#02 ステータス、おーーーぷんっ☆
俺の名前は佐倉風吹。
現在訳あって混乱している。
死んだはずがケモミミのガキに水をぶっかけられて目覚め、致命傷はウサギのシールで塞がれている。(ただしシールを剥がすと再び死にかける)
しかし混乱している最たる理由はそこじゃない。
このガキだ。
さっきから顔にしがみついてフジツボのように剥がれない、このガキだ。
無理やり剥がそうとしたら皮膚まで剥がれそうになってやめた。
「おいクソガキ⁉ 何をどうすればひと様の皮膚に癒着できる⁉」
「わがりまぜん(´;ω;`) でも多分きっとおそらく絶対ご主人の無精髭が引っかかってるんですぅううう」
「ふざけるな! 毎朝綺麗に剃ってるわ……‼」
「ええ~ホントですか~?」
「なんだその疑いの眼差しは⁉ 舐めてんのか⁉ ああん⁉」
「だってチクチクして痛いですぅうう(´;ω;`) 絶対髭ですぅううう」
ダメだ。落ち着け。冷静になれ。
心を乱されても碌なことはない。
そも、この環境がいかん。
綺麗な蝶々が飛んで花の匂いがするこの環境が、俺と似つかわしく無さすぎるのがいかん。
自分を失うな。殺し屋の感性を鈍らせるな。
深く息を吸って心を静めろ。
よし。いける。
「そうだ! 思い出しました!」
せっかく整った佐倉の心はリルのあげた間の抜けた声で再びかき乱された。
「耳元で叫ぶな! 鼓膜がキンキンするわ!」
「すびばせん……でも思い出したんです! きっとこれ何かの状態異常です! ステータスを見て確認してください!」
「はあ⁉ ステータスってなんだ⁉ FFか⁉」
「わたしはドラクエ派です」
「知ったことか!! で? ステータスはどうやって確認する⁉」
リルは三角の耳をぴょこぴょこさせて自慢げに答えた。
「簡単ですよ? もしかしてご存知ないんですか? ちゃんと女神さまのチュートリアルうけたんです?」
佐倉の血管がキレる音がした。
ついで瞳から光が失せて口角が吊り上がる。
「ああ……そうだった。たしか顔にへばりついたガキの耳を千切れるくらい引っ張るんだったな……」
「ちちちち、違います‼ そんなことしたら、たたた、大変なことになっちゃいますよ⁉」
「やかましい。俺が知ってるやり方はこうだ‼」
佐倉は幼女のケモミミを掴んで思い切り引っ張った。
リルの悲鳴が響くと同時に、自身の耳に強烈な痛みが走って男もまた悶絶する。
「だから言ったじゃないですかぁああ( ノД`)シクシク ご主人のぶぅあかぁあああ‼」
「どうなってやがる……なんで俺の耳が……⁉」
「シルブノールで繋がってるんだから当然ですぅう……」
「まさか、この糸……離れたら死ぬだけじゃなくてダメージも共有されるのか⁉」
佐倉の顔が恐怖に引き攣る。
最悪だ……こんなポンコツと一蓮托生……
「うう……とにかくステータスを確認してください……確認の仕方は、腰に左手を当てて右手でVサイン。ステータス、おーーーぷんっ☆ でウインクです」
「出来るかああああ‼」




