六十一番目の女神様(シスコン)
「お久しぶりですね。御崎成哉」
間近からそんな呼びかけが聞こえ、俺は無意識に目を開けようとした。
そこでふと、今の自分が〝御崎成哉〟ではなかったと思い出す。……そうだ。家族のあいだではすっかり「成哉」呼びが定着してしまっていたけど、本来だったらそれは、絶対にあり得ないような事だ。
俺は転生してウェスティンになった、だから肉体的にいえば成哉じゃない。
家族以外の誰かに、こんなふうに「成哉」と呼ばれるのはおかしい。
それじゃあ相手が誰かというと――……ひとりだけ、俺には心当たりが存在していた。
こうして俺を仰々しくフルネームで呼んでくるのなんて、ククリア以外にはまずこの人しかいない。
「えぇっと……ロイ、さん……? お久しぶりです……」
「は? 誰ですかそれは」
寝起きの頭でポロリと零してしまっただけなのに、ものすごい不機嫌さが感じられる鋭い返事がかえってきた。マズい、怒らせたか。
なにか弁解を挟もうとするが、その余地もなく、怒涛の勢いで責めるように言葉が浴びせられる。
「まさかククリアだけでは飽き足らず、そうやって私にまで名前を付けるつもりなんですか、あなたがた親子は? 懲りずにまた人間堕ちをさせて、女神によるハーレムでも形成しようと? 家族量産計画でも企んでいるのですか、けっきょくは煩悩の化身でしたか?」
「こわい。こわいのでやめてください」
あんまりにも圧が強いのでそう懇願すると、「女神にむかって怖いとはなんですか。まったく」と、呆れた様子で覗き込むほどに近かった気配が少しだけ離れた。
一面が白く染まったぼやけた視界に、うっすらと輪郭が戻っていき、やがてひとりの女性が映し出される。
上質な絹糸を思わせる真っ白く長い髪に、ガラスじみた薄い水色の瞳。まぶたのふちを彩る、髪と同色の長く繊細なまつ毛。
誰も触れたことのない新雪のような、日焼けを知らない、透き通るほどに白く滑らかな肌。装飾の少なめな、清らかな印象を抱かせる純白のワンピース。
「美」というものを際限なく追求し、人生を賭して技術を磨き上げ、そのすべてを詰め込んでようやく生み出されたひとつの芸術品のような……もはや人体のパーツを一つひとつ計算をしながら取り付けたとしか思えない、人工物と見まごうほどの整い過ぎた麗しい容姿。
ククリアに似ている……というかほぼ瓜二つな、けれど彼女よりもどことなく女神らしい風格や威厳、神々しさみたいなものが感じられる、そんなキリッとした面立ちの二十代ぐらいの見た目をした女性。
統括神により生み出されし女神、六十一番目の世界管理プログラム。
六十一番目こと、ロイさんがそこに居た。
ちなみにロイさんというのは、俺が最近になって考えた彼女の名前だ。
単純な語呂合わせで、六十一番目で六十一。
あんまりにも気絶の発作で彼女に会う頻度が多くなっていたので、そのたびにいちいち「シックスティーワン」「シックスティーワン」と繰り返し呼ぶのが面倒だったから、簡単に略そうと思いそう呼んでいる。
でも彼女は名前を付けられるのをひどく嫌っているから、俺が勝手に内心で呼んでいるだけだ。口に出すのは今回が初めて。
案の定、彼女は嫌そうに低い声を漏らした。
「私に名前は不要です。識別番号でけっこうですと、以前にもそうハッキリとお伝えしたはずですがね?」
忘れてるんじゃないぞとばかりに、とても冷ややかな表情でこちらを睨んでくるロイさん。
こう見えて下の妹神――ククリアのことをつねに気にかけている人なので、可愛い妹に名前なんて付けた挙句に恋に落とし、感情というバグを生じさせ、あわや消滅か邪神化か、といったところまでククリアを追い詰めた父さん(と、その子供である俺)には、いまだに恨みが残っているんだろう。
