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Held Flugel  作者: アクア=イスタロス
第1章―闘技大会編
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第十五話

とりあえずレクス無双編。

視点はレクスとアランでほぼお送りします。

実際には数分の出来事を1話のほとんどで使う暴挙に出た私に後悔はない。

『それじゃあ最後のブロックの試合に行ってみようか!最後のDブロックの選手、カモン!』


今度は選手紹介もしない。

それがあの司会者のノリである。

正直、どうでもいいけどノリは良いからみんないいやって状態。


『おおっと!なんとこのブロックには皆のアイドル、レクス様が出場しているみたいだぜ!?みんなで我らがアイドルを呼ぼうじゃないか!せーの、レクス様ー!』


いきなりの問題発言に会場は誰も乗らない。

そんなこと分かっているのか、司会者は勝手に話し続ける。

ただ、当の本人は「またか」とばかりにため息をついていた。


「やっぱ人気なんやなぁ」


「……誰だ?」


「ヒドッ!いつもアランやリュランと一緒におるんにその扱い!?」


「……ああ、多分居たな。すまない、興味が無い」


「エグッ!その顔でその言葉はキツイ!オレのガラスのハートがブロークンしたわ!」


勝手に話しかけて勝手に自滅して逝った隣の少年の話を無視し、レクスは周りの反応を窺う。

自身の容姿から予想はしていたのか、他の選手からの反応は薄い。

たまに絶望した表情や目をキラキラさせた者がいるが……彼女の眼中にはない。

あるのはただ1人。

自身最強と自負するあの魔法を耐えたあの青年のみ。


「(有象無象に興味はない。一瞬で蹴りをつける)」


そう考えて彼女はふと思う。

何故、自分はここまで彼に拘るのかと。

悩んで脳裏を過ぎるのは遥か昔の記憶。

部屋に籠りがちであった幼少時代の思い出。

窓から外を見上げ、浮かぶ雲だけを見続けた無関心の自分に世界の素晴らしさを教えてくれたあの少年のことを。


「……いや、何を考えているのやら。あの人と彼を重ねるなど……。あの人は…既に死んだんだ」


重ねて、それはないと頭を振る。

既に過ぎ去った思い出だ。

彼は10年前に私の前から消えてしまった。

父上は頑張って探していたが、私は確信に似たものを感じてしまった。

あの人は、再び私の前に現れる事はない、と。


それでも、目の前にはいないが、私の中で彼は生き続けている。

部屋かごの中から私を連れ出した許嫁の彼のことを、私はいつまでも想い続けている。

女々しいかもしれないが、これだけは譲れない。

たった数週間の…淡い記憶。

それでも、私は大事に…大切に覚えている。


「……感傷に浸りすぎたな。ふっ、私もまだまだ、か」


自分に苦笑しつつ、右手にいつもの長剣――名を『シルフ』――を構える。

『シルフ』は今は亡きヤマトの刀匠、アマツマラの作品で、敵を斬るにしても、魔法を発動する媒体としても優れた力を発揮する剣だ。

作成方法は機密事項である部分を除いて聞いたところ、三日三晩、精霊石と鬼神石を絶妙な配分で溶かし混ぜた特殊な鋼を打ち続け、その後、七日七晩各属性の魔力液に浸すことで全ての属性に対応できるようにし、最後に私の血を垂らし、所有者の魔力を剣に染みこませたら完成するらしい。

それほどの大作を私が使えるなど、恐れ多いものであったが、彼の魂がこもった作品だ。

大事に使わせてもらっている。


『それじゃあ、準備は良いか!第59回闘技大会Dブロック……始め!』


今までの試合のように多くの選手は闘技場中央へと走り込み、自分の得物で相手を倒さんと勇猛を見せる。

そのほとんどが他学園の選手だが、少しはグランベリア学園の選手もいる。

普段の試合であれば当たり前のことだ。

しかし……今回に関しては残念だったとしか言えない。

私は剣を身体の中心に構え、剣の腹を闘技場中央へと向ける。

今回の魔法は……密室空間だからこそ力を発揮する大規模魔法。

自分の魔力だけで放てる最高の魔法だ。


「【ブルーエクスプローション】」


闘技場中央に青い花が咲いた。





――――――――――

――――――――――

――――――――――





い、今起こった事を素直に話すね!

最後の試合、Dブロックの始まりを司会者の人が高らかに宣言し、闘技場の中央に人が集まった瞬間、膨大な魔力が中央に渦巻き、青い大爆発を起こした。

呑気にエリンやリセルと話していた僕には何が起きたのかさっぱりだった。

突然の事態にテロとか事故だとか叫ぶ人が後を絶たなかったけど、司会者の落ち着いて発言と大会責任者であるダイグラムさんの「喝ッ!」が無ければすぐには収まらなかったかもしれない。

それぐらい突然であり、唐突だった。

爆発で起きた煙は簡単には消えず、完全に視界が開けるには数分も要した。

そして、僕たちも目の前に現れたのは中央が大きく抉られた闘技場の悲惨な現状だった。

場内に残された人を数えてみると丁度8人。

本選出場人数であった。


『な、な、な、何が起きたかわかんねーけど決まったー!Dブロックは前代未聞の2分31秒という早さで幕を閉じたぜ!!そして、今年の本選出場者がすべて出そろったわけだ!!この後、地面を埋め次第、改めて本選出場を決めた選手の名前紹介をするぜ!』


司会の人も理解は出来てないけど今は無視みたいな感じで無理やりテンションで誤魔化してるみたいだ。

隣のエリンとリセルを見ると、呆然、キラキラだった。

……もちろん、エリンが呆然でリセルがキラキラだけど……リセル、君は何を考えているんだい?


