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#19 俺たちは家族だ!

 

 なんだろうか?

 

 世界がやけに騒々しい。

 

 どこかで祭りでもやっているのだろうか?

 

 どんどんどん……

 

 太鼓の音がする。

 

 どんどんどん……

 

 気分が高揚するリズム。

 

 どんどんどん……

 

「はははは! って俺の心臓か⁉ ははははは!」

 

 佐倉はグニャグニャになった世界で腹を抱えて笑いながら、自身の鼓動に酔いしれた。

 

 横を見るとリルもへにゃへにゃ笑いながら佐倉を指さしている。

 

 佐倉はそれを見ているとなんだかとても愉快な気持ちになってきた。

 

 同じようにヘラヘラしながらリルを指さし互いに笑い合う。

 

「あははははぁ……あははははぁ~」

 

「もぉお! モウ! モウぅ!」

 

 健太郎っすもそこに加わり牛のような声を出した。

 

「げひひひひww お前はお馬さんだろ~?」

 

「モウ! モウモウww」

 

「あははぁ~ご主人はヤクじゃ者れすよぉ? 舐めた真似しとったら、ドテッ腹に風穴あけたるぞ? 我え‼」

 

 リルの言葉の後半は本家も青褪める完成度である。

 

 机を叩きながらどすを効かすリルに佐倉は爆笑した。

 

 健太郎っすにいたっては股間をプロペラのように振り回している。

 

 転げまわっている三人は気づいていない。

 

 それぞれの頭からニョキニョキと深緑の触手が生えてきていることに……

 

 寄生獣:パラサイト・パラノイア(通称パラパラ)

 

 寄生した宿主の肉を極上の麻薬肉に仕上げることで、それを捕食した者に寄生する。

 

 しかしその肉はグロテスクを極めるため、被害に遭う者はほとんどいない。

 

 さんざん笑い転げると、佐倉は立ち上がって二人を呼び寄せた。

 

「よし! おまいらぁー! しゅぅうううごぉおおおおお!」

 

「ガッテンです!」

 

「モウモウww」

 

 佐倉は二人の顔をまじまじと見つめた。

 

 真剣な眼差し。

 

 強い光。

 

 すなわち瞳孔全開である。

 

 そんな佐倉の顔を見ているうち、リルと健太郎っすは感動してきて目頭が熱くなってきた。

 

「おまいらは! ずっと! 独りぼっちだった俺の! 初めての、仲間っ! いや、俺たちわぁああ、家族っ! 家族だっ!」

 

 呂律の回らない佐倉のその言葉で、リルと健太郎っすは号泣した。

 

 佐倉はそんな二人の肩に腕を回して尚も叫ぶ。

 

「俺たちわっ! 家族だぁあああああ!」

 

「だぁあああああ!」

 

「モウモウモウ(´;ω;`)」

 

 佐倉は清々しい気持ちで天を仰いだ。

 

 すると何かが満天の星空で蠢いている。

 

 というよりも、星を遮っていた。

 

「んんん? お星様が隠れたり、出てきたり……シャイですかぁあああ?」

 

 全員で上を見上げた。

 

 暗闇に慣れてきた目に映ったのは、それぞれの頭から生えたグロテスクな触手だった。

 

「え?」

 

「ん?」

 

「ぶふぉ?」

 

「うぎょ、うぎょぎょww」

 

 真夜中の森に、三人の悲鳴が木霊した。

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