この人だったらもはや、俺たち親子への恨み節だけで邪神化まで至れてしまいそうだ。
「あなた今、たいへん失礼なことを思いましたね?」
眉をひそめられた。
ククリアもよく俺の思考を読んでくるけど、これはロイさんにも備わっている特技らしい。
「名前を付けないで下さいってば。あなたの脳みそは、常時こぼれ落ちて無くなってでもいるんですか? それとも、父親が収監されたショックでまだ寝ぼけているんですか?」
「え? ……あっ……!」
収監――その言葉でようやく俺は、ここに来るまでの経緯を思い出した。
御崎雄大さんが、連合の地下牢へと拘留されたそうです――意識を失う直前に聞いたアーシュアさんの発言が、脳内で勝手にリピートされる。
とたんに混乱がいっきに押し寄せ、俺は慌ててロイさんに掴みかかった。
「そうだ、父さん! 父さんが収監されちゃうんだ! はやくっ、はやく助けないと……!」
「落ち着きなさい。助けるって、いったい何から助けるつもりです?」
さっきまでと同様に淡白な口ぶりでありながら、しかしこちらの心を静めるに相応しい響きを含ませ、彼女は俺をたしなめる。
「相手は敵ではなく味方ですよ。なにも、あなたたち親子が憎くてやっているのではありません。御崎雄大の『中身』をまず調べないと、危険かそうでないかの判断は下せない。……だからこそ。あなたの元にはまだ帰せないと、彼ら神託者がそう判断したからこそやっているのです。誰にとっても苦渋の決断で、客の安全のためにイベントを中止にして帰すのと何ら変わりません」
具体的で一番理解がしやすい例えを出され、俺はぐっと押し黙った。
ステージの裏側で強く拳を握りしめ、黙ってうつむいていたスタッフたちの意気消沈した姿が脳裏に思い浮かぶ。
「たとえ見た目は幼子でも、あなたはもう、大人の事情というのを理解できるはずです。父親と触れ合いたい気持ちばかりを優先して、危険人物を連れ帰って、あなたはプレナントの町を脅威に陥れるつもりですか? 先ほどのイベント会場のように」
「……分かってます」
結果的には上手くいったものの、結局のところ、イベントを強行したのは自分のための決断でしかなく。
いうなれば俺の単なるワガママで、独り善がりであり、私情だった。
あのとき中止を迫ってきたチョビ髭三白眼のお偉いさんは、見た目や態度こそソレっぽかったものの、別に言っていること自体はごく当たり前であり、責任者として相応の判断をしただけに過ぎなかった。
……悪役でもなんでもない。
彼はまっとうな社会人でしかなく、むしろ彼が言っていたとおりに、優先順位を考えればあの時に中止を判断すべきだったんだ。……大人なら。
「感情の矛先を向けるべき相手を、見誤ってはいけません。それに、慌てたところで今のあなたは、幽体離脱を起こしてしまっている。ふたたび肉体に魂が定着するまでは現世に戻れませんし、どうしようもありません」
「どうしようもって……」
焦りばかりが次々と浮かんできて、どうしても気持ちが落ち着かない。
さっきまでイベントがぶじに成功し、あれほどの安堵感と喜びに満たされていたのに。モデルさんたちにもステージ上で感謝されて、あんなにも嬉しかったはずなのに――……どうして俺の心は今、こんなにも荒ぶってしまっているんだろう。
「あなた、女の体になっていますね」
弱い部分に突き刺すようにして、また別の問題を持ち出された。
それに関してもどうしていいのか分からないので、この状況で言われたところで、それこそどうしようもない。
