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俺の学園生活は何かが間違っている  作者: いんぱらす
変則的な日々
13/21

破天荒な母

 その日はいつもより早く時が進む感覚に陥った、今は放課後だ。

麗香は無言で帰ってしまった、何か怒らせる事をしたのかは些か不安だが今となってはどうでもいい。

「あっくん、許嫁ってホント?」不安げな瞳で見つめるのは心結だ。

「さぁな、けどそんなのは俺が認めねぇよ」アリスは颯爽と帰っていった為、クラスには俺と心結しかいない。

「・・・帰るか」「そうだね」やっぱ、幼馴染ってのは大切だと思う。

長い間一緒に居る人が存在するってことは、心に余裕を持たせてくれるものだ。

「にしても、何なんだろうな」あの金髪、どこかで見た覚えがあるのだが。

「あれ?」「どうしたの?」「あ・・いや・・」心結の問いにマトモに返答できない俺。

金髪、青い瞳、白い雪肌、そして俺の許嫁。

すべてが繋がった。

「・・まさか、あの写真の・・・」それは物置掃除の際に見つけ、記念に部屋へ飾った写真立て。

そこに写っているのは、当時6歳の俺と謎の女の子。

そしてアリスの言葉、『10年程前』。

今俺達は16歳だ、その10年前と言えば6歳。

そう、すべてが繋がった。

「あっくん?」「悪い心結、即刻家に帰って調べなきゃなんねぇことがある」「??」「ごめんな」「いいよ、あっくんはいっつもそんな感じだからね」ニコっと余裕の笑みを浮かべる心結、とても頼りになる。

「ありがと」俺は一言つぶやいて走り出した、目指すは俺の家だ。


 俺の家には珍しく母親が帰ってきていた。

「母さん、久しぶり」「秋良?久しぶりだね~、愛華はどこなの?」さり気なく俺より愛華優先しやがったこの野郎。

桜田美奈、俺と愛華の母親で破天荒な性格の持ち主だ。(あの風呂場の件で分かると思うが)

「愛華はまだ学校に居ると思うよ」「そっか、残念、秋良で我慢しよっか」「我慢って何だ我慢って」子供を差別するなよ最低母親め。

俺はマイペースな母に飲み込まれていることに気づき、頭をブンブンと振って余計な感情を払う。

「母さん、聞きたいことがあるんだ」「なぁに?年齢?」「違うわ!何で真剣な顔して自分の母親の年齢聞かないといけねぇんだよ!」つっこんで、ハっと俺は我に返る、乗せられた・・・。

「じゃなくて、本当に真面目に聞きたいことがあるんだ」「本気と書いてマジと読む感じのパターン?」「・・・それに近いかな」俺はつっこまないように細心の注意を払いつつ親の方を向く。

「えっと、まず俺に許嫁は存在するかどうかなんだが」「どこの厨二だよ」「くぁ!?」母親の心を抉る一撃。

そりゃそうだよ、どこの世界に許嫁持ちの男子高校生が居るかよ、ありえねぇだろ。

「え・・っと・・その、ともかく居るか居ないか答えて欲しいんだ」恥ずかしさで顔を赤くしながらも親に聞く。

「んー?確かねぇ、お父さんが勝手に決めちゃった約束があった気がするんだけどー」母にしては珍しく歯切れの悪い言い方だ、何かあるのだろうか。

「その契約書ってか誓約書?みたいなのを、なくしちゃった☆」「ええええええええ!?」そーゆーのは専門の人とかに預けるんじゃないのぉ!?

「だってー、保管とか面倒だしぃ、秋良がそんな幸せだと腹立つしぃ」「おいコラ、子の幸せ願うのが親だろうが」破天荒というか無愛想すぎる、何で子供恨んでんだよ、腹立てるなや。

「ともかくね?昔そんな約束ごとした気がするけど、お父さんの事だからお酒の勢いで勝手にやらかしたんでしょ」適当な感じで告げる母親。

俺の父さんは酒が弱いのに、よく酒を飲む人だった、だから凄い酔う。

けど酔いに任せて暴力を振るうような人ではなかった、根っからの優男なのだ。

「父さんらしいけどな・・・」俺はそう呟いてハっと更に気づく。

「ってことは許嫁って・・・」「多分取り消しでしょーね」あさっての方向を向きながら母親はそう答えた。

「だ・・だよな、そうだよ、俺に許嫁なんて本来居るはずがねぇよ」「そーそー、秋良に彼女なんて出来るはずがねぇよ」「おいコラ!彼女位作れらぁ!」「言ったね?んじゃ後30秒以内に彼女作れ」「無理だろ!?」何だ?家からすぐそこの道で女性をナンパしろと?誰が引っかかるってんだ。

