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第2話 友好か敵対か

2035年に人類は遂に宇宙人を発見。得体の知れない相手を前に、世界がとるのは「征服論」か「友好論」か。あなたならどっちを選ぶ?

ー2045年ー

 ここは月の国際ステーション東京出張所。大きいガラス張りの外は、赤い土でできた山や谷が広がっている。

 外を見渡しながら、2人の男が歩いている。一人は40代の中年。もう一人は、20歳前後の若者だ。

若い男

「すいません。ちょっと忘れ物をしました。事務所に戻っても?」

中年の男

「ああ、行ってきなさい。ここで待っているよ。」

若い男が去った後、中年の男の左腕の端末に着信がある。

中年の男

「はい、こちら月の第3ステーション。」

『お巡りさん、あなたに聞きたいことがある。』

「わたしは、警備員だ。警察に連絡なら、110番を。」

『いや、いい。警察ではなくてもいいんだ。ただ人類の未来にかかわる重要なことだ。次の話を聞いて感想を教えてほしい。多数決の最後の一人になったつもりで、最後に君の考えを教えてほしい。』

警備員

「人類にかかわる?なにか事故でも?あなたがいる場所は?」

『私はの名前は‟トモ”だ。少し遠い場所にいる。通信技術はすばらしい。遠く離れている私たちがこうやって、それぞれの意思を伝えることができる。』

「ああ、すばらしいね。そのうち、地球とも時差なく通信ができるよう、整備されるだろうがね。」

『あなたに、この音声を聞いて欲しい。大丈夫。元の言語は様々だが、ちゃんと分かるように翻訳されている。』

 通信端末の音声は、少しノイズを伴った音声に切り替わる。警備員はただの冷やかしだと思ったが、若い警備員を待つ間、特にやることもないので、言われた通り、この音声に耳を傾けた。


「ドッキング成功だ。やっと我々は仲間と合流できる。」

「ようこそエナミさん。我船へ。お待ちしていました。」

「はじめまして、君が先発隊の代表のトモだね。君たちの事は、司令部からよく聞いている。調査船にて、長い期間の任務と成果に敬意を払う。」

「こちらこそ、はるばる駆けつけてくれたことに感謝します。仲間を紹介します。こちらはアミです。言語翻訳に優れている。ドルークは、この船の整備を。ヨウは知ってますよね。有名な宇宙学者で僕らの相談役だ。ナイズは、若くて、働き者だ。いずれは、僕らのチームを引き継ぐでしょう。エナミさん、もし良ければ仲間のご紹介を。」

「ああ、そのつもりだ。フェインドは軍の参謀だった。今は、私の相談役だ。ディレンは最強の男だ、誰にも負けない。そっちにいるのが、チョク、テキ、アレアドゥイだ。」

「みんなよろしく。あの会議での決定事項を実現するよう最大限の協力をしよう。」


 場面は10年さかのぼって、2035年東京。この日、非公式ではあるが、重要な国際会議が開催された。

 日本の外交官牧田は、窓から東京の風景を眺めながらある人物を待っている。

 そこに、扉が開いて、男が一人入って来た。牧田は彼を見ると笑顔で言った。

「お久しぶりです、ミスター・スミス。わざわざ東京までおいでくださるとは…」

「私はできるだけ足を運ぶようにしている。今では、データ通信が当たり前になった。確かに一見不都合はなく、立体映像で同じ場で議論しているようにも見えるが…、電子情報は不確かだ。加工もできるし、その人物の周囲の状況も確認できない。」

「用心深いのですね。私たちはデータの改ざんなど…、」

「疑っているわけではない。信頼しているからこそ、同じ場で会議をしたいのだ。例えば…、握手というのは、もともと武器を持っていないことを証明するためにあるもの。友好の意思表示だ。しかし立体映像同士では握手もできない。そうだろ。」

「おっしゃる通りです。では、改めて握手を…」

 日本代表の牧田とアメリカ代表のスミスは、強く長めの握手を交わした。


ー2045年ー

 場面は再び2045年。中年の警備員が聞く音声は、途中を飛ばして、進んでいく。恐らく不要な部分をカットしているのだろうと警備員は思った。

「トモ、早速で申し訳ないが、今後の作戦を話し合わなければいけない。船の作業は周りの連中に任せればいい。」

「えらい急ぐんだね。エナミ。」

「苦言を言うつもりはないが、君たち先発隊はゆっくりしすぎた。君たちの調査では、目的の星、モルビスもワープ技術を持っている可能性があるらしいじゃないか。」

「ああ、だからこそ慎重にやらなければいけない。アミの音声や言語の解析力はすばらしい。もうしばらくしたら、メッセージを送ることができる。今言葉を慎重に検討しているところだよ。」