「なんで今、それを言うんだよ……?」
「急に体の造りが変わったせいで、色々と気持ちが混乱しやすくなっているのです。そこに付け込まれる可能性もありますので、なるべく平静を保っていたほうが、己や周囲のためにはなると思いますよ」
「つけこまれる……?」
自分の体が女になっているのと、「付け込まれる」という単語とがいまいち嚙み合わなくて、俺は困惑したままロイさんを見た。
彼女は小さく頷く。
「あなたの体がすぐに戻らないのはですね。ククリアの……ああ、そういえばバグに関しては、『イルマニ』とかいう別の名前がありましたか。御崎雄大とは違うほうの契約者がつけた名前ですね」
「……松柳久志さんです。父さんの親友で、幼馴染の……」
「ああ。そういえばそんな名前でしたね」
まるで興味がなさそうに応え、ロイさんは続けた。
「そのククリアの欠陥の力が、変に歪められ、あなたに作用しているのです。つまり、ククリアの邪な感情からイタズラにちょっかいを掛けたつもりが、結果的に呪いのようになってしまっているということですね」
「呪い!?」
「ただの喩えですよ」
すまし顔でそう言い切ったロイさんは、驚いている俺にすっと近づくと、おもむろに立てた指で素肌へと触れてきた。
「なっ!?」
頬、首すじ、肩、鎖骨――人差し指の先が下へ下へとどんどん滑っていき、まるで躊躇のない動きに、「――やっ!」と思わず反射的にうわずった声が漏れる。
「や、やめぇっ……!」
「なにを勘違いして盛っているのですかあなたは」
これ以上なく冷徹な視線を受け、ようやく我に返った俺は彼女から二・三歩距離を取った。
そのまま自然と身体を抱く姿勢になり、胸元を隠す。
「だ、だっていきなりで……。ククリアも父さんに、日常的に夜這いを仕掛けてるぐらいだし……」
「私たち女神は本来、感情というものを持ちませんし、性欲もありません。ククリアが異質なだけです。私にもそのつもりは一切ございませんので。ただその『呪い』の根源がどこにあるのか、ちょっと調べようと思っただけです」
そうしてロイさんは、俺に触れていた指先を自分の額にチョンと当てた。
しばらくして、「うまく辿れませんね。ククリア本人を調べた方が幾らか早そうです……まああの子が此処に戻って来るようなことがないと、私とは接触できませんが」と、何の感情も含んでいないような声で呟く。
「ククリアの欲望が肥大化し、あなたの肉体変化を留めたままにしているようなのは分かるんですが。あの子の欠陥、イルマニは……二番目のミナでしたっけ? あなたの性別が転換された姿に、ひどく執着しているようでしたから。しかし、ここまで力が及んでいるとなると……イルマニを信仰し、力を高めようとしている何者かがいる、ということでしょうか」
「えっ?」
訊き返そうとした瞬間、ぐわんっと大きく視界が歪んだ。
強く引っ張られる感覚のせいで立てなくなり、その場にひざをつく。
「――っと! あれ……? これ、いつものじゃ……?」
マズい、引き戻される。
「ちょっ、急ぎで答えて下さい! イルマニを信仰している何者かって、誰なんですかそれは! 神様なら分かるでしょう!?」
「そんなの千里鏡で詳しく調べないと分かりませんよ。女神は世界の行く末を見届け、管理する存在。人捜しなんてものは、女神がする仕事の範疇ではありません。探偵にでもお願いしてください」
ロイさんは現世に引き戻されまいと踏ん張っている俺を、ちっぽけなアリでも眺めるかのように表情を変えずに能面顔で見返していた。
こういう時ばっかり神様っぽいんだから! ずるいよこの人!
