散華
ヴィル(ヴィルヘルム) 主人公 少数部隊の副隊長 義勇兵
アルフ ヴィルの幼馴染 義勇兵
隊長 戦場へ赴こうとしたらお偉いさんに呼び出された為ヴィルに任せる 念の為強制返還の魔法石を託す
強制返還の魔法石 他のメンバーにも一個ずつ渡し もう使用されたと思ってください 一個は砕かれ残りは一個
「ヴィル!」
何も見えない 暗闇の中 幼馴染の声だけが聞こえる
「おいヴィル!!」
夢見た世界では無くて 余りにも過酷な現実だけが己に付き付けられた
冷え切った身体に苦笑し残りも僅かであろう力を振り絞り重い瞼を開ける
「ヴィル? なぁ大丈夫なのかその傷治るよな?」
矢継ぎ早に続けるアルフに質問ばかりだ、と言うと ただ苦しそうに笑うだけで
あぁもう長くは持たないと 確信する
「アルフ?」
思ったよりも出ない声に少し苛立つが気にしてる場合ではない
「他の、奴等は無事逃げ切った、か?」
「あぁお前のお陰だよ全員大した怪我も無いよ」
「ならいい」
安心しまた瞼が落ち掛けると思い切り頬を摘まれる
「…アルフ、痛いんだけど」
「何がいいんだよお前無事じゃないじゃん意味ないじゃん」
表情は見えない 珍しく覇気の無い声に驚く
「何だ 所詮兵なんて駒に過ぎないだろ?」
いつも言っている言葉 一個駒が減った所で戦場はそう変わらないと
違う と首を振るが結局現実はそんなものだと
でもそれを憂い涙を流せる程綺麗な大人でもなくそんなものは違うと駄々を捏ねる程子供でも無い
残された時間にこんな事考えたくないと
俯く幼馴染の頭に手を置き逃げるよう諭す
「やだ、ヴィル置いてけない」
そんな事を言ってる場合では無いと伝えるが一向に動こうともしない彼に痺れを切らす
隊を任された俺にだけ 隊長が渡してくれた基地へ強制返還させる魔法石を握らせ 詠唱する
残りは一個 此処で使うべきだろう
やだやだと手を離そうとする手を握り込み完成した魔法を発動させる
「またな…アルフ」
光と共に消えた温もりに 届いたかどうかは分からないが 無事ならいっそどっちでもいいと思う
力も入らず霞む黒い空 散乱した瓦礫と武器と死体
再び襲い掛かってくる闇に手を伸ばした