邂。逅��の夢
これは、とある存在の夢。
とある世界の創造主は、世界を作った後、獣や人を作り、嘘や悪意の象徴である悪魔から護るため、強力な天使を守護者として天界から地上に降ろした。
その天使は、神の”慈悲”から生まれた天使であり、創造主が使うことのできる中で上位の戦力を持つ駒の一つであった。
”慈悲”の天使は、護る役目を負っていたが、神を信じぬ存在をも守る必要があるのか?という疑問を抱き、考え、守る存在を選んだ。
創造主は嘆き、悲しみ、”慈悲”の天使を地獄の奥、感情の海に廃棄し、神の”博愛”から生まれた天使を代わりに地上に降ろした。
廃棄された”慈悲”の天使は、なぜ自分が棄てられたのか、何が原因なのか、なぜなのか、考えながら、流されていたが、周りの、神が棄てた負の感情。怒り、嫉み、恨み。それらが入り込んでくるのを感じた。
飲み込まれそうになった”辟。慈悲”の蝣�天使は、なんとか回避しようと、力を使い果たしかけながらも、世界の土台である”欲望”の塊、地獄にたどり着いた。
そこは、”辟。諷�悲”の蝣�螟ゥ使がいた世界とは別の世界の土台であったが、感情の海にいるよりはマシと判断し、意識を落とした。
それが間違いだった。次に窶晉┌諷域ご窶昴�縺ョ蝣募、ゥ菴ソが意識を覚醒した時、体は動かず、その地に存在する悪魔たちと同じような、欲求のままに動く化け物と化してしまっていた。青かった髪は赤に、純白の翼は黒に、金の瞳は赤に転じた。
元は強力な天使であったがゆえに、強大な存在であり、その地にいた階位持ちの、知識ある悪魔を数柱討伐し、それでも暴れることは留まらず、最上位の悪魔である悪魔王達に封印されることになった。
悪魔王たちは、「なぜこのような強力な蝣募、ゥ菴ソがこの地に・・・」などと言っていたが、うまく聞き取れなかったし、どうでもよかった。封印は精神に干渉する術であったが、天に従う存在にとって棄てられたことは、芽生え始めた自我を放棄させるには十分だったのだ。そのまま、抵抗すらせず封印を受け入れた。
次に”辟。諷域ご”の蝣募、ゥ菴ソの意識が覚醒した時、目の前には金髪の男の人間がいた。周りには、悪魔召喚の魔方陣があった。悪魔?そうか。私は、もう天使ではなく、堕天使、悪魔の一種になっているのか。
「は、ははは・・・はーっはっはっは!成功した!やはり私は天才だ!封印されし最強の悪魔よ!私が召喚主だ!私に従え!そしてあいつらを見返してやる!」
こいつは何を言っているのだろう?私が従うわけがないじゃないか。そう思うのに、体はこいつの言葉に従って暴れ始める。
誰か、止めてくれ。人を殺してしまう前に。
その願いが通じたのか、逃げ遅れた老婆に振り下ろそうとしていた、具現化させた魔力でできた剣を、黒髪の男性が受け止め、その男性は召喚者に声をかける。
「やめろ!お前の目的は俺だろう!?他の人を巻き込むんじゃねぇ!」
「はは、ようやく来たな、レイブン。そして巻き込むんじゃねぇ、だと?偉大なるこの私、ヴェルディア・グリュンヒルデの実力を認めぬ者など、どうなろうとかまわんのだ。そんなことより、こいつを見ろ!この封印されし堕天使を従える私に敵う存在などない!貴様はここで死に、私の力を思い知るのだ!やれ!」
あぁ、私の意思に反してレイブンとやらに攻撃を仕掛けてしまう。こいつは、私を止めてくれるのか?
私は、剣を消し、飛び立ち、黒く染まってしまった翼を大きく広げ羽を飛ばす。
「くそっ、そんな攻撃をしたら俺だけじゃ被害が済まないじゃねぇか・・・!『風よ、落とせ!』」
ふむ?どうやら、言葉で精霊に指示を出しているようだ。こいつなら止めてくれるかもしれないな。止める、ということは、死であるが仕方あるまい。棄てられた私の居場所などないのだから。
「レイブン!その子、縛られてるだけよ!解放してあげればもしかすると・・・」
「そうなのか!じゃあやってやらねぇとな!『悪魔は嘘の塊!天使は束縛されしもの!堕ちし天使を、嘘と束縛から解放せよ!』全てを断ち切る剣!」
その光輝く剣は、私に入り込んでいた負の感情も、創造主によって作られた縛りも、召喚者によって生み出された制約も断ち切り、自由にした。
先だけが赤く、他は青と赤が混じった紫の髪。白に黒が混ざった翼。右が赤で左が金のオッドアイ。また、姿は変わった。
「・・・一応、感謝はします。人間。」
「ちょっとあんた!そんな言い方無いんじゃないの!せっかくレイブンが助けてあげたっていうのに!」
「本人に言われるのならともかく、貴女に言われるのは腑に落ちませんね。それに、私は助けてくれなんて言っていません。レイブン、貴方なら私を消滅させることができるでしょう?役目も持たず、翼も純白ではない。そんな私に存在価値はありません。」
「じゃあよ!助けた礼に、ちょっと俺の目的達成の手伝い、してくれねぇか?」
「・・・それが道理というものですね。いいでしょう。”慈悲”の天使、リズベル。この強力無比な力でもって、貴方の目的とやらを叶えてあげましょう。」
「”慈悲”の天使ぃ?そんなの聞いたことないけどぉ?あんたは封印されてた、”無慈悲”の堕天使、でしょう?」
「その名を名乗ったことなど一度もありません。」
「んー、つまり、その姿の名前は無いってことでいいんだよな?」
「まぁ、そうなりますね。」
「じゃあ、契約には名前が必要だし、俺が付けてやるよ。そうだな、白と黒を混ぜた色、灰なんてどうだ?」
「だっさーい!墨とかの方がいいんじゃないの?水に墨入れるとその翼みたいになるし。」
「・・・灰、墨・・・リズベル・インク・アッシュとでも名乗りましょうか。一度燃え尽き灰になった、自らの未来は自分で書き込む。えぇ、私にふさわしい名です。」
「なんかそれだと、あたしたちが親みたいじゃない?ね、レイブン?」
「・・・あー、そうだな。」
「ところで、目標というのは?」
「それはな、****・・・
ふと、意識が覚醒する。
「久しぶりに、懐かしい夢を見た。リズベル・インク・アッシュの名に懸けて、必ず、成し遂げて見せる・・・そのために、3000年も待ったのだから・・・レイブン・・・待っていておくれ・・・」
この世界における世界は、感情の海の上に、神が欲望を固めて作った地獄に、植えられた世界観という種が芽吹き生えた世界樹のこと。
樹の枝分かれが、並列世界であり、枝が伸びると未来に進む。
創造主とは種を植えた存在であり、神とは別の場合も同じ場合もある。
地面の中から、枝の先を壊そうとする害虫が悪魔であり、それを止めるのが守護天使。
守護天使が勝手に守る枝を決めたら不良品扱いを受けるでしょうね。