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《サイバーサムライで御座候》辺境惑星でスローライフ…出来るかな?  作者: 稲村某(@inamurabow)


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5/6

④久し振りだなぁ!



 「おはようございます、タマキさん」

 「かぁああぁ〜っ!! 違う!! (あね)さんだよ!!」

 「……じゃあ、姐さん、それで俺達は何すれば……」


 一晩明けた次の日、タマキが借りている一軒家にぞろぞろと現れた舎弟四人組が尋ねると、彼女はサラッと言いつける。


 「特に無い!! と、言うかお前ら漁の手伝いはせんでいいんか?」

 「……親父やじーちゃん達が帰って来るまで、留守番だ」

 「網の手入れとかは?」

 「母さん達がやってる……」


 ふんふんと聞きながらタマキは得心する。あー、こいつらが腐った理由は仕事にあぶれたからだな、と。


 「……よし! お前らちょっと付き合え!! 見回りに行くぞ!」

 「はぁ? 見回りって……何処に?」

 「んなもん決まってるだろ! 島の周りだ!」

 「何も無いと思うけど……」

 「何でも決めて掛かるなって! 案外良いもんが見つかるかもしれねぇだろう?」


 タマキが強引に誘うと青年達は渋々ながら従い、五人で漁村を抜けて船着場から波打ち際を巡っていった。



 「こーゆーのはな、()()()()()()()()って言って、古式ゆかしい昔からの儀式の一つなんだぜ?」


 タマキがそう言うと青年達は湾曲した砂浜一面に転がった漂着物を眺めつつ、


 「あの、ゴミがあるだけですけど……」

 「いっつも見るような物しか無いっす」

 「貝殻は食えねぇかと」

 「見慣れ過ぎて何も感じないです!」


 一様につれない返事である。そう言われてタマキは何か言おうと口を開きかけたが、白い雲の切れ間からキラリと光る飛翔体に気付き、


 「ミフネッ! ありゃ何だ!!」


 そう中空に向かって叫ぶ。四人以外に誰も居ない状況に若者達はタマキの頭を心配するが、


 【ちょっと前に別れた駆逐艦の着陸艇ですね、あなたを探しに来たんじゃないですか?】


 ピアス越しにミフネが答えると、着陸艇があっと言う間に頭上を飛び越して後方で旋回し、ミフネの言う通りホバリングしながらタマキを視野に入れるように操縦席を向ける。そして派手に砂飛沫を上げながら砂浜に着陸すると、後部ハッチが開いて士官服を着た男性が降りてくる。


 「いやぁ、まさかこんな所に居るとは思いませんでしたね、タマキさん」

 「やけに仰々しいじゃねえか、副官さんよ? それに対艦戦が終わって随分経つのに、挨拶も無したぁ……」

 「それに関しましては、艦長から心配要らないから探すなって厳命されまして……それにタマキさんなら捜す気になれば直ぐ見つかると……」


 やや年重で渋めの男は駆逐艦【シングルローズ】の副艦長で、そう説明するとタマキの後ろで立ち尽くす四人組に気付いて誰です? と声のボリュームを抑える。


 「んあ? あー、この星で出来た舎弟だ! と言ってもまだ何もしてないがな!」

 「……舎弟?、 また随分と前時代的な……まあ、それは置いといて……タマキさん、大変な事が起きました」

 「まさか、艦長が痩せたとかか!?」

 「……タマキさん呼んで何するんです? じゃなくてですね……皇帝陛下が()()()に入りました」


 副艦長がそう説明すると、それまで余裕綽々だったタマキの表情がみるみる険しくなっていく。


 「……デマかせじゃ、ないわな……あんたみたいな真面目が言うとねぇ……」

 「はい、自分も耳を疑いましたが……信憑性は高いです」

 「確か、前回は二百年位前だったっけ」

 「はい、百九十年前です」


 副艦長の言葉にタマキの表情は暗いままなので、舎弟になった四人は話しかけるか迷っていたが、


 「姐さん! 何かあったんですか!?」

 「その、気になります……」


 そう言い合いながらタマキの顔色を窺うと、彼女はフムンと少し考えてから口を開く。


 「……宇宙帝国史の教科書、読んだこたぁ有るか?」

 「帝国史? あー、皇帝陛下の来歴とかですか……読むも何も、なぁ?」

 「うん、遠隔授業だろーとリアルタイム授業だろーと、絶対最初に読まされる……よな」


 四人が頷きながら答えると、タマキはそりゃそーだと納得するが、続けてこう尋ねる。


 「お前ら、皇帝は見た事あっか?」

 「そんなの決まってるじゃん、見た事なんて無いよ」

 「こんな僻地の惑星じゃ、皇帝なんて一生見なくて当然だし……」

 「本物なんて見た事無いよ、でもホログラフィなら学校とかで散々見たかな」


 彼女の問いに青年達が頷き合いながら返答すると、タマキはそんなもんだろうと判り切った表情だったが、


 「だろうな、だがな……皇帝がドラゴンだってのは知らんだろう?」


 流石に僻地の住人は知らない事実を告げると、舎弟達は一様に互いの顔を見合いながらキョトンとする。遠隔地に住む彼等にとって、皇帝の中身が竜だろうとハムスターだろうと関係無かったが、タマキはそれを含めて理解していた。皇帝の実力を、そして何故そこまで皇帝の事を民草に伝えようとするのかを。


 

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