「御崎雄大とその家族ばっかり見ていたククリアとは違って、私は日本以外の国にもちゃあんと目を光らせているんです。これが女神が本来あるべき姿。世界の管理者というものは、かくあるべきなんです」
「いやいやいやいやっ! そんなのどうでもいい、早く答えて! 引き戻される! 早く、早くうううううううぅぅぅぅッ!!」
全力で拒否しているせいか、もはや掃除機で吸われているぐらいの引力を感じるようになってきた。
肌がゴーゴー吸われているみたいで痛い。そりゃあ魂が引っ張られているんだから、このぐらいの痛みは感じるものだろう。
「答えてえええええええええええええええぇぇぇぇッ!!!!」
「女神が世界に干渉するのはご法度です。ククリアが特別に激甘だったんですよ、特にあなたがた親子にはね」
声にエコーがかかり、音が反響して聞こえるようになってきた。
いよいよ目も開けられないほどになり、すがるように床にへばり付く。
「私があげるヒントはこれまでです。あなたのことはそれなりに気に入っていますが、ククリアの二の舞にはなりたくありませんから。せいぜい苦労して、あの子を助けてあげて下さいね。御崎成哉」
名前を呼ばれた直後に、ブツンッと勢いよく意識が途切れた。
次に目を開けた時には妙に視界がカラフルで、先ほどロイさんと一緒にいた空間との差に目が痛くなってくる。
さっきまで俺がいたのは、女神の私室兼仕事場の、『創造の間』と呼ばれる場所だった。
ククリアがいた頃には星空を模して作られていた空間は、ロイさんに引き継がれた今、なぜかひたすら真っ白になっていた。訊けば内装の変更が可能らしく、女神に相応しい空間にしたかった彼女は、とにかく白にこだわったそうだ。どこもかしこも白。果てのない白。
ロイさん自身も白いので、人によっては発狂もんだろう。
「ううぅ……。目ぇ、痛ぁ……」
「えっ!? ど、どうしたんだウェスティン!? 痛いのか!?」
呟きに返事があって、その狼狽っぷりに、誰なのかを察した俺は相手を見ずに言った。
「カルム……。カルム……?」
「あ、ああ」
目を開けるよりも先に名を呼ばれ、寝ている俺をじっと見つめていた彼は不思議そうに首を傾げた。
「どうして俺と分かったんだ?」
「だって、こんな心配するのはカルムか父さんぐらいだし。家族のなかで『ウェスティン』って呼ぶのも、カルムか師匠ぐらいで……」
そこまで言い、ショボショボの目を擦りながら身を起こす。
俺が寝ていたのは自室のベッドの上で、カルムはその脇に椅子を置いて様子を見てくれていたみたいだった。服装はいつの間にか白くフワフワな衣装から女児用のネグリジェに変わっていて、あらかた脱がされた上からスポッと被せられたらしい。
「ああ、服はエチェットが着替えさせたみたいだぞ」
小花柄の薄い水色の生地を摘まんでいる俺を見て、カルムが事情を話す。
「いつも通りに俺がやろうと思ったんだがな。なぜか、物凄く威嚇されて……。なんなんだあいつは、着替えひとつにあそこまでプンスカと怒って。意味がわからん」
「ああ……うん。そっ、かぁ……」
事情をまだ知らないカルムは、ふだん通りに男の自分が着替えさせてやろうと思ったんだろう。それを見つけたエチェットが、異性にやらせるまいと役割を分捕ったと。うん。容易に想像できる。
「発作は落ち着いたか、ウェスティン。変なところは? 目は大丈夫か?」
「うん、特になにも……。目が痛かったのは、さっきまで真っ白な空間に居たからで……。……あのさ、カルム……?」
「ん、どうした?」
「父さん、は……」
問いかけに対し、カルムは少しだけ悲しそうな、申し訳なさそうな顔をした。
「連合の地下牢に収容されている。罪人としてじゃなく、調べを受ける立場としてな。病院のベッドが雄大用に運び込まれていて、ちゃんと専属の医師も付いているんだそうだ。一日につき最低三回は、世話のために入ってくれると言っていたぞ。……だから、心配はいらない。ぞんざいな扱いを受けることはないからな」
優しく穏やかな声で言いつつ、彼は見上げていた俺の頭をそっと撫でた。
いつもよりも撫で方が柔らかく、それだけで俺のことを、ずいぶんと気遣ってくれているのが分かる。