「そのメッセージはいらない。忘れろ、トモ。」

「え、なんだって?」

「すぐに、工作員を潜入させる。まずは、一番の指令系統を抑える。」

「ちょっと待ってくれ、エナミ。あの時の会議での決定事項に背くのか。」

「君こそ勘違いしている。私たちはあの会議の指示を実行するためにここに来たのだ。」


ー2035年ー

 牧田とスミスは、大きい円卓の両端に座った。定刻を迎えると、他の席に各国の代表者の立体映像が現れる。

牧田が進行役を務める。

「やあ、みなさん。お忙しいなか、貴重な時間をいただき感謝します。」

 スミスが付け加える。

「前回に引き続き、議論を前に進めたい。この会議は、非公式だが、今後の人類の行く末を決めるものだと言っても過言ではない。」

牧田がスミスに言う。

「ミスター・スミス。今日は、初参加の方がおられる。セネガルの代表のミスターフレデリクスだ。」

フレデリクスは「よろしく。」と短く挨拶した。

牧田が続ける。

「フレデリクス、会議を呼びかけたのは、アメリカだ。彼はアメリカ代表のミスター・スミス。そして、順番にイギリス代表のエドワード、ポルトガル代表のシルバ、インド代表のシング、ブラジル代表のサレス、エジプト代表のシャリフ、ドイツ代表のアーネスだ。今日欠席の国にも会議の記録は送付される。」

主催者であるスミスが言う。

「ミスターフレデリクス。ここまでの会議の概要は知っているね。」

「…、まあ、その…、テーマは。」

ドイツのアーネスが疑問を投げる。

「引き継いでいないのか」

フレデリクスは、少し恐縮する様に答える。

「ご存知だと思うが、わが国では、政権交代があった。前政権と今の政権は対立関係にあるのだ。引継ぎができるような状況ではない。…だが、テーマは知っている。知的生命体の発見については、世界中誰でも知っている事実だ。100億光年先に我々と同じように科学技術を持った生命体がいる。そのことについてだろ。解読されたメッセージに世界中が感激したのは記憶に新しい。」

インドのシングが言う。

「フレデリクス、君に会議を理解してほしいから、補足として、説明する。全く得体の知れない生命体からのメッセージはそう簡単に解読できるものではない。いくつかの、国の機関では、あのメッセージには敵対的な意図があると分析しているんだ。」

フレデリクスは顔をしかめて言う。

「なんだって。どうやってそんなことがわかるんだ」

スミスが答える。

「だから、わからない…。わからないんだよ。フレデリクス。友好的かもしれないが、敵対的との分析もある。確信が持てないからこの会議があるのだ。」

イギリスのエドワードが補足する。

「分かっているのは、知的生命体の存在と、向うもこっちの存在に気づいているということだけだ。」

「でも一体何を不安がることがある?そんな遠くの存在なんて、今後出会うことがないだろう。」

 スミスは答える。

「君からそういった意見が出るとはね。人類においても技術の進化は予想がつかない。現に時空を飛び越える技術まで開発されつつある今、宇宙の距離なんて問題ではないはずだ。そうだろ。」

牧田も冷静に付け加える。

「フレデリクスさん、あなたがここに呼ばれている意味をよく考えてほしい。」

フレデリクスは何故か沈黙したままだ。

 そして、スミスが話を進める。

「そうだ、前回までの話では、調査船派遣の可能性についてまでだった。各国持ち帰ってそれぞれ検討していただいたかな…。」


ー2045年ー

「エナミ、あの時の会議では、友好的な関係を築くための行動が示されたはずだ。それを信じて私たちはここまで来た。」

「トモ、君の勘違いはまずそこだよ。将来的に、友好的な関係を築くためにまずは支配をしなければいけないということだ。上下関係がはっきりしなければ、常にどちらも、主導権を握ることを考える。それこそが一番緊張状態であり、危険な状況なのだよ。そのためには、まずは、秘密裏に潜入し、指令系統の中枢を抑えることだ。その後、武力の差を見せつけることができるかどうか、に我々の計画はかかっている。多少の武力衝突でもひるんではいけない。」


