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《サイバーサムライで御座候》辺境惑星でスローライフ…出来るかな?  作者: 稲村某(@inamurabow)


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6/8

⑤行かねぇが?



 「なら、お前ら授業で習っただろーけどよ?」


 砂浜に腰掛けながらタマキが語るに、皇帝が宇宙史に現れたのは千年以上前と言われている。種族として圧倒的な長寿の上に()()()()()()()()驚異的な身体能力を誇るが、何より銀河帝国皇帝を皇帝たらしめている最大の理由は【誰にも倒せない】事に端を発している。物理的に皇帝を消滅させる為には、星一つ丸ごと破壊させる程度ではまだ足りないと本人も言っている位である。



 「何だか簡単な理由ですね! なぁ?」

 「そうそう、強い方が憧れるよな」


 単純な四人組はそう言いながらタマキの話を聞き流すが、一度でも皇帝と対峙した事の有る者は決してそんな事を言わなくなる。皇帝が本気になれば、相手が自分以外の強者を許さぬ者ならば全力で排除し、誇り高き者なら自らの存在が揺らぐ相手を前にどう対応するか探る。生身でも単身で航宙艦を破壊出来る本物の怪物である皇帝に、タマキは今でも恐怖を覚えるのだ。だが、現在の問題は睡眠期だ。


 皇帝は眠らない、いや正確には長い間眠らずに活動する。そしてある日突然眠ると宣言し、短ければ一週間、長ければ数年間眠り続ける。過去の例を紐解けば二百年近い覚醒期の後は概ね一年間眠っている。その間、全ての公務は側近達に丸投げだが、一番の難題はその隙を衝いて帝国の一強支配に不満を抱える連中が湧き出てくる事だ。


 支配地域外の敵対勢力や、支配地域の不満分子のテロリスト化等、政治的敵対者のみならず実力行使で皇帝を玉座から引き摺り降ろそうと

する連中まで、時には帝都中枢部にまで押し寄せてくる。それらを押し返すのが【帝都防衛隊】の任務だが、常時の彼等はタダ飯喰らいだと蔑まれながら、皇帝の睡眠期が訪れるまで虚無の日々を過ごさなければならない。



 「……タマキさん、そろそろ腰を上げた方が良いですよ。帝位を狙う連中が、帝都防衛隊の力を削ごうって考えたら単独撃破が一番効果的ですから」


 副艦長にそう勧められ、タマキは考え込む。自分一人が動き回っても状況は変わらない、それに防衛隊は自分一人ではない。他の連中が居るから大丈夫だろうし、何より寝ていようと皇帝は殺しても死なない奴だ。ほっとけばいい。



 「では、タマキさん戻りましょう」

 「……戻らんが?」


 「……はい?」

 「だから、戻らんて」


 この話の流れなら即答して帰還するだろう、そう思い腰を浮かせかけた副艦長だが、タマキの返事は全く予想外だった。


 「だいたい、私が戻っても防衛隊の人数が一人増えるだけだろう? それに私ぁ引退した元防衛隊員だろ」

 「……帝都防衛隊員は、終身扱いですが」

 「くわああぁーーっ!! 死ぬまで抜けらんねぇとか超ブラック待遇だなあぁーーっ!!」

 「だから、様々な特権が与えられてるんですよタマキさん。駆逐艦搭乗時に滞在費払ってないでしょ?」

 「……金の話すりゃ直ぐ折れると思ってやがるな!」

 「超時空間通信って、安くないですよね?」

 「ん〜あ〜、聞こえないなぁ〜!!」


 タマキは両耳を塞ぎながら副艦長の話を逸らそうと必死だが、彼はそんな彼女の対応にいちいち目くじらを立てなかった。どうせ、今言った事は全て防衛隊経費で後払いになるし、たかがタマキ一人の滞在費なんぞ大した額じゃない。


 「まあ、それはともかく……いいですか、これからここにやって来る連中は、間違いなくタマキさんを目の敵にしてきます。これは忠告じゃなくて、ほぼ確定事項だと思ってくださいね?」

 「へいへい、判ってますって……」

 「……私だったら、身の回りに影響を及ぼす心配をしますけど」

 「こいつらか? うん、まぁたぶん大丈夫じゃないか?」

 「……本気で困ったら迎えに来ますよ、艦長の気分次第ですが」


 嘘か本気か冗談か判らない最後の言葉を区切りにして、副艦長はハッチから機内に戻るとタマキに手を振って駆逐艦に戻っていった。




 「……さて、どうしたもんかねぇ」


 タマキは残された四人組を前に頬杖をつきながら考え込むが、その姿に彼等は自分達の事を考えているのかと思い落ち着かなげである。但し、タマキの思考は彼等に対してではなく副艦長の告げた予期せぬ来訪者についてである。


 (……私の事を知っている奴等なら、単純にただ殺すだけなら惑星間弾道兵器(プラネットバレッツ)を使っても無駄だって知ってる。だけど、他の馬鹿共にそんな期待は出来ないな)


 「……まっ! 考えても仕方ないな! お前ら戻るぞ!!」


 余りにも切り替えの早い言葉に四人組の表情は全く変わらないが徐々に響いてきたのか、はぁ、とかうぇ、と不明瞭な声を出してタマキに付いてくる。そんな彼等を巻き込まず追い払うべきか、それとも放置してただ巻き添えにするか悩むがそれは一瞬だけである。何故ならタマキはサムライで、悩むよりもっと良い解決法を知っているからだ。



 ……全力前進、不退転のタマキ様じゃねぇか。この程度で退くたぁ、名が泣くじゃねえか!?


 そう決意したその時、大海原のど真ん中に直上から落下してきた何かが再び着水するが、今度は配慮も容赦も無い衝撃が波紋のように広がっていく。


 「ミフネぇっ!! とっとと来いっ!!!」

 【はいはい、判りましたよ】


 タマキの声に呼応しミフネが彼女の元に降りてくると、四人組は初めてみるその刀に思わず呟いた。


 「……ほ、本当にサムライみてぇだぁ!」



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