3日目
少し背後注意
3日目
今日から授業開始なんだ。
いよいよ調査開始だから、僕は張り切って、一晩中教科書を読んできたの。
だけど……
「あ、兄貴ぃ、まずいっすよぉ。こいつ、鬼澤さんのお手つきだっつーじゃないすかぁ」
「うるせっ、黙ってろヤス!みてみろよほら、な、なんて可愛い顔、ちっちぇえ頭、い、いい匂い……!」
英語と国語の間の休み時間に、トイレに行ったら、帰ってくる途中に、このニンゲンたちに捕まっちゃった。
いまは、空き教室にいるの。
「ほ、本当だぁ、こんなに可愛い子、俺、見たことない……!」
「だろ?だろ?なぁ、俺が何しても、こいつが黙ってさえいりゃ、誰もわかんねぇよ!こんな可愛い子とできるの、きっと人生で今日だけだぜ……」
「ご、ごくり……!」
どうやら、僕の正体がバレたわけではないみたい、よかったぁ。
いまから何をされるのかはわからないけど、手を拘束されてるから、うまく身動きがとれない。
目からビームも出せるんだけど、こんなに一目につくところでやったら、すぐ僕がインベーダーだってバレちゃう。どうしよ?
僕は考えて考えて、目の前のニンゲンにシャツのボタンをお腹のあたりまで肌蹴させられてから、思いついた。
そうだ!昨日のモノマネで、クラスのニンゲンたちみんなを硬直させたのがあった!
「……ぁんっ」
小さく呟くと、ニンゲンの手が止まる。
「おおおおいヤス!おまえこの子のどっか触ったのか!?俺より先にぃ!」
「さ、触ってないっすよぉ!」
「…ん…やぁ……ヤ、ス…ぁ」
「や、や、ヤスうううう!?」
「ささささ触ってないっすよぉお!!見たらわかるでしょ!?…て、てか、俺、この声や、やば…っ」
次第に二人の顔が真っ赤になっていく。
僕がいまモノマネしているのは、昨日クラスメイトから見せられた、生殖行為中の女の声だ。
「やぁ…やだ……ぁあ、ぅん……ぁああ!」
一際高い声を上げると、ニンゲンたちはぴくりとも動かなくなったよ。
その隙に、脱出!
僕が教室を出たときに、二人も我に帰ったみたい。僕、脚は速くないから、急いで逃げないとね。
と思ったら、
「お、パピじゃねぇか。そのピンク似合うな、どーしたんだ?」
「ランド!こんにちは!」
「おう、――って、おまえ、その格好は…」
ランドに会ったよ。やっぱり校長だから、授業はいいのかな?
ランドは、僕のシャツのボタンがちゃんと閉まっていないのを見て、みるみる眉間に皺を寄せた。
あわわ、そっか。日本人は、礼儀や服装を正しくすることを重んじるんだっけ。
ランドは、僕なんかすぐ捻り潰せるって言ってた。言い訳しなきゃ!
「ち、違うよ!僕はちゃんと上まで閉めてたよ!あのニンゲンたちにヤられたの!」
ちょうどそこに、犯人の二人組が現れたよ。よかったぁ。
ランドは眉間に物凄い皺を寄せ、額に血管を浮かび上がらせながら、口だけ笑って、二人組を見ている。それを見て、二人組は真っ青になっていく。
赤くなったり青くなったり、僕の知識によると、このニンゲンたちはリトマス試験紙に似てるね!
「そぅかぁ……じゃあ、あいつらは懲らしめてやらなきゃならねぇなぁ……?」
「ひ、ひぃっ!!」
「あぁ!?てめコラ逃げてんじゃねぇぞタコがぁああ!!」
わぁ、ランドもきっと、疾風のランドって呼ばれてるんだろうなぁ!
そのあと僕は、ちゃんと服装を整えて授業に戻ったよ。
僕、国語が好きだな!