ー2035年ー

 2035年の東京では更に議論が続く。

ポルトガルのシルバが発言する。

「支配から入れば、敵対心を生む。その方が後々よほど危険だと思うが。」

イギリスのエドワードが答える。

「簡単に言うが、人類の運命がかかっているんだ。そんなに単純な話ではないよ。」

しかしシルバも反論する。

「我々は、歴史に学ぶべきだ。かつて、どこよりも早く航海技術を手に入れた西洋諸国は、世界に先駆けて、各国を支配していった。それは、自国と相手国に優劣をつけ、あらゆる文明や宗教も失われた。そして、その支配の考え方がその後の戦争をも誘発した。」

「もちろん、分かっているとも。しかし、それは人類について言えることで、今相手にしているのは、人類ではない。」

そこにエジプトのシャリフが加わる。

「エドワードに賛成だ。もちろん、シルバの言っていることは、間違いではない。だがよく考えてみろ。今、我々は地球という世界を理解している。もちろん、他者を尊重すべきという共通の倫理観を持っている。だが、それは地球の全体像を理解している今の時代だから、かつての“支配”を安易に批判できるのだ。仮に君が当時の大航海時代の開拓者になってみろ。世界がどうなっているのか、この先、何が待っているかわからない。安易に歩み寄って殺されるかもしれない。ましてや、自国の期待と命を背負っている。先が見えないその立場で、今のようなことが言えるのか。」

「だったら、そもそも調査船自体送り込まなければいい。」

間に入る様にスミスが言う。

「そういうわけにはいかない。こちらが何もしなければ、相手が攻撃してくるかもしれない。だから話あっているのだ。」

ブラジルのサネスがつぶやく。

「先手必勝というわけだ。」

それでもドイツのアーネスはあくまで冷静だ。

「私は慎重な意見に賛成だ。逆に相手が人類ではないからこそ、かつての植民地支配のようにはうまくいかない。そうとも言えるだろう。」

主催者のスミスは頭を抱える。

「…、意見が割れるか…。難しい問題だな。」


ー2045年ー

 警備員の聞く音声も議論が深まっていく。トモとエナミの考え方が衝突しているのは、十分に理解できた。

「意見とはいつも分かれるものさ。しかし、トモ、君たちよりも私は後で出発した。決定は覆った。我々の意見の方が、最終決定さ。」

「エナミ、それはおかしい。だったらはじめからそう言っているはずだ。結論が後で変わったなんて聞いていない。」

 別の声が間に入る。

「エナミさん。先発隊のヨウです。僕たちは、友好的な関係を結ぶという目的を聞いたから参加したんだ。あなたの主張する指示なら、そもそもここへは来ていないんだよ。」

「どうやら、分かりあえないようだな。トモ、ヨウ、一応言っておくが、君たちは我々後発隊に武力では勝てない。よく分かっているだろう。」

「なるほどエナミさん、はじめからそれがあなたのやり方だね?」


ー2035年ー

 東京の会議は約2時間を経過し、進行役の牧田は結論を急いだ。

「いずれにしても、調査船は送る。それでどうですかな。」

話を進める様にイギリスのエドワードが同調する。

「確かに。そもそも、それができないことには、何も始まらない。」

しかしそこでセネガルのフレデリクスは、妙な抵抗感を示す。

「いや…、どうかな。送ってしまえば、そもそも指令は出せない…、こちらの指示が届く保障はない。」

スミスがフレデリクスに指摘する。

「だから、分からないことを考えても仕方がないだろう。やってみないことには分からないんだ。」

エドワードも同調する。

「調査船の先発とは別に、後発隊を送ることもできるかもしれない。」

フレデリクスはまだ抵抗する。

「乗組員の安全は保障できるのか。」

スミスが答える。

「当然、危険を伴う。それは君の国が一番理解しているはずだ。ワープ技術の安全性は、君の前任者から説明を受けている。」

「しかし誰がそんな危険を買って出るんだ。」

「数十億という中には、勇敢な人間はいる。悪いやつもいれば、世界を救う人物もいるんだ。それが我々人類だろう。」

牧田が何かを感じ取った様に話に入る。

「ミスターフレデリクス、何をそんなに心配しているんだ。」

そしてスミスが少し不信感の様な感覚で指摘する。

「フレデリクス、さっきから周りをキョロキョロしているが、どうかしたかね。君の周りで何かあるのか?」

「いや...、何でもない。会議を続けてくれ。」

 フレデリクスは、何か挙動不審な様子だった。周りを気にしている様だが、3D映像のため、彼の周りに誰がいて何があるのか周りは分からないのだ。


ー2045年ー

 警備員は、少しうんざりしてきた。この音声はただの作り話の可能性が高いと思うようになったからだ。どうやら、エナミという後発隊を率いる人物が、トモが率いる先発隊を武力で抑え込んだようだ。

