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Held Flugel  作者: アクア=イスタロス
第1章―闘技大会編
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第五話

生存学を終えて今日の講義は全て終了!

この後のホームルームが終わると、今日は魔法部の見学に行くつもりです!

ザール君は相変わらず魔闘部一本なので、いつもリュラン君を引っ張って見学に行ってます。

リュラン君は面倒そうな顔をしますけど、何だかんだ付いて来てくれる優しい青年という事実が最近発覚しました。

というわけで、今日も放課後はリュラン君を強引に連れて行きましょう!


因みに、何故ホームルームの筈なのにクラブ見学の事を考えているのかというと……。





「それでは!楽しい楽しいホームルームの始まりです!」





シーン…


入って来て早々、エミリア先生が大きな声でそのようなセリフを言ったのが原因です。

皆、先生のテンションの高さに着いて行けず、ほとんどの人は呆然、窓際にいるリュラン君やその隣のレクスさんは無表情で先生を見ていました。


「……(汗)」


段々と間違えたことに気がついたのか、笑顔のまま汗を流すという器用な事を始めたエミリア先生。

本当に焦ると、あんな滝のような汗を流すんですね。

漫画の世界だけかと思ってました、うん。


「と、とりあえず私からの連絡をしましょう!」


あ、真っ赤になりながら話し始めた。

手をバタバタさせながら話すので、少し落ち着いて欲しいと思ったのは僕だけじゃないだろう。


「エミリア女史、少しは落ち着くべきだと提案するが如何なものだろうか?」


誰かが言うだろう、と周りを見渡していると、案の定、凛とした声が教室に響いた。

声の元を辿れば、やっぱりと思う人物。

背筋をピシッと伸ばすレクスさんがそこにいた。


「ひゃ、ひゃい!わわわわわわわわ分かりました!」


『……(何故怯えているのだろう?)』


クラスの心が一つになった瞬間だった。





「んんっ。では、改めて連絡しますね」


落ち着きを取り戻した先生はようやく連絡を始めてくれるようだ。

まだ顔は赤いけど、あれは恥ずかしかったからなんだろうね。


「早くも入学してから半月が経ちました。クラブ見学も終え、皆さんが思い思いのクラブへ見学しに行きつつ、ようやく始まった講義に大変な時期かと思います。ですが講義の中には“武術”という科目があるのをご存知ですね?この時期の第一学年では、週に一度しかありませんけど、重要な講義には間違いありません。この講義では、素手での訓練ももちろん行いますが、主な訓練は武器を扱ったものとなります。そこで、今日は武術の講義で皆さんが扱う武器の選定を行いたいと思います」


『…え、えええええ!?』


そんな唐突な!

多分、そう思ったのは僕だけじゃないはず。

急に武器を決めろって言われても、そんな簡単に決められるものじゃないし……。


「あっ、もちろん今からの時間だけで決めるわけじゃないから安心してね。この時間は、あくまで「こんな武器があるんだ」ってぐらいは知って欲しいから用意されたの。一般的な武器と言えば、剣や槍、斧などがあるけど、選択肢はそれだけじゃないわ。鞭や笛、スメラギタケル国の特産である刀やボーガンと呼ばれる弓の一種に加えて魔銃や最近開発された新武器“銃槍”など幅広く存在するの。だから、とりあえず皆には“武器”という存在に触れて欲しいの」


『……』


お、驚いた。

まさか、先生がここまで色々と考えているなんて…!


「先生!」


「はいっ、何でしょうかデュメ君」


「たしかに、初心者は武器に触れる機会というものが必要かもしれませんが、僕のように幼き頃から親しんだ武器を持っている者はどうすればいいのですか?」


「今日は参加してください。次回からは参加せずとも結構ですし、武術の講義では自前のもので参加してくださっても大丈夫です。あっ、でも担当の先生によっては使えない可能性もあるので注意してくださいね!」


そうか。

僕みたいに一般家庭から来た生徒だけじゃないもんね。

レクスさんは別格だけど、貴族家庭だと剣とか槍ぐらいは使ってそうだし。


「それでは質問もなさそうですし、これから闘技場へと移動してもらいます!私達Dクラスは第3闘技場でEクラスと合同で行います!」


先生の指示でそれぞれが移動し始めた。

僕も動かなくちゃ。


「アランは何を使うか決めてあるんか?」


「ん~特にないけど…あっ、でもでも僕の魔力属性は“火”だったからそれに合わせて考えたいとは思ってるよ」


「なるへそ。アランは“火”かいな。オレは“雷”さかい、槍を使うつもりや!」


こない感じにな、とばかりにザール君は僕の目の前で槍と呼ばれる武器の動きの一つである“突き”を見せてくれた。

武器の扱いとかは素人だから良く分からないけど、ザール君の動きには迷いが無い見たいだった。

どこかで学んでいたのだろうか?


