【第4話】モンスターが村に現れた日。俺たちの世界は変わった。
その朝、村の空気は異様だった。
「……なんか、動物の死骸が畑に転がってたらしいぞ」
「また野犬か? いや、牙の跡が妙だったって……」
陽斗は、通学路でそんな会話を耳にした。
心臓が微かに跳ねる。
(まさか……)
家を出る前、ビィがソワソワと落ち着きなく動いていたのを思い出した。
──直感が、嫌な予感を告げていた。
授業中も、教室はざわついていた。
「なあなあ聞いた!? 昨日、村の外れで“変な音”聞いたって人がいて──」
「お前、あれ知ってる?“ダンジョンの魔物が現実に出てくる”って噂」
それは、もはやただの噂ではなかった。
──その日の放課後。
陽斗が通学路を歩いていると、頭上の木々が揺れた。
ビィが急に唸る。
「……来るのか?」
カサカサ、ガサッ──
そして、出た。
現れたのは、ダンジョンで見たそれよりも一回り小さい、だが紛れもなく“同種”のモンスター──
ゴブリンだった。
「まさか……本当に、こっちに出てきたのか……!」
ゴブリンはナイフのような骨片を手に持ち、ニヤついた表情でこちらに向かってくる。
周囲に人影はない。
「……やるしか、ないか」
陽斗は深呼吸し、右手を掲げた。
「ビィ、行くぞ──!」
【スキルリンク:ビィに《電撃牙》付与】
【主人公:スキル《恐怖耐性(Ⅰ)》起動】
ビィが唸りを上げて飛びかかる。
ゴブリンは応戦しようとするが、そこに陽斗が接近。
「俺が生きてる意味はまだ分からない。でも──死ぬわけにはいかないんだよ!」
拳を振るう。
それは普通の一撃だったはずなのに──スキルが宿っていた。
【スキル《打撃強化(小)》が発動しました】
拳が、ゴブリンの顎を砕いた。
地面に転がったゴブリンを見下ろしながら、陽斗は言った。
「これが……現実になるのかよ……」
その晩。
家に戻った陽斗は、テレビのニュースに釘付けになっていた。
──“複数の野生動物の異常死”
──“正体不明の生物の目撃情報”
──“村の近くに新たな亀裂”──
まさに、“向こう側”が侵食を始めている。
(もう、誰にも止められない)
ビィが陽斗の肩に乗り、顔を寄せる。
「ビィ……俺さ、もしかしたら……」
陽斗は言いかけて、口を閉じた。
「……もう、普通には戻れないのかもな」
心の底に、熱があった。
あの日、死の間際に生まれた“生きたい”という願い。
それが今、形になって力として現れている。
そして、次に現れるであろう“災厄”──
陽斗はその夜、眠れなかった。