#16 修行!
そこから佐倉の特訓の日々が始まった。
組ての相手はもちろん健太郎である。
最低でも、健太郎相手に立ち回れる程度にはなっておきたい。
しかしそこには巨大な障壁が待ち構えていた。
「無理ですぅううう! これ以上は無理ですぅううう(´;ω;`)ウゥゥ」
「やかましい! 修行しねえと死ぬんだぞ⁉ 泣き言言うんじゃねえ!」
「こんな可憐でか弱いケモミミ幼女をいたぶるなんて、ご主人はペド野郎ですか⁉」
ハエもリルに同調するように佐倉の目の前でぶんぶん飛び回って抗議した。
「お前みたいなチンチクリンには何も感じない。言ってみれば無だ。無が何を言っても無だ」
「最後のは無駄とかけてるんです? 上手くない。というか下手ですね(´・ω・`)」
最大の障壁はリルとシルブノールだった。
佐倉が激しく鍛えようとすればするほど、リルにもそのダメージは伝わってしまう。
おまけに、この世界はレベル制らしく、レベルアップに必要な経験値までリルと等分されてしまう。
つまり普通の倍以上にレベ上げが捗らないのだ。
「てめえ状況分かってんのか⁉ アイテムババアが取り立てに来るんだよ! 利息が払えなきゃアークナイトだか何だかに通報されて無限拷問だぞ⁉」
「ふふふ! ご主人も状況が分かってませんね? リルは拷問されるくらいなら舌を噛んで死にますよ? 修行も嫌です! 舌を噛んでもいいんですか⁉」
「やってみろ! もう舌が痛いのにも慣れてきたわ!」
そう。リルは修業が辛くなると舌を噛んで妨害する。
しかし痛みから半端にしか噛めず死ねない。
結果佐倉の舌には口内炎が山のように出来ていた。
リルはピンクの舌を突き出して笑う。
「まだご主人は口内炎治ってないです? リルはもう治ってますがww」
子どもの傷の治りは早いらしい。
「泣かす……!」
とうとうキレた佐倉は自分のダメージもお構いなしにリルに襲い掛かった。
しかしリルも素早く躱し、シルブノールがピンと張る。
いつしか激痛は二人の身体に完璧な間合いを染みつかせていた。
これが二人の間合い。
離れられる限界とも言う。
互いの動きをシルブノールの張り具合でコントロールしながらせめぎ合っていると、突然佐倉の頭の中に爆音のファンファーレが鳴り響き、それはリルにも伝播した。
「うぉおおおお⁉」
「ぎゃああああああああ⁉」
『おめでとうございます! レベルが上がりました!』
その声とともにステータスの上昇値が表示され、二人の喧嘩は中断される。
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佐倉風吹 Lv2
攻撃力+2
防御力+1
素早さ+3
魔力+0
習得スキル無し
リル Lv2
攻撃力+0
防御力+0
素早さ+3
魔力+3
習得スキル 絶対領域
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