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Held Flugel  作者: アクア=イスタロス
第1章―闘技大会編
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第十一話

ぐだぐだぐだぐだ

予想がついているとは思いますが、リュランはあのリュランですので経験とか技術は常人を遥かに超えてます。

あのリュランが分からない方はすみませんが、どこかでキャラ説明を入れますので、そこまでお待ちください。

生き残った者は拳を握りしめ、自らの成長と目指す場所へ近づけたことに喜びを露わにした。

負けた者に言葉はなく、ただ自らの不遇に心を落とし、過去に縋り涙を流した。


聖グランベリア学園の魔法闘技部――通称、魔闘部――では、来週末に行われる迷宮最深部への探索権を賭けた闘技大会の代表を決めるべく、順位争奪戦の真っ最中であった。

上級生が激戦を繰り広げる中、ちらほらと見かけぬ顔の者たちが善戦していた。


「せいっ、はあっ!」


「くっ、新入生とは思えんな!」


現在、果敢に上級生を相手取り、攻めているのは今年入学の新入生。

しかし、攻め方はむしろ熟練の剣士を思い起こさせる。

突きからの逆袈裟切り、かわされたと判断してからの間合いの詰め方、強引に振り下ろして来た相手に対し、無理に打ち合わず、剣の腹で滑らせるように受け流し、そのまま袈裟切り。

