恋愛トランプ
「あなたはジョーカーです。」
産まれた瞬間にそう告げられた。
それはどういう意味なんだろうと思いながら生きてきた。
しかし大人になって分かってきた。
私は1人ということだ。
ある時友達に聞いてみたのだ。
「産まれた瞬間になんか言われた?」
「言われたよ。私はハートのエースみたい。」
「それってどういうことなの?」
「知らないの?私が将来結婚する相手はクローバーのエース君か、スペードのエース君ということよ。」
「ああ、そういう感じね。」
「あなたはなんだったの?」
「忘れた。」
私はジョーカーだから、相手はいない。
ということは生涯独身?
それはそれで自由でいいかもしれないけど、1人だけ浮いた存在になるなんて嫌だな。
そう思って過ごしていたが、相手なんて現れない。なぜなら私はひとりだけジョーカーなんだから。
そしてひとり、またひとりと結婚していった。
遂に私以外、結婚してしまった。
なんで私がジョーカーだったのだろう。
私も普通の幸せが欲しかったな。
そう思って私は隣町に逃げた。
ひとり、青年が道端に座り込んでいた。
その悲しい佇まいを見て思わず声をかけた。
「どうしたの?」
スッと顔を上げると意外にも精悍な顔つきであった。
悲しい表情で言っていた。
「僕、ひとりぼっちなんです。」
「もしかしてこの町も結婚相手が決まってるとか?」
青年は驚いた様子だった。
「そうなんです!もしかしてあなたも?」
「ええ。私はジョーカー。」
青年はそれを聞いた途端飛びつき、抱きついてきた。
その出会いがあり、私たちは結婚した。しかしおそらく私たちが子供を産むとしたらジョーカーの枠組みとして扱われてしまうのだろう。どこかに行かなければ結婚できないのだろうか。
葛藤はあったが1人でいることは考えられなかった。
そして、結婚した瞬間に、産まれた時に聞こえてきた声と同じ声が天から降り注いできた。
「あなたたちはジョーカーでありながらも諦めずに動き、見事に結婚にたどり着きました。ルールが変わります。これからはエース、ダイヤ、スペード、クローバー、誰と結婚しても構いません。それではごきげんよう。」
こうして自由恋愛の時代が始まった。