第九話
久しぶりに連日投稿。
今回は説明のイメージが強いです。
あと、謎のサブキャラ・ザイリンの正体が……
今日も僕達は魔闘部で練習をしに来ました。
あ、別に勉強をおろそかにしてる訳ではないですからね!
ただ、こっちの方が楽しいって言うか、何て言うか……。
「アラン。はよやらんとお叱りが飛んでくるで!」
「う、うん」
機能の模擬戦の結果を踏まえて、グラルさんが僕たち個人個人に練習メニューを考えてくれました。
僕の場合だと、まず体力がないのと型を覚えてないのが痛いため、最初は走り込み、その後は一般的な型を数種類覚えろとのことです。
ザール君は既に体力も基本も出来ているので、魔法やスキルを組み合わせた戦い方を考え、実際に動いてみろとのことです。
――あ、スキルについてですか?
スキルとは――
武器や戦い方に合わせて使われる技の1種。
魔法と違い、素質ではなく経験によって覚えられる事が出来るのが大きい。
しかし、基本的に武器に左右されるため、魔法より使用できる種類が少ないのが難点。
スキルを覚えるには1つの武器を集中して使っている時にふと頭に過ぎるか、スキル書と呼ばれる書物を読み、その動きを真似るのが基本であるが、時折武器にスキルが備わっている場合もある。
代表的なものは、剣であれば【スラッシュ】や【高速薙ぎ】、斧であれば【地砕き】や【武装破壊】、槍であれば【対空突き】や【高速突き】などがある。
たまに、本人の資質で得られるスキルも存在するが、条件はほとんど分かっていない。
――というわけです。
つまり、魔法のように誰かに教わって覚えるのではなく、自分で探して見つけるしかない技術なわけです。
ですが、魔法以上に対人戦に優れているため、戦争や魔物狩りではスキルの方が有利な時もあるとか……。
ともかく、ザール君は既に覚えている魔法やスキルを使って連携を考える事が課題の様です。
ザイリン君は……どうなんでしょう?
グラルさんもあまり深くは言わず、自分の求めたい技術を身につけろとしか言ってませんでしたし。
まぁ、当の本人は高らかに笑っていましたが……。
深く言われないと言えば、リュラン君もほとんど言われていませんでした。
彼の場合は、好きにしろとだけ言われていましたので、今は僕の練習を見ててくれています。
……あまり考えていませんでしたが、彼は何者なんでしょうか?
戦い方はザール君も驚くほどでしたし、魔法に関しても独自の考え方を持っていそうでした。
……んー……。
「…考え事はいいが、しっかりと振ってくれ。それでは練習になっていない」
「あ、うん。ごめんね」
「いや、分かればいい」
ぶるぶるぶる
どうやら注意散漫になってたみたい。
集中しないと!
【sideザイリン】ちょこっとだけ紹介
ふはははは!
僕の名前はザイリン・オキシオル!
家は中級家庭ではあるが、両親とも学園卒であり、魔法もかなり使える人たちだ!
そんな両親を持つ僕がどこぞの人間たちに負ける筈がない!
そして、この僕には誰にも語った事のない秘密がある!!
それは……転生者ってことだ!
最近の神様事情は厳しいらしく、魔力最強とか、イケメンナデポとかは貰えなかったが、僕自身が最強と思ったスキルを生まれながらにしていただくという天声ボーナスを貰っている。
そのスキルは……何、時間だと!?
そんな馬鹿な!?
これからが僕のターンだというのn(ry
【endザイリン】可哀想なやられ役の紹介でした
――ん?
何か、途中で時間を使われた気がしたけど……気のせいかな?
「また剣筋がブレた。集中しろ」
「ご、ごめん!」
2時間ほどやってるけど、身体が思うように動かない。
思った以上に基礎の型って難しいんだね…。
「だが、やらなければ実戦では生き残れない」
「う、うん。そうだよね」
いつも通り僕の心の声に対してリュラン君が突っ込んでくる。
最近は慣れてきたせいか、普通に返事を返してる自分がいる。
「どうや?アランはコツでも掴めたんか?」
「まだ2時間だ。貴様と一緒にするな」
「失礼やな!オレやて2時間そこらじゃ無理や!」
「ならば聞くな。アランは今日が初めてだ。最初を急いだところで大して変わらん」
「それでも聞きとうなるのが人間やろ!」
リュラン君とザール君が僕の対応(?)について意見を交わしてる。
というより、ザール君が騒いでリュラン君が受け流してるのかな?
「煩いぞ、フェルド!」
「なんでオレだけ!?」
あれ、何かデジャヴ…………。
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そして、その夜……。
とある闘技場にて、2人の人物が顔を合わせていた。
「で、話ってなんだい。グラル」
「……オレが受け持つ4人は知っているよな?」
「ああ。アラン・クリアフォード、ザール・フェルド、ザイリン・オキシドル、そしてリュランだな。それがどうかしたか?」
「……リュランと言う奴、既に新入生ってレベルじゃねぇ。少なくともクリスやラン……もしかすればお前や俺と同等かも知れねぇ」
「――、お前がそこまで評価するか。何を見た?」
「何も。だからこそ、だ」
「ふむ……。私も探っているが何も得られず、だな。入学する時点で性が無いのも怪しいが、学園は許可している。もしかすればどこか有名な貴族の子息なのかも知れん」
「だが、何故性を隠す?貴族ともなれば名は武器だ。言っては悪いが、この学園はどこの地域からも通えるため、貴族たちの間では社交の場でもある」
「過去に何かをやったか……。名を明かす事で影響力が強すぎるか、だな」
「……おいおい、まさか……」
「いや、まだ決めつけるには情報が足りない。もう少し見ていても大丈夫だろう」
「お前が言うなら大丈夫なのだろう。引き続き、俺は側で見るとしよう。――そうだ、1つだけあいつから要望があったな」
「何を言ってきたんだ?」
「迷宮の探索許可だ」
「……分かった。許可については私が便宜を図ろう」
「すまんな」
「気にするな。戦力が増えるのは良いことだ。しかし……入学早々迷宮に行けるだけの力があるのも考えものだな。試験官は何を見た事やら……」
「さあな。大方、上手い事試験管を騙し通したんだろうよ。実際に俺も戦うまではあいつの力を甘く見ていた訳だしな」
「くくっ。そこまでか。まぁいい。許可については任せろ。明日には取れるだろう」
「ああ。じゃあな」
グラルがこの場を立ち去る。
残されたケリーは空を見上げる。
空には満月が煌き、辺りを明るく照らしていた。
「やれやれ。今年は色々と有望な人材が多いものだ。さて、私も迷宮の探索許可を申請せねばな」
ケリーも立ち去り、闘技場は静けさに包まれる。
満月が光る闘技場の中央に、突然人型の影が生まれる。
その影はキョロキョロと左右を見渡し、誰もいないことを確認すると、急に色を付け始めた。
――いや、その表現は間違いかもしれない。
影に色が付いたのではなく、色が付いた存在が影を脱いだと言うべきか。
ともかく、影から身を脱却した人物は一振りの剣を取り出し、舞い始める。
その舞いは儚く、満月の光るこの場だからこそ、何者にも犯されない神秘さを秘めているのだろう。
その者は舞い続ける。
止める者は存在せず、ただ、何かに捧げるかのように永遠と紡ぎ続ける。
いつ止まるのか。
それは誰にも分からない。
∽to be continue∽