第六話
二次規制の余韻が結構あったようです。
自分でも気付かないぐらい思い入れが強かったみたいです。
とりあえず、出来た分だけでも投稿しますね。
聖グランベリア学園の講義は種類が多く、内容も濃い。
さらに、学年が上がるごとに益々増えるのだから、入ったばかりの僕達から見ればとてもじゃないけど考えたくない。
それでも、魔物が生きるこの世界で生きていくには必要な知識なわけで、さらに言えば、魔力が満ち溢れる中で戦うならば、魔法を扱える事が必然的に重要になる訳で……。
「それでは、基礎魔法講座を始めて行きましょう!私の名はメーメル。主に魔法を行使するに当たって一番の基礎である自覚、発現、生成、放出、成形の5つと、魔法そのものの知識を皆さんに指導致します。ではまず、教科書の5ページを開いてください」
僕も手元にある教科書――ゴブリンでも分かる魔法講座(初心者編)――を開く。
教科書のタイトルはいつ見ても間違っている気がするのだが……そもそもゴブリンが魔法を習うために教科書を買うんだろうか?
「いや、その考え方もおかしいで?」
「え、そう?」
「せや。普通はゴブリンが魔法を使うんかって考えるべきやろ」
「でも、知能はある訳だし、魔法ぐらい扱えるんじゃないの?」
「…まぁ、そやけど」
ザール君はあまり納得していないようで。
そんなこんなの話をしている内にメーメル先生の話は先へと進んでて、僕は慌てて開いてあるページの内容を読んでみた。
第1章.魔法を使うにはどうしたら良いのか?
君の身近に魔法を使っている人はいるかな?
もし居れば、その人に、居なければ近くの学園か教会に赴いてこの一言を尋ねるんだ!
“自分に魔力はありますか?”ってね!
魔法を使うにはそれなりの魔力を持っていなければならない。
魔力は歳を重ねる、または鍛え方次第で量を増やせるが、元々持たない人が魔力を持てるようにはならないんだ。
これは、一人一人の体内に魔力を生み出すための機能が備わっているかどうかだから、生まれた時に大きく左右されてしまう。
もし、魔力がないと言われた人は残念だけどこの本を読む必要はない。
現在、後天的に魔力を生み出す装置や技術は見つかっていない。
故に、魔法を使うことは諦めて、武器を扱うことを覚える事をおススメするよ!
さて、魔力があると言われた人はおめでとう!
君達は魔法を使うに当たって前提条件をクリアしたわけだ。
しかし、ただ魔力を持っているだけでは魔法を使うことはできない。
次の章から魔法を使うための第二段階である“魔力の自覚”について説明していこう。
図やら案内役みたいなマスコットがあちらこちらでコメントしているため、分かりやすいか分かりにくいかはさて置き、第1章には魔力の存在について書かれていた。
どうやら、僕も知らないうちに魔力を生み出す機能が身体に備わっていたらしい。
でも、学園では全員にこうした魔法授業を受けさせているけど、いつ魔力があるかないかなんて調べたんだ?
「アランの疑問も最もやな。ま、実際は簡単やで?面接ん際、一度は必ず此処の先生と対面してるやろ?」
「そうだね。あ、もしかしてそれが?」
「その通りや。入って来てすぐに魔力の有無を調べて学園に入れても問題ないか調べるんや。そこで通らな他が良くても必ず落とされるんや」
「へ~、ザール君って偶に知らなさそうな知識を教えてくれるけどどこでそんなの知るの?」
「ん、図書館におる司書さんが顔馴染みでな。昔、色々聞かされたんや」
ザール君の話が本当かどうかは別にして、なるほどと納得した。
面接では当たり障りない事をいくつか聞かれただけだったから、意味があるのか分からなかったけど、ちゃんと理由があったんだね。
「それでは、一通り魔法を扱うためのプロセスについて説明していきましたが、今からは実践していきます。これから数回の講義を通して自分の魔力を“自覚”していきます。ここで魔力の存在に気づけないと、この先、魔法を使うことが出来ないので頑張ってくださいね!既に魔力を自覚できる人は近くの人のお手伝いをしてください!」
メーメル先生の言葉で皆が動き始める。
二人一組なので、どちらか一人が前に置いてある水晶玉を取りに行く。
ちなみに、この水晶玉はたまに目にすることがある水晶玉とは違い、使われている素材がただの水晶ではない。
鉱物の中でも異質と呼ばれる遥か太古の神々たちが封印された石……それが“鬼神石”。
小さいものは1センチにも満たず、大きいものであれば10メートルを超えるが、重要なのは大きさではない。
名の通り、封印されている存在の価値が石の持つ力となる。
近年の学者によれば、封印されている存在は名の通り、鬼や神と呼ばれるもので価値の低いものは一般家庭にも使われるほど流通するが、価値の高いもの…現在知られているものであれば「龍神」と呼ばれるものは絶大な力を誇るとされる。
鬼神石は一つ一つが属性を持ち、その属性に見合った魔法を使うことで普段より強い魔法を放てるようになる反面、価値が高くなればなるほど持ち主を選ぶようになり、貴族であろうと平民であろうと選ばれなかった者には全く反応しないらしい。
話が逸れちゃったけど、そんな異質な鉱石の中でも一番良く見つかる属性というのが無属性であり、他の属性と違って力を高める効果はないらしいけど、色々な使い道があるんだって。
