#28 参段構え
燃え盛る左腕をだらりと垂らして佐倉は右の拳を顎に添えた。
フリッカージャブを主体とするボクサーのような構え。
懸念があるとすれば、ジャブで十分な威力が出るのかというところ。
「リル‼ 行くぞ……‼ お前は踊って力を溜め続けろ‼」
「ガッテンです‼」
「宵闇の焔壱の陣……〝幻焔〟」
振るった左腕が燃え上がる寄生獣とともに不規則な軌道を描いて伸長した。
燃える鞭のように迫りくる拳をハーレクインは軽々と躱し、一気に間合いを詰めてくる。
「うーん……思ったよりショボ過ぎかも? 色はエログロで好みだけど……これじゃ萎え萎えだお?」
残虐な笑みを浮かべてハーレクインは指輪にキスを落とす。
すると再び蒼い炎が燃え上がり、ハーレクインの拳に纏わりついた。
「リルーーーー‼‼」
「ガッテンです‼‼ 宵闇の焔弐の陣〝スーパーハイパーキューティーパーンチ〟」
リルの拳が赤紫の炎で燃え上がる。
短い腕のリーチとパワーをパラパラが補い、燃える剛腕がハーレクインに襲い掛かった。
「ガキんちょもお腹に虫飼ってんの⁉ きもっ⁉ ギョウチュウ検査してきなよっ……‼」
指輪を丸い盾に変え、ハーレクインはリルの拳を受け止めた。
と同時に、ぞくりと背筋が粟立つ。
目だけで佐倉を見やると、そこには獣のような気迫を放つ漢が、溜めた右手を解放する瞬間だった。
「宵闇の焔終の陣〝寄生銃〟」
血管を伝って右手に移ったパラパラ達が一糸乱れぬ統率で力の向きを束ねた一撃。
ハーレクインの鳩尾を拳が穿ち、背中から衝撃が焔となって発散する。
ゴスロリ少女は宙を舞い、群青色のTバックをばっちりと見せつけながら地に落ちた。
お尻を突き出すような格好で地面に伏せるハーレクインをちらりと確認し、佐倉はリルの方に振り返った。
「やったなリル!」
「てめえぇええええ‼ また見てやがりましたね⁉ この浮気者ぉおおお(´;ω;`) パンツ見たさに……パンツ見たさにリルの純情を弄びやがってぇえええええ‼」
「違うわぁあああああ‼」
なんとか窮地をすり抜けた佐倉だったが、思わぬ伏兵に手を焼く。
その間に気がつくと、辺りをぐるりとゴーレムたちが取り囲んでいることに二人は気付いていない。
そして宵闇の焔がマジで手を焼いていることにも、まだ気づいていない……




