例の脱税事件、ネットで「漫画家のかくしごと」とか「容疑者のひとりごと」とか言われててワロタ ~読み手側の質によって情報は変質する、という話~
先日、某なろう作品のコミカライズを担当している漫画家の脱税話が世間を賑わせました。
この話は当初、擁護するファンの間では「数年前のこと、すでに未納分を払ってることだから、もう問題ない」という論調が多かったようですが、結局は在宅起訴という結果になりました。
在宅起訴は逮捕という形で法的に拘束されてないだけで、その後の事件処理は同じです。
ちなみに脱税で起訴された場合、ほとんどの年で有罪率100%。
この件、ファンの擁護も酷いもので、行政処分と刑事処分についてまったく知識がない人が多かったんですよね。
身近で分かりやすいのが交通違反で、免許の停止や取り消しなどの処置が行政処分、罰金や交通刑務所行きなどの処置が刑事処分です。
つまり、行政処分と刑事処分はワンセットで食らうもので、どちらか片方を受けたらもう片方は受けなくていいってものではないんですね。
どっちかでいいというなら、「免許守るために交通刑務所行きまーす」みたいなヤツが出てくるかもじゃないですか。違反で免許失くすと再取得がかなり困難になるんで。
脱税の方は、脱税額の大きさによってはムショ入りした方が得になる、とか。
で、実はこの話、報道用語に詳しい人達の間では報道された時から「あ、これは事件化するな」と言われていました。
というのも、この話は最初から「脱税」と報道されていたからです。
税金未納には複数の呼び方があって、軽いものから申告漏れ、所得隠し、脱税、という並びになっています。
所得隠しと脱税は根本的には同じものなんですが、刑事事件にはならないレベルの未納は所得隠し、って感じですね。額が少ないとか、強めの悪意がないとか。
報道の内容自体には偏ったものやいい加減なものもありますが、報道機関の言葉の使い方はかなり正確です。
現行犯で捕まったような相手でも、罪状が確定するまでは必ず「容疑者」と表記したり。
つまり、脱税と報道されていたってことは、取材の段階でこの件が刑事事件化するという裏付けがあった、ってことですね。
とまぁ、同じ情報を見聞きしたとしても、受け取る側の知識量や思考能力によって情報の解像度は大きく変わるわけです。
今回の件、国税局は一般人では見られない情報や資料を分析して「脱税(刑事案件)である」とジャッジしたのだろうと思います。
が、例の漫画家の言い分を見ると、一般人でも「そりゃアカンだろ」って判断出来る発言が多いんですよね。
どの辺りがマズかったか、いくつか解きほぐしていきましょう。
〇
この漫画家の最初のミスは、「確定申告について無知だった」という声明を慌てて出しちゃったところですね。
泡食ってとっさに言い訳出したんでしょうが。
売れっ子になったのは割と最近ですが、この漫画家のキャリアは十年くらいあったはずです。
ということは、「無知だったってことは、十年前後も脱税続けとったんかいワレェ」と。
つか、漫画家や作家に限らず、個人事業主って税務署からマークされてますからね。
よほど巧妙にやらない限り、十年も脱税続けるとか無理だと思いますよ。
ましてや「無知だった」ってことは、ずっと無申告だったってことでしょ?
「そんなアホなw」って話ですわ。
そもそも確定申告に関して一切知らないとか、どんな世界線で生きてきたのか不思議に思うくらいですし、漫画家や作家の場合、若くてアホそうなヤツだと出版社から注意やレクチャーがあったりすると聞いたことがあるんですけどね。
出版社にとって漫画家や作家はメシのタネなわけで、脱税なんかで潰れられたりすると損ですから。社の信用にも傷がつきますし。
そして、この漫画家はさらに失言を重ねます。
次に出てきた言い訳が、「連載が忙しくて税理士に連絡出来なかった」だったんですね。
恐らくですが、売れてなかった頃にはちゃんと確定申告してたんじゃないでしょうか。
そうだとすると、最初の声明だと「意図的に確定申告をブッチした上で嘘つきました」ってことになるので、言い分変えたんじゃないかなー、と。
この言い分の変更は、結局は最初の言い訳と矛盾を起こしてますよね。
「確定申告知らんなら税理士だって知らんはずやろがい」と。
「確定申告という制度自体を知らなかった」というわけではなく、「確定申告のやり方が分からなかった」という意味なら、税理士に依頼するのも理解出来ます。
が、そうだとしても、この漫画家は不動産投資とかしてましたからね。
不動産について色々調べる時間はあるのに税理士に連絡する時間はなかった、なんて言い訳はさすがに通用せんでしょ。
また、税理士になんの報告もしてなかったってことは、税理士からすると「え?今年無収入なんですか?」って話ですよ。
毎年違う税理士に依頼するのも不自然な話ですし、税理士の方からお伺いがなかったとしたら、総収入の一部だけ税理士に報告してたんじゃないですかね。印税収入とかの大きな収入については黙ってて。
という風におかしな部分を詰めていくと、この件は意図的な脱税としか思えないんですよね。
「税に関して無知だった」という言葉をどこかの会社社長が言ったって、信じる人は少ないでしょう。
同じ言葉を自分の推しが言ってたら擁護して、嫌いなヤツ・あまり興味がないヤツが言ってたら非難する。
これもまた、情報を主観で変質させてんですよね。
〇
似たような脱税話だと、「ログ・ホライズン」や「まおゆう」で有名な某作家の件があります。
一億二千万円の所得を隠していて、約三千万円脱税した事件ですね。
この件でこの作家は、懲役三年・執行猶予十ヶ月の有罪判決を受けました。
この件で使用されていた口座はいたって普通の口座で、この点については「隠すつもりではなかったのでは」と判断されたようです。
秘匿性が高い海外銀行の口座とかを使っていたら、もしかしたら重加算税や実刑もありえたのかもですね。
でも、脱税として有罪判決にはなってるわけですよ。
それを考えると、今回の漫画家の脱税はもっと重い判決になるかもしれませんね。
隠してた額が大きいですし、脱税した金を不動産に変えようとしてたのもバレてますし。
某漫画の最新刊が出たばかりですが、続刊については覚悟しておいた方がいいんじゃないかと。
推しを擁護したい、って気持ちは分からんでもないです。
が、無理筋の擁護は推しの評価まで下げるってことは理解しないと。
この漫画家の話でも、「政治家の脱税の方ガー」と言ってるファンが多くいました。
でもこれって、スピード違反で捕まったヤツが「他にもスピード違反してるヤツガー」と言ってるのと同じようなもんなんすよ。客観的に見ると。
野党の政治家が公職選挙法や政治資金規正法に違反してるとしか思えないことをやってて糾弾されてる時、ヤベー支持者の中からは必ずと言っていいほど「自民党ガー」と騒ぐヤツが出てきます。
だけんども、自民党がダメなのは当然として、同じようなことやってりゃ野党第一党だろうが泡沫野党だろうがダメだっつの。
問題なのは「誰がやったか」という属性の部分じゃなくて、「何をやったか」という行為の部分でしょーが。
それを分けて考えられないヤツは一般的には「バカだな」と見られますし、そういった支持者が多いと支持対象まで「ああ、こーゆーのに人気があんのね」と見られかねないってことを分かった方がいいっすよ。
どんな情報も、それを正しく読み解くための知識がないと意味がない。
そんなお話でした。
おわりー。