相手にほとんど付け入る隙を与えていない。

相対している相手の名前はライゼン。

今年4年生となり、ゆっくりとではあるが、力を付け、今では中堅ぐらいの力を持つ者だ。

そんな彼を圧倒しているのが、今年入ったばかりではあるが既に順位を85位にまで上げ、怒涛の勢いで上位に迫る少女。

レクス・ディ・クラベリアである。


「【氷結】」


「がっ!?な、なんだ!?」


「終わりだ」


レクスが短く魔法名を唱えるとライゼンの足を氷が覆う。

動きを封じられ、冷静さが欠けてしまったライゼンを凶刃が襲うまでに時間はそうかからなかった。


「勝負あり!勝者、レクス・ディ・クラベリア!順位が98位へと昇格!」


「……ようやく2ケタか。まだ先は長いな…」


試合を終え、一息つくレクスの側へ2人の人物が近寄る。

1人は白髪、もう1人は金髪だ。


「お疲れ様、クラベリアさん!」


「お、お疲れ様です」


「いえ、大したことはありません。ですが、ありがとうございます。クリアフォードさん、カーラーさん」


同じクラスであり珍しい髪を持つ少年、アラン・クリアフォードと双子の姉妹であり、クラスでも1位、2位を争う容姿を持つ美少女、エリン・カーラー。

2人とも先程まで試合を行っていたばかりで、それぞれアランは823位に、エリンは704位へと順位を上げていた。


「でも、クラベリアさんの戦い方ってスゴイね!最後は魔法を使ったの?」


「はい。氷結という水属性でも基本となる温度変化を利用した魔法です」


「でも、発動から顕著までがとても短かったですし…さすが、としか言えません」


「…ありがとうございます」


褒めの言葉にもあまり表情を変えず、淡々と話すレクスはまるで人形のようだ。

少しだけ残念に思いながらも、アランは一番聞きたかった事を質問した。


「ところで、クラベリアさんはリュラン君の居場所って知らない?」


「?いえ、見かけていませんが」


「そっか…。この争奪戦が始まってから一度も見てないからちょっと心配になっちゃって」


「…受付で聞けばいいのではないのですか?」


レクスの発言に「そうか!」とばかりに頷いた2人に少々呆れる。

早速とばかりに受け付けの方へと移動する2人を見続け、ふと興味が湧いた。

少年が気にする者は、一体どれほどの者なのだろうか、と。

もちろん、自分に敵う新入生がいる筈も無いのは分かっているが、それでも興味が湧いたのだ。

静かに2人の後を歩き、教えられた闘技場へと転移する。

場所は――第6闘技場。





キンッキンッキンッギィンッ

ザーッ

ヒュン、キィンッ


激しく打ち合われる剣が散らす火花。

距離を空け、詰め寄る度に巻き起こる土煙。

一瞬の跳躍と同時に繰り出される必殺の一撃。

それらが繰り返されること数度、どちらが勝ってもおかしくはなかったが、それでも決着がつかなかったのはやはり上級生としての意地だからだろうか。

再び距離が離れ、互いの動きをけん制するかのように手に持つ得物が鈍く光る。


「――で、リュラン君は何をしてるのかな?」


「見学」


「せめて僕達に一声かけてから言って欲しいんだけど……心配したんだからね!」


「いや、俺がどこに行こうが勝手だろう」


「それはそうだけど……むー!」


アランが目的であるリュランを見つけた。

しかし、結果は見ての通り。

リュランが適当にあしらい、アランが頬を膨らませて怒る。


「…だが、結果的にクリアフォードはそなたを心配し、こうして探しに来たのだろう?ならば少しは礼を言っても問題はあるまい?」


「関係ない。…アンタにもな」


「……」


「……」


無言で火花が散る。

片やこの国の王女。

片や性も分からぬ謎の一般人。

身分的には格差があったが、凄みに関して言えば同等だろう。

ギルドから『氷の剣姫』と呼ばれるレクスの威圧に対抗できるリュランがおかしいと周りは一斉に言うだろうが。


そんなこんなで話している内に中央で行われていた勝負にも決着がつく。

どうやら防衛側が辛勝したらしい。

長剣を地面に突き刺し、それにもたれかかるようにぐったりしている。

そんなお疲れ状態の彼に近づく人物が現れた。


「ふはははは!いくら君が35位だろうと、今の状態で僕に敵う筈が無い!いざ、勝負勝負!」


その人物が言い放った台詞を聞いた瞬間、アランやエリンは唖然とし、周りにいた上級生に至っては笑顔のままキレそうである。

リュランとレクスも睨み合いを中断し、先程の威圧を今は件の少年に向けて放っていた。

言わずとも分かるとは思うが、皆の心は1つだった。


「お前が言うな」と。


当然、言われた本人であるお疲れな彼――先程の勝利宣言ではジンと呼ばれていた――も剣を抜き、既に戦闘状態だ。

未だに謎の笑い声を上げ、この場にいるほとんどの上級生を敵に回した少年、ザイリンの自信がどこから来るのか分からないが、とりあえずバカなのだろう。


「えーと…部長、この場合はどうしたら?」


「くくくく……ああ、悪い悪い。まぁ、いいんじゃないか?連戦で新入生にあっさり負けるほど上も弱くはないさ。……最も、この程度で負けるんであればあいつはその程度のやつだったってわけだ」


「は、はい。それでは、両者、構え!」


部長に許可され勝負の宣言をする先程まで激戦の審判を務めていた青年。

ザイリンは右腕に片手剣を持つ。

ジンは先程と同じように長剣を右手に持ち、正眼の構えで応対する。

空気が刺激され、ピリピリとした雰囲気が漂う。

そして、両者動き出す。


「――と、カッコ良く場面の説明をしたはいいが、一撃で倒されてるあの馬鹿をどう説明したものか……」


「何を言っているんだ、そなたは」


と、リュランの発言から分かる通り、ザイリンはジンに一撃で沈められた。

片手剣は粉砕し、驚愕に満ちた顔で消えていった彼の心中はいかほどのものなのだろう……?


「なんだ、見かけ倒しか」


「ぷぷぷ、あの新入生みたいなのがゴロゴロいても困るけどねぇ」


「まだ分からんぞ?あの第三王女が誰を狙う事やら」


「『氷の剣姫』だっけ?十歳でニルトラームを倒したって聞くけど?」


「ギルドが発表したんだ。本当だろう」


観客席で場内を見下ろす彼等の目線は次の期待の星――レクスに注がれていた。

その実力が見れるのかと期待する半面、狙われるのが誰なのかと恐々と笑う者達。

性格は微妙だが、それでも実力は折り紙つきだ。

そんな彼らの興味の的である彼女は――


「リュラン。1つお相手願えるか?」


「…………今からか?」


「もちろんだ。先程の前哨戦で確信した。そなたは私に匹敵する力を持っている、とな」


面倒そうな顔でレクスの顔を見るリュランだが、その本人は全く気にせず勝負の理由を淡々と語る。


「俺の負けで「断る」……」


試合放棄も一方的に封じられ、どうしたものかと悩む素振りを見せるリュランであったが、ため息をつきながら中央へと向かう。

その姿に、勝負を受けたと考えたレクスも後に続いて中央へと移動する。


――この場にいた全員が注目する。


中央にいるのは王女、レクスと先程順位を50位に上げた期待の新入生、リュラン。

部長や副部長も注目する2人がこれほど早く対戦するとは誰も思っていなかっただろう。


「審判、ルールを確認していいか?」


「え、あ、はい。勝利条件は相手に致命傷を与え、消えたのを確認する。もしくは負けを認めるかです。武器の破壊でも構いませんが、相手に続行の意思があれば勝負は続きます」