「仕方ないな、後10分以内、できなきゃお小遣い減らすわね」「ええ!?」相変わらず破天荒な母だ。

だがしかし、大抵のこういう賭け事は本気と書いてマジと読むパターンなのだ、つまりガチで小遣い減らされる。

「くっそぉ!!」俺は駆け出した、扉を開け放ち、手には腕時計、時刻は4時30分。

「がんば~」俺はある一つの可能性に賭けて走り出す、頼りになるあの人の元へ。


 「あっくん?」てなわけで近場にある心結の家へ直行した。

「心結か?少し頼まれ事して欲しいんだが」「なになに?」興味津々といった感じで顔を近づける心結、仄かに甘い香りがする、シャワーでも浴びたのだろうか。

「あーっとだなぁ・・・」だがここまで来て重大な事に気づく。

幼馴染だ何だと言っても、心結も女子、ならば好きでもない男の彼女役なんてまっぴらごめんだろう。

「(俺のアホッ!ここで究極の絆ぶっ壊すより遥かに小遣い減額の方が安い代償だろうっ!?)」俺は自分の低能さに愕然とする。

「なによ、今更引き返そうなんて許さないからね」グイっと家の中に引き寄せられる俺。

「あ・・ああ・・!」閉まる扉、それは俺の完全敗北を意味していた。

「(心結連れてっても、あの母の事だ「幼馴染なんだから適当にはぐらかした」とか言って最終的に減額されるに決まってる、10分っていう制限時間も、往復でギリ10分かかる心結の家を計算して言っていたのか・・・!)」策士、とはまさにこのことである。

ってかどんだけ俺を傷つければ気が済むんだろう、あの母親は。

つまり、どう転がろうと俺の小遣い減額は確定事項で、それも俺は自分から痛い目に見る方向へと転がってしまったのだ。

「・・・」「あっくん、早く言ってよ」「あぁ、んじゃ言わせてもらうわ」ヤケクソ気味に言った。

「母さんに小遣い減額されそうだから、適当に彼女のフリしてくんねーか?」「・・・っ!」心結の顔が引き攣る。

「(あ、終わった、確実に俺と心結の『幼馴染&友達』っていうパイプが中央から真っ二つに切断された)」あの母親め、俺から小遣いでは飽き足らず友達すらも奪おうというのか、マジ最低だろ。

「え・・か・・彼女のフリ?」顔を赤くしながら再度問いかける心結、そんな怒ることでしたか。

「ああ、無理にとは言わない」俺は絶望感に打ちひしがれた、許嫁の件から開放されたと思ったら幼馴染との絆が今砕けかけている。

「べ・・別に・・いいけど・・」「いいのっ!?」俺はあのダークな雰囲気を吹き飛ばす位の裏声でそう言った。

「(まじか・・、心結ってこんな心広かったっけ、いやぁ~悪いなぁ、好きな人とか居るんだろうに)」内心謝りつつも表面上ではにへらっとしていたのだろう、少し心結が後ずさる。

「あ・・悪い、別に大したことじゃないんだ、ただ彼女っぽくしてくれれば一瞬で刹那の内に終わる」安心させようと俺が言うと、心結が少しムスっとする。

「そーなんだ」「・・・え、あ・・はい」「ふーーーん、一瞬でねぇ?」「は・・はい」少しずつ心結の背が大きくなっていってる気がするのは俺だけか?・・って俺の身長が少しずつ縮んでいるのか・・・。

「・・・ダメか?」「いいって言ったでしょ、別に構わないわよ」心結は念押しにOKをくれた。

「ありがと」「仕方なく手伝うだけだからね」「うん、うん」俺は笑みを浮かべる、あの母親め、これが幼馴染の絆の力だ。

後は家に帰るだけ、そしてそこで俺と心結の絆の力を見せるだけ、そう それだけだ!!

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