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《サイバーサムライで御座候》辺境惑星でスローライフ…出来るかな?  作者: 稲村某(@inamurabow)


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2/3

①戦い終わり地に落ちて



 気がついた時、彼女は海の上に浮いていた。全身を包む衣服は波の揺れでふわりと揺蕩たゆたい、隙間から生温かい海水が沁み込み服の下の素肌を優しく撫でていく。それはまるで胎内のような包容感でありながら、海水の外に出た場所だけ乾いていく感触が肌を焼く心持ちになっていく。


 「……あー、惜しかったな……あともうちっとで大逆転だったのに……」


 彼女はネコ耳をひこひこと動かしながら大海原の真ん中で手足を伸ばし、んんぅーーっと全身に力を籠めてから弛緩させる。


 「……あいつら、無事に逃げられてりゃいいけど……」

 【それはご心配無く、あなたが斬り込んだ直後の混乱に乗じて全速力で離脱しました】

 「ふむん、そーゆー所だけ抜け目無いにょ……」


 ぷかぷかと海水に浮いたまま、ネコ耳人間は眠たげに目を瞑ったまま呟き、強引に居候していた銀河帝国航宙軍所属旧式駆逐艦【一輪の薔薇(シングル・ローズ)】が無事だった事に安堵した。


 「……さて、海水浴も飽きたからポットに戻るかねぇ……って、あれ?」

 【ポットですか? さっき沈みましたが】

 「おいおいおいおいっ!! 沈みましたが、じゃねーって!! そーゆー大事な事はさっさと教えてクレメンスっ!?」

 【クレメンスとか余裕綽々ですね、こんな非常時に】

 「陸地は何処だっ!?」

 【……そうですねぇ、着水前に観測した場所はこの地点から約三十キロ先位でしょうか】

 「……くそぅ、ギリギリ泳げない事も無い微妙な距離いぃ……」

 【はいはい、それじゃナビゲートしますから早く泳いでください】

 「……引っ張ってくれぇ〜」

 【無理ですね、私は今は省エネモードなので】


 ギリリと歯噛みしながらネコ耳人間が訴えるが、相方のミフネはただ方向指示役に徹して浮くのみである。因みに刀が浮くとか不思議であるが、詳細は後程説明するので省略する。




 「……おい、あれ……人間だよな?」

 「バカ言うなよ……こんな所で泳ぐ奴が居る訳無いだろ……」


 海岸沿いで刺し網漁をしていた男達が小舟の中から外洋に目を向けると、ぷかぷかと浮き沈みしつつ泳ぎ疲れたネコ耳人間(♀)が漂っていた。


 「おいっ! 生きてるかっ!?」


 漁の手を止めて男達の一人が手を伸ばすと、ネコ耳人間(♀)はふにゃんと呟いてから目を開けたが、


 「……お気持ちは嬉しいんですが、出来ればそーゆー形でのお誘いは軽々しく受けかねる訳でして……」


 と、訳の判らん事を言ってポッと頬を朱に染める。この期に及んで、真に馬鹿である。



 半ば土左衛門状態で発見されたネコ耳人間(♀)だったが、搬送された漁村で一部始終を説明出来る程度に直ぐ回復し漁民達を驚かせた。だが、その内容を聞いた漁民達は誰もその話を信じられなかった。曰く、航宙軍駆逐艦と所属不明の軍艦が接敵し、派手な戦闘を繰り広げた後、彼女は重巡洋艦の主要部まで攻め入り後少しの所で相手方の中枢部に辿り着く寸前まで肉薄したが、


 「……って具合に部所切除(パージ)されちまったって訳でな、そのまま残ってたら危ないからポットに移ってここまで降りてきたって感じだな!!」


 と、身振り手振りを交えながら漁民達に説明する。しかし、漁民達は生憎と航宙艦からポットで降下するだの、剣を振り回して戦うという事が良く判らない。


 「う〜ん、この星はテラフォーミングで居住可能になったばかりの辺境惑星だからなぁ……星系管理事業団の人でもない限り、星から上がったり降りたりした事の無い人間しか住んでないんだ」

 「……辺境惑星とな?」

 「あー、つまり……ここから先は未開拓の惑星しか無いって事だよ」


 漁民達の説明にネコ耳人間は首を捻るが、幾ら話しても彼女は脳筋おバカなので判りっこなかった。


 「ふむ、田舎って訳だな。じゃー星間ネットワークも届いていないかぁ……ポット沈んじまったし、どーしたもんかなぁ」


 ネコ耳人間はそう言って天を見上げるけれど、青空と雲しか見当たらない。暫くボーッと眺めていると、漁民の一人が痺れを切らして口を開いた。


 「……で、あんた何て名前なんだい?」



 「……んあ? あー、そうだ忘れてた。私ゃ……タマキってんだ、宜しくな!」


 何なんだ今の間は、と訝しげに漁民達は互いに囁くがタマキと名乗ったネコ耳人間は気にせずピンと両耳を立てた。




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