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《サイバーサムライで御座候》辺境惑星でスローライフ…出来るかな?  作者: 稲村某(@inamurabow)


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⑥見つかっちまった!



 いつもと何も変わらぬ着流しに雪駄履き。タマキの姿に何ら変わりは無い。だがどうだろう、青空と砂浜のミスマッチな場所にも関わらず、黒い刀身に銀地の鍔をあつらえた抜き身のミフネを持っただけでサムライに見えるのだ。


 「……本当に、姐さんなんで?」

 「野暮言うねぇ! これでも銀河じゃあ、ちっとは名の知れたサムライだぜ……?」


 まるで最初からそのたたずまいだったかのように、凛として立つタマキである。思わず漏れた呟きにそう答えると、彼女は静かに呼吸を整える。


 ……止水共鳴、その如く常に。


 タマキの中のもう一人の自分が答える。すると混ぜっ返すようにもう一人の自分も答える。


 ……だーっといってよ、ばーっとやりゃいいんだよ! 簡単なもんよ!!


 脳筋の方はそれだけ伝えると満足し、後はテキトーにやってくんなと軽く言って終わる。なんだそりゃ。


 「……ほい来た!」


 タマキがそう言った瞬間、着水した海面が突如噴水のように爆発し、そこから宙に飛んだ何かが真っ直ぐ彼女に向かって接近してくる。


 「……ミフネっ!! 対衝撃消滅っ!!」

 【はいはい、判りましたよ】


 相手が急接近する事で生じる筈の大気圧波(ソニックブーム)を緩衝させる為、タマキが刀身の背に手を添えながらミフネに命じるとヴァンッ、一唸り。砂浜がえぐれる程の衝撃波を接近物が発するが、それをミフネが刀身を振るわせて一瞬で消し去る。だが、衝撃波はタマキの周りで減少しても全て消し去れる訳では無い。


 「ふ、船がっ!!」


 四人組の一人が悲鳴に近い声を上げた時、沖で漁をしていた船が一艘大きな波を被り横転してしまう。その船が四人組の親族が乗っていたか判らないが、狭い漁村の住人は大半が家族同然の間柄だ。彼等が何も感じない筈は無い。だが、その元凶となった襲来者はそんな配慮をする訳も無い。


 明らかに過大な出力で滞空しているせいで着流しはバタつくが、それが却って虚仮威こけおどしのようでタマキは笑みが浮かんでしまう。


 「……探したぜぃ!! まさか下に落ちてやがったとはな!!」


 ビリビリと横隔膜まで響く大音響でがなり立てながら、相手が波打ち際に着地する。それが巨体のアームドスーツだと判るが、中身の人間はどれだけの体躯なのだろうか。


 「懲りないねぇ、まーたシバかれに来たのかい?」

 「この前は艦内規制で手も足も出なかったが、ここならそうはいかねぇぜ!?」


 ガシッ、と両拳を叩き付け合わせながら相手がタマキの挑発に答え、大きく振りかぶって握り締めた片手を突き出す。その途端、青白いプラズマ光がブォンッと鳴りながら放出される。


 「はぁ〜っ、単純だねぇ……ミフネの間合いに入らなきゃ大丈夫ってか?」

 「実剣で銀河随一だっただろうがな、こいつの出力じゃ相手にならねぇんだよ!! 黒焦げになりやがれぇ!!」


 相手はバックパックジェネレータを全回転させて爆発的に出力を上げると、プラズマ光が十倍近くまで延長される。そのまま振り抜けば避けても後ろに居る舎弟達が巻き添えになり、受け止めようにもプラズマ光は幅三センチのミフネでは受け止めきれない。


 「ああ、残念だが……まともに食らえば欠片も残りそうに無ぇな!」

 「心配するなって、どーせ無駄な努力だぜ?」


 タマキの挑発に相手は気分を害したのか、プラズマ光が細かく振動する。そして、容赦無く横薙ぎに払うべく脇腹を見せながらアームドスーツが斬る体勢を取ったが、


 「……ハエが停まる遅さを心配しろな?」


 抜刀する動作無しで抜き付けたタマキが納刀しながらそう言うと、アームドスーツの太い腕が綺麗に切断され、行き場を失ったエネルギーがスーツの肘から上を巻き込んで炸裂する。一瞬の出来事にアームドスーツを着た相手も、そして舎弟達も何が起きたか判らぬうちに決着がついていた。



 「……ほら、起きろオッサン」

 「くそっ、またかよ……」


 アームドスーツから取り出された男は、タマキにミフネを突き付けられたまま胡座をかいて浜辺に座り込む。その背丈は座ったままでもタマキより遥かに大きく、全身に施された様々なアタッチメントを見れば彼が強化人間だと一目で判る。


 「艦隊戦の時、随分と手間取っちまったぜ? お陰で沈められなかったからなぁ」

 「……黙れ、そんな事はとうに忘れちまったわ……」


 そう言い交わす二人の成り行きを舎弟達が見守るが、ふと海上を見ると衝撃波で沈んだ者は寄せてきた仲間の船に助けられたらしく、岸辺に向かって漁船が次々と戻って来る。


 「……何なんだよ、これ……」


 一人がふとそう呟くと、タマキの耳がぴくりと動いた。






 


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