 音声は、また、間を飛ばして、次の場面に入っていく。

 警備員が作り話だと思った理由は、ワープ技術への懐疑心があるからだ。

「重要な情報を手に入れた。この星のある区域に、圧倒的な力が確認された。その力を支配できれば、何とでもなる。」

「よし、よくやった。では、潜入のための作戦会議に移ろう。」


ー2035年ー

セネガルのフレデリクスが何かを観念したように言う。

「実は…、重要な情報がある。ワープなんてできていない。」

 突然の告白に会場がざわつく。

スミスが反応する。

「なんと言った、フレデリクス。」

「だから、宇宙空間をワープする技術などないんだよ。」

慎重派だったドイツのアーネスもこれには反応する。

「なんだと!どういうことだ。」

「我々セネガル政府もできていると思い込んでいた。これ自体がでっちあげだったのだ。」

イギリスのエドワードが呆れたように声を上げる。

「冗談じゃない。なぜそんなことに」

「みんなも分かっているだろう。今、世界の技術は発展しすぎて、不確かなもので覆いつくされている。各国がどんな技術を持っているのかも分からない。そんな不安をどの国も抱える中で、他国が確かめようがない技術を“持っている”と言うだけで、どれだけ政治的に心境が優位に働くか…。我々も、政権を取るまでは本当にワープ技術を持っていると思っていたのだ。一番落胆しているのは、我国だ。前政権の関係者は直ぐに処分する。あなたたちは、むしろ安堵するだろう」

 フレデリクスは、牧田の方を見て付け加えて言う。

「現に、世界は東京で時間を支配する技術が開発された可能性があるという情報に怯えているんだよ。」

牧田は半ば放心状態だが、冷静を保つように答える。

「今は、地球外生命体の話をしている。これまでの話はどうなるんだ」

「残念だが、そもそもそんな遠い場所に行くこと自体不可能だ。計画は諦めてくれ」


ー2045年ー

 警備員は、たまりかねて、口を挟んだ。

「この話では空間をワープしたようだが…。確かそんな技術でっちあげだっただろう。その調査船団は、どうやってそこまで行ったんだ。君と、…その、エナミとは日本人か?日本でそんな技術は聞いたことが無い。」

 トモと思われる声が答える。

「だから言っただろう。これはすべて君に理解できるように、翻訳されている。意味が分かればいいんだ。それぞれの名前なんて問題ではない。名前なんて全部後付けなことくらい、少し考えれば分かるだろう。問題は内容だよ。」

警備員は呆れた様に返す。

「なぜ、そんな回りくどい言い方するんだい?結局言いたいことはなんだ?そうか、多数決だったな。“トモ”か“エナミ”か、だったら“エナミ”を選ぶよ。先手必勝さ。」

「頼む。余計な会話はするな、バレないように会話しているんだ。すぐそばにいるかもしれない。」

 警備員は、通話の相手が言っている意味がわかならい。そこに、若手の警備員が戻ってきた。

「おう、遅かったな。大きい方でもしてたのか?」

 若手の警備員は、問いかけに答えない。なぜか目の視点があっていないように見える。

「…いま…だ…はなし…な…わたし…けいびい…いっしょに…」

「…?どうした?お前変だぞ。」

 若い警備員は、急に銃を取り出し、中年警備員の頭を撃ち抜いた。

 倒れた中年警備員をよそに、左腕の端末では、会話の続きの音声が流れる。


「エナミさん大変だ。トモ達がもう一つの船で脱走した。」

「馬鹿なことを…。追え、勝手なことはさせるな。」

「相手に知れたら、交戦になるか。」

「そんなのわからん。今はとにかく、その区域に潜入し、力を手に入れることだ。その力は、すべてを支配する。友好関係など結ぼうとするなら、我々が支配されるのだ。テキ、君なら潜入はお手の物だ。形なく生命体に憑依する。目的を果たせ。まずは言語をマスターすることだ。」

 するとテキと呼ばれる人物が返す。

「では、手始めに教えてくれ。その区域の奴らは、俺たちがモルビスと呼んでいるこの星を、自分達の言葉では何と呼ぶ?」


「“チキュウ”だ。」





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