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72話 ぬか喜び?

ぬか喜び……どうして小生はこうも語源を知らないのか。

 んんん。なんだ?

 目の前が微かにチカチカしたような。


『ご主人様!』

 あれ? 念話だ。右肩にアイの姿が見えない。

『ああ、アイ。なんで消えた?』


『ARを顕現しない方が分析がしやすいからです。それより、もう一度、レダを触って下さい』

『はっ?』

『お願いします』

『ああ、わかった、わかった!』

 少し離れて寝そべったレダの元へ行き、背中に触れる。


『見て下さい。魔法欄を』


≪魔法スキル!≫

 マナアサイン :レベル11:有効

 ブレス    :レベル 9:有効


 イグナイト  :レベル 1:有効

 ミーティア  :レベル 1:無効

 レプール   :レベル 1:有効

 ブリーゼ   :レベル 1:無効

   :

   :

   :


 だから攻撃魔法波は全部……。

「あっ!」


 イグナイトとレプールの欄が有効に変わっている。

 レダから手を離すとそれら2つは無効に戻り、また触ると有効に変わる。


 これが、さっき撫でたときのちらつき───


『つまり、レダに触っていると使える魔法が増えるってことか?』

『そのようですね。んんん……わかりました。レダが、最近取得した侵襲(インバシオ)スキルで、ご主人様への呪いを無効化するようです』


「呪いの無効化? 本当か?」

 呪いということに確定しないで貰いたいが。まあいい。


「ねえ、エマ。またケントがブツブツ言ってるんだけど」

「そうですね、アイさんとの世界に入っているのでしょう」

「やっぱり。なんかむかつく」


 聞こえてくる声は無視だ。


『じゃあ、なんで2つだけ有効なんだ? 他は無効のままだが』

『なるほど、ミーティアやブリーゼなどは、かなり遠隔に作用する魔法なので、有効化されないようです。訂正します。侵襲(インバシオ)スキルは、ご主人様への呪いを緩和するようです』


 緩和か。


『早速試しましょう。まず剣を構えて下さい。イグナイトを発動します』

『待て待て。攻撃魔法が使えるなら、自分で発動した方が良い。呪文を教えてくれ』


 俺が使えた回復魔法は、これまでアイが間接的に発動していたから、自発的にやったことがない。


『いえ。ご主人様の場合は、称号の効果で詠唱は不要です。魔法名を念ずるだけで発動できます』

 よし!


「試したいことがある、みんなは離れていてくれ」


 リザはあからさまに訝しそうな顔をしたが、エマに引っ張られて離れていく。


「レダ!」

 黒豹は起き上がると、形を無くし俺の腕に纏わり付いたかと思うと、やがて剣に変形した。いつもの形だ。


『では、ご主人様。念じて下さい』

 ああ。


 発動───≪火焔(イグナイト)≫───


 マナアサインと同じように、腕に魔力が流れると、レダ剣が瞬時に赤熱した。

 そして、周囲の大気を吸い込み燃え上がった。


 (ほのお)の剣だ。


『ご主人様。もっと魔力を込めて問題ありません』

 レダは大丈夫なのかとも思ったが、彼女は金属だ。


 なかなかに強い輻射熱を発しているが。


『むう。持続力はありますが、熱量はリザの火球に劣りますね。解除しましょう。同じように念じて下さい』


 ぐっ。そのようだな。


 解除───


 焔が消えた。

 刀身はもはや赤熱していない。恐々手を近付けても輻射熱を全然感じないので、ちょんと指先で触ってみた。が、ややひんやりするぐらいの温度となっていた。


『魔法ですから』

「そういうものか」


「ケントぉぉ。攻撃魔法が使えるようになったの?」

「ああ、2つだけな」

「それでも、すごいわ」


 凄いかも知れないが。


≪スキル:火焔(イグナイト)が昇格しました!:レベル2≫


 おっ! 告知だ。


 発動───≪火焔(イグナイト)≫───


『昇格はしたものの、さほど熱量に差はありませんね。実際に戦闘で使わないと』

 それもそうか。


 解除───


 今度は告知が来ない。そう簡単にはレベルアップしないか。


「ケント様、石像が!」

 床が光り、小さな塊が宙に浮くと、その周りに光がまとわりつくようになって、徐々に大きくなりやがて人型をかたどった。

 あんな感じでできるんだ。


 数秒後に光が消えたとき、そこに居たのは、ストーンゴーレムだった。残念ながらアイの予測の通り。振り出しに戻ったな。


 それはそれとして。

 リザの火焔魔法が効かなかった以上、俺の魔法(イグナイト)が効く期待は、ほぼ0だ。


 まあ、あきらめるのはまだ早い。


 発動───≪外斥(レプール)≫───


 うっ!

 腕に衝撃が走り、耳障りな金属音がしたが、それは1秒に満たなかった。


「えーと」

 どんな効果が……?

 見た目には、何の変化もない。


 魔力をレダに吸われている感覚はあるから、発動はし続けているのだろうけれども。


『どういうことだ、アイ』

『こっ、これは……ご主人様』


 なんだ、興奮している、もしかして凄い魔法なのか?


『この魔法は、念を込めて共鳴している対象、この場合はレダの剣ですが。そこから全てのものを、遠ざける斥力が発生します』


『はっ? 斥力?』

『切っ先を床に近付けて動かしてみて下さい』


 ああ。言われて通りにやってみる。


「おおお!」

 床の砂埃が、切っ先から数mmくらい押し出されるように離れていく。

 おもしろい。

 床の上で切っ先を滑らせると、触っても居ないのに、その通りの軌跡が砂埃の筋が描かれる。


 面白いことは認めよう。だが威力としては情けないほど弱い。

 ただの木の棒でも、砂には触れるものの同じような結果は得られる。

 斥力なあ。


 魔法レベル1とはいえ。なぜ、これが攻撃魔法なのかと思うぐらいのしょうもなささだ。

 それともレベル上げが必要なのか?


 解除───


≪スキル:外斥(レプール)が昇格しました!:レベル2≫


 発動───≪外斥(レプール)≫───


 切っ先を再び床に近付けた。全くというか、眼に見える程には変わらない。


「だめだ。この魔法は使い物にならないな」

 火焔(イグナイト)より、使えなさそうだ。


『いいえ。ご主人様、これはとても凄い魔法です』

『いやいや、どう見ても大したことがないだろう』


『そう思いますか? では、発動したまま、レダ剣を床に押し付けて下さい』


 押し付けるだと?

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

誤字報告戴いている方々、助かっております。


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


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