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帝立戦闘員育成専門学校 6

ミシ…


ギチィ



ブチ!



クチャ…クチャ…クチャ…




リザイドはナニカを咀嚼している



口から滴り落ちる血液はとても鮮やかで足下には血溜りができている



ギシィ


ブチ!


クチャ…クチャ…クチャ



マテ、ソレはダレだ?



オマエハ「ダレ」ヲクッテイル



リザルドはまだ足りないのか、今度は俺に向かって這い寄ってくる



決して早くはないのに逃げれない



なんで足が動かない?



何とか逃げようとするが躓いてしまい尻餅をつく



しまったと思い前を見ると、いつの間にかリザルドが目の前まで迫っていた



そして太い腕と鋭い爪で地面に縫い付けられる


爪は胸と肩を貫通しており激痛が走る


「!?」


あまりの痛みで声がでない



今度は俺を食おうというのか大口を開けるとその中にはかろうじて分かる変わり果てたトニスの顔があった



さっき食べられていたのはトニスだったと嫌でも理解する



俺はトニスを助けれなかったのか?



「そう、私はあなたを助けたのにあなたは私を助けなかった」


「え?」


何を言われたのか理解できなかった



「違う!助けようとしたんだ!」


「でも、これが結果」


何も言えない


ただ黙ることしかできなかった


「だから、あなたも死んで」


そんな言葉と共にリザルドは俺を食うためにその強靭な顎を閉じた






「っわああぁぁ!?」




生きてる!?



俺は生きてるのか?



「はぁ…ハァ…は…ぐ!!」


あまりの事に心臓が暴れている


動悸が止まらない



「夢?」



周りを見る



俺はベッドに寝ておりカーテンも壁もベージュに統一されている部屋にいた



「ここは?」



頭が働かない


俺はトニスを救えたのか?


それとも




先ほどの映像がフラッシュバックする


「ぐ!!」


嫌な汗が滴り落ちる



「確かめねぇと」


身体を起こしトニスを探しにいこうとすると



「起きたみたいだね」


とカーテンが開き白衣を着た蟲族の男が現れた



自然と警戒する



「誰だ」


男は柔和な顔で微笑み


「そう警戒しないで良いよ、僕は帝専の専属医師でキリ・L・バイト、まずは落ち着きなさい」


と自己紹介してきた


「帝専の医師…」


「うん、そうだよ」


警戒心が薄れ興奮が収まってきた、頭も冷静になっていくのが分かる


でもこれだけは確認しておきたい


「トニスは…トニスは無事なのか?」


「無事だよ、昨日に目が覚めて今日から授業に参加しているはずだ」


そうか…無事か、良かった



やっぱりアレは夢だったんだ



「さて、今度は僕からの質問に答えて」



「あいよ」



「身体の調子はどうだい?痛いところは?」


「ない」


「それは良かった、臨床症状もないし検査の結果も異常はない、すぐにでも授業に参加できるよ」


「聞きたいことがいくつかあるんだが」


「ん?」


「どうして俺はここに?目立った怪我はしていないはず」



トニスが無事なのは良かった、でもなんで俺は倒れているのか分からなかった



「詳しいことは分からない、でも君は人間族の身でありながら魔法を使ったと聞いている、恐らくその反動だろう」


「魔法?俺が?」


「信じられないのも無理はない、実は僕もあまり信じれていない」


人間族は魔法を使えない、そんなのはこの世界の常識だ


「実は、はるか昔に人間族も魔法を使えていた時代があったと推測している論文があってね」


いきなり何を言い出すんだ


「その論文を簡単に説明すると人間族が魔法を使うと身体の著しい機能低下と精神の磨耗によって寿命が極端に低下した、そして種として自己防衛反応が働き使えなくなったって言う内容なんだ」


「何が言いたい?」


「君は寿命を代償に魔法が使えるようになった」


魔法には憧れていた…でもその代償が命を削ること?



そんな



「まさか」


実際、身体には何の影響もない


「実は身体機能低下については解決できるんだ、それほどの医療技術を今の時代は持っている」


「問題ないんじゃ?」


「でも万能じゃない、精神の磨耗を回復させる技術はまだない」


「俺は何ともない」


「一回しか使っていないからね、でも使い続ければ君は狂うかもしれない」


「論文が間違っている可能性は?」


「否定できない、でも」


「肯定もできる?」


「その可能性が高いと思うよ」


昔、それこそ前世から魔法に憧れていた


でも命を削ってまで使いたいと思わない


「そっか、じゃあ使わないでおく」


「うん、物分かりの良い子は好感が持てるね」


「どうも」


「さて、結構な問題ではあるけれど、この話は終わりにしよう」


パンっと両手を合わせていきなり笑顔になる


「さぁ、他に質問がないなら授業にいきなさい、そして友達に元気な姿を見せるのが今の君がすべきことだ」


「えっと…俺はどのくらい寝てた?それに今は何時だ?」


「三日寝てたよ、そして今は11時だ」


うわ…結構寝てたな



「良い友達だね、毎日来てたよ」


その言葉に自然と笑みが浮かぶ


「あぁ、良い奴らなんだ」


「じゃあ、いつまでもここにいないで早く行きなさい」


「助かった!なんかあったらまた世話になるかもな」



俺は皆に会うために急いで医療室を出て教室に向かった




蟲族の医師は一人になった医療室で


「脳波に少し乱れがあったけど、会話している限りでは特に異常はなかったな、これなら大丈夫そうだ」


安心した表情でつぶやく


しかし、もし何度もレイトと会った事があるなら異常に気がついたはずだった



きっとこれから会う幼い友人達もちょっと変わったと思う程度で気にも止めないだろう


その友人も12歳という子供でなければこの異常に気付けたはずなのだ


「会って間もない」「友人が子供である」ことが彼の症状を見逃すことになってしまう


今、ここに家族がいたならレイトの異常に気が付いたはずだったが、それも叶わない


あと半年後に家に帰る機会はあるがその時では家族は成長の一つとしてみてしまうだろう


レイトを良く知る者が今この場にいないことで見逃された異常


彼自身は無意識なため分からない






今までのレイトは目上の人には丁寧な言葉遣いをするはずなのだ、それがグロウのように荒っぽい口調になっている


これが徐々にならば全く問題はない


しかし急激な魔力放出により意識を失った後、目覚めてすぐに口調が変化するのは脳もしくは精神に何らかの異常をきたしているとしか言えないのだ

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