#23 MarkⅡ
ばっちりと指紋で借用書に判を押され、佐倉は改めて借金の額に戦慄する。
四億ババンガ……
途方もない事だけは確かだった。
ゴブリンのような深緑の左手で借用書を掴んで震える佐倉を見ながら老婆は「ふぇふぇふぇ」と愉快そうに嗤う。
「聞いたよ。お前さん、ワンのとこでも借金こさえたそうだね?」
「ワン……? アイテムババアのことか⁉」
「ふぇふぇふぇ! 何を隠そう、アタシらは八つ子の姉妹でね……! ババアネットワークで情報共有してんのさ。あっちはMarkⅠ。アタシはMarkⅡ! ツーとお呼び!」
「あんたの親がろくでもねえことは理解したよ……」
「キラキラネームもびっくりですぅ」
「こっちにもあるのか? キラキラネーム」
佐倉の純粋な疑問にリルは胸を張って答えた。
「当然です! 社会問題です! 例えばコツブロッケンとかがそうです!」
「はあ? なんかカッコいいじゃねえか? 何がダメなんだ?」
「意味はゲロ魔人です!」
「……」
一拍の後、老婆が再び口を開いた。
「ところでだ。どうやって借金返す気だい? とんずらする気じゃないだろうね? それこそ、粗末な息子の命じゃ済まさないよ?」
「分かってるよ……西の国の魔人級ダンジョンに挑むつもりだ。まだ修行中だが……」
それを聞いて老婆は目をひん剥いて、義眼をぐるぐると回しながら言った。
「ふぇふぇふぇ! アホが見るゴブリンの脱糞とはこのことだね⁉」
「そうなんです! もっと言ってやってくださいぃいい(´;ω;`) ゴーゴンの目にツケマなんです」
「分かるようでわからん! どういうことだ⁉」
「西の国に行くには国境を超える通行証がいるのさ! そして通行証はこの国の最難関ダンジョン〝狂気満つハーレクイン庭〟を踏破せにゃ手に入らん!」
「アイテムババアは何にも言わなかったぞ⁉」
「ふぇふぇふぇ! 大方、闇ルートを紹介してさらに吹っ掛ける予定だったんだろう。返せる当てもない借金を増やしてどうするのか……昔からワンの考えてることはちと分からんからの!」
「ツーの婆さん、そのダンジョンはどこにあるんだ? 近いのか?」
「ああ。この森の中にある。だが難関だよ? 今のあんたじゃ100回挑戦して99回死ぬ」
「とにかく向かってみるさ……このままじゃ利息が膨らむ一方だ……」
佐倉はツー婆から簡単な地図を受け取り〝狂気満つハーレクインの庭〟へと足を向けた。




