#07 はい! 逮捕ー!
右頬の傷を気にしながら佐倉は鏡を見ていた。
薄汚れた身なりに無精髭。
おまけに頬には切り傷。
「どう見たって堅気じゃねえわな……」
「ご主人! お待たせしました! それはもう巨大なアナコンダが……実に激しい戦いであった……」
「てめえの快便事情なんぞ、まるで興味ねえわ!」
そんなことを言いながらトイレから出た二人は唖然とする。
老婆が床に倒れていた。
床には血に染まったタバコの箱。
老婆の口からは僅かではあるが血が垂れている。
「これは……」
「まさに毒殺……!」
「人聞きの悪いこと言うんじゃねえ!」
「どうしましょう? とんずらですかい? 兄貴ぃ……?」
「とにかくまずは応急処置だ……! 水を持ってこい!」
「ガッテンです!」
佐倉は老婆に、リルは洗面所に向かって走った。
途端に運命の糸がピンと張り、二人の胸を激痛が襲う。
「ぐはっ⁉」
「ほげぇえええ⁉」
あまりの痛みに佐倉は膝をつく。
同時に床のタバコを踏んでしまい、中身があたりに散らばった。
リルは這いながら佐倉の元に戻ってきてコップを手渡す。
「はいご主人……」
「おう……」
老婆の口にコップをあてがい、なんとか飲ませようとするが、死人が水を飲むわけもなく……
「くそ……駄目だ。完全に死んでる……」
「なんで死んじゃったんでしょう?」
「そりゃ、状況から見るに、俺のタバコを吸ったせいだろ……アイテムボックスで(呪)ってなってからな……」
その時だった。
死線を感じて二人が顔を上げると、開いた入り口のところにいかにも警官や憲兵といった装いの男が立っている。
まずい……
そう思った佐倉は事情を説明しようと立ち上がった。
「違うんだ……事情を説明させてくれ」
「殺すつもりはなかったんですぅうううううう‼」
「やめろ! 誤解される!」
「はい! 逮捕ぉおおおおおお!」
兵隊のような男はそう叫ぶと、速やかに拘束魔法を展開して佐倉とリルを縛り上げた。
光の輪が二人を囲み、それはすぐさま鉄に姿を変える。
「待て! 違う! 俺は三枚刃と持ってたアイテムを交換してだな……それをこのババアが勝手に……」
「はいはい。話は拷問部屋で聞くからね~。アイテム婆さんを殺すとか、田舎町でとんでもない凶悪犯が出たもんだよ……」
「待て! 本当だ! ていうか拷問部屋⁉ 話聞く気ねえだろ⁉」
「大丈夫だ。真実を聞く。真実こそ聞くに値する言葉だ。その為にはレッツ拷問! さあ。行こう!」
こうして二人は町の警察部隊が所有する建物に連行されることになった。