一つは目の前にある水晶玉――正式名称は魔力探知玉――やテーブルなどの家具、さらには武器の一部にも使われている。
元々、鬼神石はちょっとやそっとのことじゃ壊れないんだけど、無属性の鬼神石はさらに壊れにくい。
あまりの壊れにくさに興味を抱いた時の賢者が自身最大の魔法を当てても壊れなかったと伝えられているぐらいなんだ。
……まぁ、その時の賢者が誰なのかも分かってないし、どれくらいの大きさの鬼神石にどの程度の魔法を当てたのかも残っていないから、実際はよくわかんない。
「この玉に自分の手を当てて強く念じるのです!感覚としては、自分の中にある何かをこの玉に押し込むような感じです!水晶玉に自分の属性と同じ色が現れたら成功です!」
ザール君の方を見ると、お先にどうぞ的な感じにジェスチャーされた。
しょうがないから自分の手を水晶玉に当て、目を閉じて強く念じてみる。
「(むむむ!むむむむむ!)」
チラッと目を開けてみる。
水晶玉の色は全く変わらず、物の見事に失敗してしまった。
「む~…」
「まぁ、こればっかりは仕方ないやろ。気長にやるしかないで!」
「…ザール君はどうなのさ?ザール君のを見せてよ」
「ええで。すぅーはぁー…ほいっと」
ザール君は深呼吸をしたかと思えば、軽い掛け声とともに水晶玉に触れた。
どう声をかければいいのか分からない僕を余所に、水晶玉は黄色に光り始め、数秒後に元の透明な状態に戻っていった。
「まっ、ざっとこんなもんやろ」
こちらを見たザール君の顔はいつもとは比べるまでも無いぐらい自信に溢れていました。
「ふわわ。ザール君って、どこかで魔法を習ったことがあるの?」
「一応な。ずっと昔の話や。そんなことより、アランはできてへんのやから連続してやるで!心配せんでも最後まできっちり見といてやるからな!」
「う、うん!」
ザール君に応援されるまま続けましたが、結局この日中に水晶内に僕の属性である火の赤色を出す事はできませんでした。
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次の日の最初の講義は、午前中丸々っと使って魔法基礎講座の続きです。
とにかく、最初の5つを出来ないことには魔法の講義全てに参加できないので、講義が始まるまでの約1カ月を使って重点的に行うとの事。
既に成形まで終わってる人(ザール君とかレクスさんとか)には申し訳ない気もするけど、僕は僕の事に集中しないと!
隣ではザール君が専属みたいに付きっきりで教えてくれるので、アドバイザーには困らないけど……。
「こう、ハッ!!って感じや!」
「手の平に魔力…いや、何や得体の知れない物体を集める風に…」
「意識を水晶玉に集中してせいやっ!って感じで押し込むんや!アランなら出来る筈や!!」
…正直に言いたい。
ザール君の説明は感覚的過ぎて分からないんだよ!!
「も、もっと具体的なアドバイスはないの!?」
「ない」
「酷過ぎる!!」
ザール君の呆れるほど簡潔な返答にため息が零れる。
そして、ふと隣の机に一人座るリュラン君を見る。
特別何もしてないけど、リュラン君はもうできるのかなぁ?
「ほら、余所見しとらんと続きや、続き!」
「せ、急かさなくても分かってるよ…」
今日はため息しか出てこない。
少しぐらいは息抜きしてもいいんじゃないかと思うんだ。
休憩がてら、周りを見渡すと大まかに4つに分けられそうだと感じた。
1つ目は“自覚”が出来ていない人。
クラスの大半の人と僕がここに当てはまる。
自分の前に置かれた水晶玉に手を当て、必死に何かを込める動作を繰り返している。
2つ目は“自覚”は出来た人。
まだ2日目ではあるけど、少なからずいるみたいだ。
その人たちは、隣の人の応援やアドバイスをしているのかな?
3つ目は“魔法を扱える”人。
今もクラスの女の子に教え回っているレクスさんや僕の隣のザール君が当てはまる。
その他にも2,3人いるけど、僕はよく知らない。
4つ目は何もしていない人。
僕のクラスではリュラン君だけが当てはまる。
“自覚”の練習をするわけでもなく、誰かにアドバイスするわけでもなく、ただ椅子に座っているだけだ。
他人の事が言えた立場ではないけど、大丈夫なのかなぁ…?
その後も必死に水晶玉に魔力らしきものを込めてたけど、出来る兆しはなかった。
落ち込む生徒が多かったからか、メーメル先生が講義の終わりの方にフォローするかのような話によると、1週間以内に“自覚”が出来るようになるのは毎年10人にも満たないらしい。
むしろ、半月でようやくほとんど出来るような物らしい。
“自覚”さえできてしまえば、そこからは簡単になると言っていたので、少しだけ安心した。
「水晶玉は貸し出し可能やし、寮でも練習できるで」
「ん~、なら借りて行こうかな。少しでも早く使えるようになりたいし」
「よっしゃ!ほんなら、メーメル先生のとこへ行くで」
部屋を出ようとするメーメル先生へと駆け寄り、貸し出しについて話をしてみた。
こういった生徒は毎年いるようで、快く了承してくれた。
最も、書類を書く必要があるみたいだから、今日は無理見たいだ。
とりあえず、この話はこれで終わりにして、午後からの基礎体術の講義も頑張らないと!
∽to be continue∽