「え、えっと…スゴイ爆発でしたね。あ、リプレイが映し出されるみたいですよ」


何とも言えず…みたいな感じでエリンが話し終えると同時に闘技場中央付近の上空にディスプレイが浮かび上がり、どこかの角度から撮られた映像が映し出される。

開始の宣言と共に走り出す選手。

闘技場中央に着くと同時に武器を相手に向けて振ろうとする。

そして、次の瞬間には画面が爆発に包まれ何も見えなくなった。

僕が見たまんまの映像だったけど、結局誰が原因で起きたのかはさっぱりだった。





――――――――――

――――――――――

――――――――――





控え室へと戻った私に待っていたのは祝福ではなく小言だった。


「…やり過ぎるなと言った筈だが」


「い、いや、この前のものよりは比較的優しいもののはずだ。断続的に続くことはないし、ある程度の障壁で防がれるからな」


「…ノ―タイムで起きたらほとんどの者は防げないと思うがな」


「…ぐぅ」


た、たしかにそうだが……少しぐらい褒めても良いと思うんだがな…。

宣言通り、すぐに終わらせたわけだし、残った選手は全員グランベリア学園所属だ。

結果としては最高だったと思うんだが……。


「……はぁ。まぁ、スゴイと思う、ぞ」


「…私の目を見て言って欲しいものだな」


「断る」


「むぅ…」


冷たい、と思うと同時に心のどこかで嬉しく思う。

これがどういう気持なのか私には分からないが…心地よいものだと思う。

少なくとも、これまで生きてきた16年間の中で、2度目の気持ちだ。

1度目は……言うまでも無いよな。


「お前のせいでここの管理者は大変そうだな。地面の埋め直しには魔法は使えん」


「そ、そうなのか?」


「…一時的には可能だが、永続的にとなると実物を用意しなければならない。魔力が途切れれば消えるものがほとんどだ」


「そ、そうなのか……」


「…ま、お前は勝つために最善を尽くしたんだ。それは誇るべきだろう」


「え、あ、う、うむ」


「…?どうした、急に赤くなって」


「な、何でも無いぞ、うん」


「…そうか」


き、急に褒められたせいで動揺するとは…しかも、顔が真っ赤らしい。

むむむ……まだまだ未熟というわけか。

い、いや、そもそも突然手のひらを返したかのように褒めるリュランが悪いんだ!

……だ、だが、他人のせいにする時点でそれは自身の心の甘えか。

今後も精進せねば……。





――――――――――

――――――――――

――――――――――





『――以上が、本選に進む選手たちだ!観客の皆は温かい拍手を!』


闘技場内に拍手が木霊する。

しかし、選手の内訳は例年以上に酷いものだった。

ほとんどがグランベリア学園一色なのは変わらないが、比率が例年より1割も多い。

つまり、全体の9割がグランベリア学園所属であり、残りもほとんど運で残れたようなものが多いのが現状だ。

よく質が高いというが、大体の理由はグランベリア学園が優秀なだけで、他は微妙と言ったところか。

本選は個人戦となるため、今回の戦い以上の試合が見れること間違いなしだが、最後のような大爆発だけは御免だろう。

あんな無差別攻撃を個人戦でやられた方はたまってもんじゃないだろう。


『それでは、閉会の挨拶の方を大会責任者からお願いします!』


『あー、うむ。今回の大会予選も実に良いものであったと思う。最後の試合に関しては……実力を発揮できなかった選手の者は諦めず、また次回を目指して欲しい。そして、本選にコマを進めた選手の諸君は今後もフェアプレーを意識し、切磋琢磨をして実力の向上に努めて欲しい!これで第59回闘技大会予選を終了とする!』


『わあああああ!!!』


大会責任者、ダイグラムの言葉により今日の全日程は終了し、予選は幕を閉じた。

しかし、これは始まりに過ぎない。

本選を来週に控え、選手の皆は勝利に向けて努力を重ねるだろう。

1つでも多くの勝利を目指し、戦略を練り、練度を高め、己を鍛え抜くのだろう。

戦いの幕は…これから開くと言っても過言ではない。

来週は……さらなる激戦を予感させた。





因みに、闘技大会本選の優勝賞品は作品内で影の薄い鬼神石だったりする。





――――――――――

――――――――――

――――――――――





「――以上が、本日行われた闘技大会予選における姫様と例のお方の活躍でございます」


「くははははっ!そうか、あいつは大いに楽しんだようだな。それは何よりだ!…しかし、あやつは中々実力を見せんようだな。やはり、私自身が確かめねばならんが……中々書類が終わらんものだな」


「当たり前でしょう。いつもサボってばかりなのですから」


「ぐっ、言うではないかセバスチャン」


「もちろんでございます。私は陛下のセバスチャンでございます故」


「ふぅ、それはそうだが……何とも歯がゆいな…」


「ともかく、今日中にこの山だけでも終わらせてください。こちらは明日までに。そしてこちらは明後日までに」


「お、おい!?これを今日中にだと!?」


「はい。既に1週間前から鎮座しております」


「……はぁ」


王様は相変わらず忙しそうに働いているのだった。

…この話はあくまでついでであり、本編にはほとんど関与しないものである(笑)





∽to be continue∽

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