らでも作れる! 作ろうと思わず、ただあっくんを独り占めしようとするアナタには分からないだけじゃない!!」「っ!」アリスはその時、本当に目を大きく広げて驚いた。

「許嫁とか、記憶に残れないとか、そんなの関係ないじゃない、今から作っていけばいいじゃない」心結はゆっくりと語る、それはさながら優しいお母さんのようだ。

「え・・・」「だって・・・似てるんだもの」少し寂しげに心結は笑った。

「私にとても似てる、だからこそ、私と同じく元の自分に戻って欲しい」心結は願うようにそう言った。

「・・・・似てる?」「ええ、容姿とか性格じゃなくて、一種の悩みの部分でね」「・・・」アリスは黙りこんで、少し思案する。

「・・・分かりました、私も頭に血が上っていたようですね」「・・・ま、ともかく冷静になってくれたようだな」俺は頃合を見て、話すべきことを話した。

「アリス、許嫁の件だが、保有しているはずの書類はなくなっていたんだ」「・・・そうですか」「ああ、母さんの保管ミスだったらしい」ってかそれ以外にないだろう、あの間抜けな母親の事だ。

「だから、お前は俺の許嫁じゃ、ない」「・・・」すると、アリスは手に持っていた書類を真っ二つに引き裂いた。

「!」「何となく、そんな気がしたんです」アリスは微笑んだ、少し悲しみを帯びた、憂いのある瞳はアリスの容姿と相まって、とても可憐に見える。

「・・・そっか、それじゃ」「?」俺は首を傾げるアリスに提案をした。

「なら許嫁とか、そんな堅苦しいもんじゃなくてよ、友達として、仲良く過ごしてほしいんだよ」俺はにこやかにそう告げた。

「とも・・だち・・・」「ああ、友達だ」「し・・・仕方・・ないですね・・」彼女は静かに呟いた。

「友達として・・・仲良くしてくださいね、秋良君」そして今度こそ、満面の笑みでそう言った。

「ああ、仲良くしような、アリス」俺は面倒なしがらみから開放され、新たな友達が増えたことに少し歓喜した。

だが。

「姫岸心結、アナタとはライバルです!」「望むところよ、マリアヌ=アリス!」だが、俺の目の前で熾烈極める女子同士の比類なき激闘が始まろうとしていた。

「(相変わらずかよ・・・・)」俺は天を仰ぐ、なぁ神様、アンタ・・・俺を恨んでるのか?

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