「アラン君、早く行かないと置いて行かれちゃうよ?」


「あ、うん!今行くよ」


どうやら話し過ぎていた見たいだ。

エリンに声をかけてもらわなかったらそのまま話し込んでいたかも。


「ありがとう、エリン」


「ううん、気にしないで。でも、アランは集中しちゃうと周りの声が聞こえなくなるからね、注意しないと」


「うん」


エリンと話しながら第3闘技場へと足を運ぶ。

前にはリセルがいるけど……まだ、無理かな。


「ちょっ……オレを忘れんといて~な~!」


後ろから悲しい声が聞こえる気がするけど気のせいだよね!





―――――――――――――――

―――――――――――――――

―――――――――――――――





「それでは、君達の目の前にある武具の説明を始める。私の名はログスタン。専門科目は第五学年から指導する“戦術学”だ。君達の何人が私の前に来るか楽しみだ」


第3闘技場に到着した僕達を待っていたのは数多くの武器。

大まかな種類ごとに分類されているとはいえ、どれを見れば良いのか分からないぐらい多い。

種類だけじゃなくて、形も色々あるし、どういった基準で決めればいいのかなぁ…?


「これだけの種類・数があれば、君達一人一人に適した武具も見つかるだろう。無論、中には少々捻くれた御仁もいるやもしれぬ。この中から見つける事の出来ぬ、そのような者に関しては学園では手に負えぬ。敷地内に数ある武具屋へと向かい、オーダーメイドで造ることを勧める。……注意事項は以上だ。何か質問は?」


誰も手を上げない。

聞きたい人もいるかもしれないけど、ログスタン先生の雰囲気が怖すぎるよぉ!


「…ふむ。どうやらいないようだ。ならば始めるが良い。各種類ごとに専門の先生方が控えている。武具の特性、自らの魔力との相性、もしくは先生方の経験を良く聞き、熟考するが良い」


ログスタン先生の話を聞いてすぐさま動きだした生徒は極僅か。

あの人たちは始めから使いたい武器という物について調べて来ているのかもしれない。

その他の大多数の生徒はいまいちイメージが出来ないのだと思う。

現に、僕もそうだから。


「……動かぬ生徒がこれほどいるとは…。自ら動き、理解を深めようとは考えぬわけだ。何とも嘆かわしい。そんな諸君に一つ参考となる話をしておこう。魔力属性と武具の相性についてだ」


ログスタン先生が大げさに手を頭へ当てて落ち込んだ素振りを見せる。

本気なのか、からかっているのか…僕にはよく分からない。

でも、生徒の事をしっかりと考えるいる事だけは理解できた気がする。


「まず始めに属性が“火”と言われた生徒。その者達には大剣やバスターソードといった叩き斬る事を重視した武具を勧めよう。“火”という属性は攻撃そのものを強く高める事ができる属性だからだ。手数ではなく、一撃一撃に重点を置く者はこの類いを選ぶとよい」


「次に“水”と言われた生徒。その者達には長剣や片手剣といった汎用性を重視した武具を勧めよう。“水”という属性は全てにおいて応用が効く。攻め易く守り易くと言われ、戦闘に慣れぬ初心者から幾重の戦いを勝ち抜いた古参まで幅広い支持者がいる。全属性の中で特に“水”は武具に属性を纏わせやすいからだ。安定性を求める者はこの類いを選ぶとよい」


「そして“風”と言われた生徒。その者達には曲刀や太刀といった斬る事を重視した武具を勧めよう。よく勘違いする者が多いが、叩き斬ることと斬ることには大きな違いがある。それは何かと言えば、武具そのものの重力で斬るか武具そのものの切れ味で斬るかの違いだ。重力を乗せて斬る事は簡単だ。上から下へと降ろすだけでも良い。しかし、切れ味で斬る事は難しい。刃の特性、向き、斬る部位をしっかりと考え、動かなくてはならないからだ。繊細な武具故に、壊れやすい。使う者を選ぶが慣れれば優秀な存在となるだろう。斬る事一つに重点を置く者はこの類いを選ぶとよい」