「…負けを「断る!」……」


すぐさま負けを宣言しようとするが、先にレクスに拒否を宣言され、再びため息。

そして――


「……仕方ないな」


空間より騎士剣を取り出し、左足を前に出し、切っ先を相手に向け、右の頬の横で雄牛の角のごとく構える。

その構えより、レクスも空間から長剣を取り出し、右側を前にして構える。

両者の緊張感は最大まで高まり、残すは審判の合図を待つばかり。


「……始め!!」


合図と同時に空気すら置いて行かれた激突が闘技場中央でぶつかり合った。





「…スゴイ」


目の前の光景に、僕は無意識に考えを言葉として発していた。

怒涛の猛攻で相手に攻める時間を与えないリュラン君。

流れるように受け流し、隙を見つけては鋭い斬撃を放つクラベリアさん。


最初、審判の人の宣言と同時にリュラン君は突きを、レクスさんは袈裟切りを放ち、奇しくも2人の剣技は中央で火花を散らしながら拮抗した。

押し切れないと理解するのが先か、身体が反応するのが先かは僕には分からない。

でも、2人はすぐさま距離を取り、再び激突した。

リュラン君は普段の態度とは正反対の動きでクラベリアさんに迫り、クラベリアさんはその猛攻を時に避け、時に受け流して動じていない。

初手の激突から次元の違いを見せていたけど、同学年――それも、1人は僕の友達がここまでスゴイ戦いが出来る人だったなんて……。


「これが…リュラン君とクラベリアさんの実力」


「同じ新入生とは思えないですね」


隣のエリンが苦笑いを浮かべてるのが手に取るように分かる。

リセルがいたら目を爛々と光らせて食い入るように目の前の光景を見るのだろうけど、残念な事に彼女の姿は見えない。

大方、順位を上げるべく連戦に次ぐ連戦の真っ最中なのだろう。


「それにしても、リュラン君はどうして強さを隠すんだろう?」


「そうですね。クラスではそれほど目立つ動きを見せてませんし。姉さんも反応していませんでした」


酷い言いようではあるけど、リセルは本能で相手の強さを窺う――らしい。

たまにエリンの愚痴を聞く時にクラスの人の評価や見た目だけの人の話を聞くことがある。

そこで幼馴染によく分からない力が備わっている事を教わったんだけど……リュラン君に関しては何も言ってなかったからね。


「リュラン君はクラスでは目立っていないのかい?」


「これだけ出来れば間違いなくトップを狙える筈なんだがな……」


いつの間にかグラルさんとケリーさんが後ろに来ていた。

慌てて挨拶をするけど、適当に流されて再び戦闘に目をやる。


「時折、クラベリアさんの魔法が動きを制限してるみたいだけど、リュラン君は上手く避けてるね」


「当たる瞬間を察知しているのかと思わせるぐらいギリギリだがな。逆にリュランのやつは全く魔法を使わんな。スキルは1つか2つほど放っているが」


「……まぁ、剣技だけでも上級生を圧倒できるのですし、間違いではないのですけどね……」


「えっと、聞いても良いですか?リュラン君が剣技だけでも先輩を圧倒できるって…」


「ああ、いなかったから知らないよね。1時間ぐらい前かな。50位の5年生を剣だけで倒して暫定ではあるけど代表入りしてるんだよ、彼は」


それを聞いて僕は何も言えなかった。

「いつの間に」というのもあるけど大部分は「まさか」という驚きだ。

いくらリュラン君が強くても、先輩たちを圧倒できるなんて……。

でも…この動きを見てたらあり得ないって思える。

見学してた先輩達の試合に引けを取らない体捌きの数々。

この前やった初歩的な剣の動きとは比較にならないほど早い斬撃。

全てが僕の想像を超えていた。


「…いつか、僕もあんな風に戦えるのかな……」


「…諦めずに頑張ればな」


「7年というのは思う以上に短いですよ。この時間をどのように使うかはあなた次第です」


グラルさんとケリーさんの言葉を心に留める。

いつか、僕もあんな風に戦いたいと決意を固めながら。





∽to be continue∽

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