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Held Flugel  作者: アクア=イスタロス
第1章―闘技大会編
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第三話

3/15

改訂作業完了

魔闘部を見学した後、その日は魔法部、騎士道部と人気クラブを周った僕達は、明日からの予定をエミリア先生から聞いた後、解散となった。

新入生は一ヶ月後の仮入部まではクラブ体験を行なってはいけない決まりになっている。

何だか焦らされている気がするけど、そういう決まりだから仕方ないね。


「なぁ、アラン。今日の三つ見てどう思った?」


「んー、そうだね……。魔法部とか良さそうだったけど」


「あー、なるほどなぁ。たしかにアランは戦うより考えるって感じやしな」


「むぅ。それって僕がひ弱に見えるってこと?」


「少なくとも強そうには見えへんな」


「ぐぅ」


た、たしかに僕は背が小さい。

今年で13になるけど、未だに背が伸びる兆しが見えない。

隣にいるザールはさっき168センチだと言っていた。

羨ましい……。


「そういうザール君はどこがいいと思ったの?」


「オレは断然魔闘部やな。学園にいながら実戦訓練!ギルドでの依頼達成数も迷宮での突破回数も魔闘部が断トツでトップや。それも、同じ人物やなく、色んなやつがこなしとる。もちろん、学年は上やったけど、頑張ればオレもいけるやろって思わせてくれるんが魅力や」


「ほぇー」


驚いた。

不真面目で頭が空っぽそうなザール君がそこまで考えていたとは…。


「まっ、明日からも色んな場所見に行く言うてるけど、オレは正直魔闘部以外には入るつもりはあらへん。やから単独見学が可能になる半月後が楽しみや!」


そう、新入生は混乱を避けるために半月後までは勝手にクラブ見学を行ってはいけないんだ。

バレなきゃいいみたいだけど、バレると……。


「魔闘部かぁ…」


「おっ、アランも興味持ったか?オレと一緒に魔闘部行かへんか?」


「全部のクラブを見学してから決めるよ。正直、今は無理だよ」


「せやか。っと、もう寮に着いてしまたか。何階やった?」


「えっと…19階だね」


「ほいほいっと…」


今僕達がいるのは学園が用意している男子寮の内の一つ。

寮は大きく分けて三つあり、それが男子寮・女子寮・教員寮で、僕達はその男子寮の中でも一番規模の大きいB塔の19階に居室がある。

全学園生徒数七千人以上に加えてたくさんの先生がいるから仕方ないとは思うけど、ここまで大きくする必要があったのかなぁ?

部屋は基本的に三人部屋で、クラス単位で分けられているみたい。

ただ、規模が規模だから、上に行くのにも転移用魔法陣が用意されていて、階段で上がる必要が無いことに僕はホッとした。


他にも、寮から直通で繋がっている大食堂は寮に住む全員が利用するから物凄い混む。

入れ替わり立ち替わりで動くからのんびりと食べる暇も……あった気がする。

浴場は複数ある内の一つを使えばいいって書いてあったけど……どこを使うか悩むね。


ついでに、寮には娯楽施設も充実しており、ビリヤードやカードゲーム用コーナーを始め、何故か魔法訓練施設まで備わっている。

まさに生徒達のための寮だ。

最後の魔法訓練施設は僕も一回だけ利用してみたけど、どんな魔法を撃ってもちょっとしたら元に戻るんだ。

もちろん、僕なんかが知ってる魔法なんてほとんどないけど。

撃ち終わった後、施設内を歩いてたら、大きな爆発音が聞こえた。

ここって防音設備も完璧って聞いたけど……?


「そういや、部屋はオレとアランと誰なん?」


「僕も聞いてないよ。仲良くなれれば良いんだけど……」


「まっ、誰でもええやろ。――おっ、ここやここや」


「1930号室。もう誰かいるかなー?」


扉のノブを回して中へと入る。

まず見えたのは大きな窓。

壁一面に広がり、高い階なだけあって外の景色も最高だった。

次に見たのは大きくふかふかそうなベッドが三つと勉強机が三つ。

これらは三カ所にバラバラに設置されている。

最後は部屋の中央を陣取る大きなテーブル。

ここで談話をしろってことかな?