「……そっか。良かった、ひどい待遇をされないで」
「そんなことをされたら俺も怒っている。……でも、連合のみんなは雄大の味方だ。味方だからこそ、雄大に罪が被らないよう徹底してくれるんだ。それが分かったから、俺も安心して雄大を預けることにした」
撫でながら歌うように言い、それから彼は、ふわあと一つ大きな欠伸をした。
時刻を見れば、もうすでに夜の九時半になっていた。イベントはとっくに終わり、みんな会場から撤収してしまっている頃だろう。
「家の中がずいぶんと静かだけど、エチェットやユエリスは?」
「雄大の様子を見に行っている。ククリアも付きっきりだ。牢屋の前までは面会が可能だそうだから、お前も落ち着いたら行ってやるといい。雄大の目が覚めるかもしれないからな」
「ん、わかった。それで、ええと……。俺はどうやって家に帰って……?」
矢継ぎ早の質問に、カルムはくすりと笑った。
さっきから自分が落ち着かない様子なのは分かっているんだけど、まだ魂が戻ったばかりでぼんやりとしていて、すぐには状況が理解できないから仕方ないんだ。笑わないでくれ。
「マネージャーのアーシュアという男が、お前が倒れたとすぐに報せてくれてな。雄大の身柄を連合に預けてすぐに、お前を舞台裏まで迎えに行ったんだ。様子をみたククリアが『いつもの発作だ』と言っていたから、俺たちはそんなに驚かなかったんだが。幽体離脱と聞いて、あの女の子たち……チェルと、フィノだったか? が、それこそ魂が抜けたように青ざめていて。すごく心配をしていたから、明日にでも連絡をとって、ちゃんと無事であると伝えてやってくれ」
「わっ、わかった! そうする!」
そういえば倒れた直後に、チェルたちにずいぶんと呼びかけられた気がする。
次の出勤日は連休を挟んだ三日後だし、明日の午前中にでも連絡して、早めにふたりを安心させてあげよう。
「そうだウェス。先に風呂へ入ってから、夕飯にしよう」
「……へ」
「『へ』ってなんだ。もう動いても平気なんだろう? さっき沸かしたばかりだからな、きっと気持ちがいいぞ」
「や、そのぉ……。ぉん……おん……」
「『おん』……なんだ?」
すごく純粋な目で見てくるカルム。
以前よりも頻度が減ってきたとはいえ、まだこうして気絶の発作が出るので、風呂は誰かと入るのが決まりになっている。
父さんかカルムのどちらかと入るのが恒例なのだが、女の体になってからは、扉一枚を隔てた場所でエチェットに様子をみて貰うか、それかククリアと入るかの二択しかなかった。
後者は男女どちらの体にも変化できるので、多少のセクハラ発言はありつつも、気兼ねなく入れたのだが……。
『――――なんでっ、なんで私と一緒にお風呂に入ってくれないんですか成哉くうううううんっ!!!!』
バンバンバンバンバンバンッ! ガリガリッ、ガリガリッ! バンバンバンバンバン!!
『ヒイイイイィィッ!? ちょっ、お願いだから風呂場の扉バンバン叩かないで! 爪で引っ掛かかないで、ゾンビみたいで怖いからああああぁぁっ!!』
『家族のなかで私だけ成哉くんと入れてないんですよ!? 雄大さんもカルムもククリアも、ロズも、ユエリスだって入っているのに! なんで恋人の私だけ入れないんですか、むしろ真っ先に入れてくれてもいいんじゃないですか!?』
『俺の心臓が保たないのっ! あと、鼻血出るかもだからヤダ!!』
『鼻血ぐらい私が拭ってあげます!! 浴槽に滴り落ちたって一向に構いませんから!!』
『俺が構うんだってば!!』
……とまあ前者の場合、始終こういうやり取りを挟む羽目になるので、結局はククリア一択みたいなもので。
今日も変わらず女体のままなので、またククリアと入るかーなんて考えていたんだが。
「おん……。おんっ! ……お、ぉ……」
「『おん』……『温度』? 『温感』? それとも『温泉』か?」
「ちがっ! ん、おん……んんっ、んッ、んんんんん~……!」
「腹が痛いのか!?」
「ちがううううっ!!」
まさか、カルムと一緒に風呂へ入るのがこんなに恥ずかしくなるだなんて。
これまでにもまったく、夢にも思わなかったのである。