「“土”と言われた生徒にはハンマーや棍棒といった叩き潰す事を重視した武具を勧めよう。言うまでも無いが、“土”という属性は重さを与えるといった事に関しては一番優秀だ。しかし、切れ味を悪くする効果もあるため、大剣などには向かん。対人には難しいやもしれぬが、対魔獣では活躍の場は多い。力に覚えのある者はこの類いを選ぶとよい」


「最後は“雷”と言われた生徒。その者達には槍といった突く事を重視した武具を勧めよう。“雷”は特性上、突破することに長けており、一瞬の速さを求める者はこの類いを選ぶとよい」


「……ここからは余談だ。今年の生徒達にはいないと聞いているが、念のために説明しておこう。“闇”と“光”についてだ。“闇”は暗器と呼ばれる類いの武具に絶大な効果を与える。奇襲・暗殺といった裏の戦い方をするものにはぜひともと言ったところか。“光”は聖なる力。魔を滅し、弱きを助ける“闇”とは対になる属性だ。伝説では“光”を扱う者は聖武器と呼ばれる特殊な武具しか扱えぬが、魔との戦闘、守るための戦いにはどの属性よりも効果を発揮すると記されている。……最も、この二つは伝説の属性であり、近年に見かけられたことはない。これにて魔力属性と武器の相性についての説明を終了する。ここまで説明してもイメージできぬ者については仕方がない。私がしっかりと教えてさし上げよう」


説明が終わった瞬間、動かずにいた生徒達が全員何らかしらの武器の方へと走っていった。

最後の言葉が効いているのがよく分かる。

他の先生方は苦笑気味だけどね。


僕もログスタン先生とマンツーマンは嫌だったから動きだしたのはいいけど、実際にはまだ迷っていた。

僕の属性は“火”。

先生の説明に則るのであれば、大剣やバスターソードのような武器になるのだけど……。


「ん~…どうしようかなぁ~…」


「悩んでいるのかい?」


「え、あ、はい」


「僕の名前はマイリー。使用する武器はバスターソードさ。それで、何を悩んでいたんだい?」


「えっと……僕の属性は“火”って言われたんですけど、僕の体格だとあんまり重い武器は使えないし、けど槍とかで突くのもあんまりイメージが出来ないというか…」


「ふむ。……一度、試してみるといいかもしれないな。バスターソードにも種類があってね。小さめで重いものから軽くて大きいものまであるんだ。例えば……コレとか」


そういってマイリー先生に渡されたのは僕の身長ほどもあるバスターソード。

見た感じ、すごく重そうに思えたんだけど……。


「わっ!?すっごく軽い…ッ!」


「だろう?このバスターソードは「フロウソード」という名前でね。軽火岩と呼ばれる石を使って作られているんだ。石で出来ている割には軽く、力が無い人物でも扱える代物さ。……まぁ、オーダーメイドで作ろうとなるとそれなりに値段は張るけどね」


何回か振り回してみる。

このフロウソードは僕の手に吸いついたかと思うぐらいしっくりきて、初めて武器を持った筈の僕でも振り抜くっていう感覚が分かった気がした。


「こ、これの貸出しって出来ますか!?」


「気に入ったようだね。ん~…何人選ぶかによるけど、五人以下なら常時貸し出せるよ。……ま、いいでしょ。僕からの餞別だ。特別に常時貸し出して上げるよ」


「い、いいんですか!?ありがとうございます!!」


「その代わり、ちゃんと手入れを忘れずにね。軽くて丈夫な反面、手入れを怠ると魔力が反発しやすくなる一面もあるから」


「分かりました!色々とありがとうございます!!」


マイリー先生にお礼を言ってフロウソードを片手に中央で暇を持て余しているザール君の元へと向かう。

ザール君は始まる前から槍と決めていたし、僕より時間がかからなかったのだろう。


「ザール君!」


「おっ、ようやく戻って来たん……ゴッツイ武器選んで来たんやなぁ」


「マイリー先生に勧められてね。軽くて丈夫な軽火岩っていう石を使ってるんだって!」


「ホンマかいな……軽火岩ゆうたら市場で金貨数枚はいるで?」


「……大事に扱おう、うん」


そんなに貴重な石だとは……思ってもみなかった。





その後、リュラン君とも合流した。

リュラン君は装飾の少ない騎士剣を持ってきていた。

理由は特にないとの事。

リセルは遠くから見た感じ、大剣を。

エリンは杖を選んだと言っていた。





∽to be continue∽

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