「んー、僕のは真ん中で、ザール君のはどっち?」


「左や。ちゅーことは一番右が最後の一人やな」


ザール君につられて僕も右に来るだろう人の荷物を見る。

まず思ったのは極端に荷物が少ない。

僕やザール君は衣装ケース数個や鞄数個、今年使う教科書類に戦闘訓練用の指定衣装などと大量の荷物を持ってきているけど、最後の一人は衣装ケースが一つと鞄が一つ、そして、既に棚に入れられた教科書ぐらいしか見当たらず、足りないのではないかと思うぐらい少ない。

一人一人に与えられた収納スペースに入れてあるのかと思ったけど、見たところ何も入っていない。

まさかとは思うけど……。


「こ、これで全部…なのかな?」


「ホンマやったら驚きやで」


ザール君と顔を見合わせてしまうけど、仕方ない。

そうこうしている内に外からドアノブを回す音が響く。

ようやく待ちに待った件の人物が誰なのか、ドキドキしながら待つ――


「……」


「……」


「……」


ドアから現れたのは……今日注目の一人、リュラン君だった。


「さ、最後の一人はお前なん?」


「…そっちの二人がこの部屋の住人であるならば、な」


「そ、そうだよ。今年一年、よろしくね!」


何とか明るく、元気な声でリュラン君に挨拶をしてみる。

無口な彼だけど、こちらから巻き込めば何とかなる…よね!?


「…ああ」


少し引いた感じに同意してくれた。

嬉しいけど、少しだけ落ち込んだ。

同情してくれたザール君の手がやけに温かく感じられた顔合わせだった。





―――――――――――――――

―――――――――――――――

―――――――――――――――





その後、僕とザール君、そして無理やり引っ張ってきたリュラン君の三人で食堂へと向かった。

転移二回で着くからすぐだけど、席取りが重要だからとりあえずザール君に頼んだ。

そのままザール君は席取りに、僕とリュラン君は食事を取りに食券売場へと向かう。

ザール君は予め、今日の日替わり定食なる物を頼まれた。

僕はどうしようかなぁ……。


「ねぇ、リュラン君は何にするの?」


「……チョレギ、ポテト、バーベキュー」


「名前だけ聞いたらスゴイけど、全部サラダだよね…?」


「……夜はサラダが基本だ」


そのままリュラン君は食券を出しに行ってしまった。

僕もカレーの食券を買うと、リュラン君の後を追う。

並びながら中を覗いていると、「料理人!」っていう人から「おばちゃん!」っていう人に「おねーちゃーん」みたいな人まで数多くの人材が揃っていた。

……って、え?


「おや、あんたサラダだけで大丈夫かい?若い子が夜食べずに持つのかい?」


「……大丈夫。朝と昼はしっかりと食べている」


「そうかい。なら平気だね!坊ちゃんはカレーと日替わりね」


「は、はい」


「じゃ、ちょっと待っといておくれ」


食券を受け取ったおばちゃんはそのまま二人の人に声をかけて自身も厨房へと立った。

その後、声をかけられた人とおばちゃんは目に見えぬ速さで包丁や鍋を動かし、二分後には目的の料理が渡されたのだった。


「おっ、早かったやん!見てみい、席はしっかりと奪取しといたで!!」


「ありがとう、ザール君。はい、今日の日替わり定食」


「ほうほう、今日はササミ魚のムニエルか。うまそうやな~」


待っていたザール君に食事を渡し、三人で丸机を囲むように座る。

食事中は……言わずとも分かると思うけど、僕とザール君は今日の感想を言い合って、リュラン君は三つのサラダをゆっくりと食べていた。

リュラン君は基本話さないけど、聞けば返事を返してくれたからそんなに悪い人ではないみたいで一安心。

食べ終わるとそのまま浴場へと向かうけど、ザール君は何を考えたのか、「先に行っててくれ!」と叫んでどこかへ走って行っちゃった。

リュラン君は変わらない表情でそんなザール君を見ていたけど、興味を失ったのか、再び浴場へと歩いて行った。

ザール君の事は気になるけど、どうする事も出来ないし、そのまま慌ててリュラン君の後を追う。

追いついてリュラン君の隣を歩くけど、彼は本当に同世代なのかなぁ?

見た感じ、ザール君より大きい。

ザール君が168センチだったから、リュラン君はさらに大きいことになる。

……羨ましい。


「……身長は、伸ばせと言って伸びるものではない」


「ふぇ?」


「もちろん、両親からの遺伝や年齢が左右する面も多い。だが、先天的な要因だけで全ての物事が決まる訳ではない。食生活や普段の生活を見直す事で変わる可能性もあるだろう」


「あ、うん」


「……つまり、何もせずに諦めるのは早い。まずは動くことが重要だ。……そうだな、保険のトウメ先生に相談して決めるのが一番安全か」


「……ありがとう」


「……別に、大したコトではない」


何故、僕の思ったことが分かったのかは分からない。

でも、真剣に考えてくれたのは嬉しかった。

少しだけ……リュラン君のことが分かった気がする。


「ひぇぇ~!お助け~!!」


「待ちなさい、この変態野郎!!」


「捕まえて焼き殺してくれるわ!!」


……逆にザール君とは友達でいるべきか不安になった、うん。





∽to be continue∽

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