2話 コピペ:異世界転移
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気が付くと、白とも青ともつかない、よく分からない空間に居た。
「えーと……俺、帰って寝たよなあ」
大学のサークル連中に、関係ないフットサルの練習試合に人数合わせで引っ張り出された。そのあと、普段使っていないところの筋肉痛が酷く……その後が良く思い出せない。
しかし、明らかにここは家ではない。それどころか建物の中なのか、屋外なのかも分からない。
「ここは、どこだ?」
変な感じだ。声は吸い込むように消えていく。まるで工学科にある無響室にでも入った感じだ。
俺は、なぜこんなところに居るのか? 自問しても心当たりがない。
『ええ、分かっていますって。手が足りないのでしょう。別にできますって。規定? 私だって補欠なのだから問題ないでしょう』
どこかから声が聞こえてきた……上?
『手順? マニュアルが有りますし、そもそも今回はイレギュラーなのだから、適当……じゃなかった、多少逸脱しても……はいはい、では!』
声が途切れると、何かが降りてきた。
押しつぶされるように圧が掛かって、平伏する。
『面を上げよ! フッフフ。これ1回やってみたかったのだよね……』
そっちの方へ意識を向けると、眩しかった。唯々眩しかった。
『ああ、あんまりこっちを見ると眼が潰れるよ……今は眼なんか無いけどね、あっははは』
「あのう」
圧力を受けて口を噤む。
『こちらが質問するまで、喋るな! 段取りが崩れるだろう』
眩しい存在が、すぐ目の前に居た。
『えーと。三浦賢人、19歳。大学生。最近の趣味、ゲームと。1日平均6時間以上プレイ。いい歳して他にやることはないのか?』
……すみませんねえ、受験勉強で苦しんだ反動なのですよ。
『まあ、今回は良い人材なのかも知れないけれど。他には……幼い頃、古武術を……おお! いいぞ。この辺が選抜理由……を、やっていたが、11歳で辞めた……なんだ、使えないな』
悪かったな!
『えーと、次は? 何々、被験者へ事業内容を説明。面倒臭……』
今、面倒って聞こえたような。
『要するに、中等知能生命体の内で、進化の伸びが大きい存在がいくつか見られるのだが。それが環境のお陰なのか、生物的な完成度が高いのかを検証する学術的継続的事業があるんだ。それで検証のために、定期的にサンプルを選抜して、別環境、つまりは違う星にへ送り込む実験をしている……随分悠長な話だろう』
違う星? サンプルって、もしかして俺のことか?
『ああ、もういいか。で、うーむ、これと、これは飛ばしてと。じゃあ、質問タイムいってみるか。ああ何か訊きたいことあったら、質問して良いぞ。ああ手短にな!』
『おーーい。質問ないのか?』
いや、さっきから喋れないのだが……。
『ないのか? あっ、そうか。箝口していた。悪い悪い。解除っと!』
言動はともかく、見た目は神々しい。とりあえず敬語にしておこう。
「……あのう、ここはどこなのでしょう?」
『ああ、そういうの良いから、どうせすぐここから立ち去ってもらうしな。次!』
「では……あなたは? どなたなのですか?」
『ふっふぅん。良い質問だ! 俺は天使だ!』
天使? マジで? 頭おかしいヤツかとも思ったが、俺の視覚はそれを肯定している。
『人間なんかよっぽどのヤツしか姿が見られないのだからな。で、今回は、転移審査官をやっている。次!』
「じゃ、じゃあ、俺は死んだのですか? そんな憶えがないのですが」
『あぁ、死んでない』
「えっ? 死んでないのですか。じゃあ……」
『死んでは居ないが……別の星に転移して貰う。言っておくが、地球には戻れないぞ』
「そんな……」
父母に友人、そして結衣の顔が脳裏を掠める。
『それに戻る必要はない』
はっ?
『いいじゃないか、番の者と決別したばかりだし』
うっ。
番じゃなくて恋人だ。喧嘩別れしたばかりだ。
『それから、心配は無用だ。家族の方も問題ない。君の分霊が、今も地球の日本で生存しているからだ』
「分霊?」
『生き霊だな。まあ君と全く同じ物だ』
「コピーと言うことですか?」
『人間如きが、無駄なことを考えるな。アメーバーが細胞分裂する時にどっちがオリジナルとか考えるか?』
くう。
『向こうにも君が居るのだ。要するに向こうの世界では、誰も何も困らない。何も起こっていないのだからな。至れり尽くせりだな』
「そんな勝手な!」
『ああ、うるさい。神の思し召しだ』
「しかし」
『黙れ! 今は質問タイムだ。苦情は受け付けない』
うぅぅむ。
『ああ、あと。一応言っておくが、お前がもし地球に戻ったら、地球ごと消えてなくなるぞ!』
「はっ?」
『ふーむ。地球の文明レベルは……4.9か。知っているか? 反物質』
「陽電子とか……」
『ふん、生意気な。お前が今度受肉すると、反物質になる。地球に戻ったら、星ごとドカンだ! アッハハハ……」
そんな馬鹿な。
『じゃあ、質問タイムは以上だ。で、次は……えぇと説明は終わりか。じゃあ、説明を受けたと同意しろ。ああ、同意したと考えれば、それで同意完了だ!』
ううむ。
『次に進めないじゃないか。おい!』
こんな説明で同意できるわけが。
『早くしろ、お前みたいなヤツを何匹か捌いて、実績を積むんだよ。おい!』
なんだと──
混乱していただけの頭の中で、何かがカチリと填まり込んだ。
「断る!」
『はぁ?』
「断ると言った!」
『ふん。断るだと? ハッハハ……下界の虫けら風情が天使に楯突いて、ただで済むとでも思っているのか、早く同意しろ! はい! 同意取得完了』
「同意なんかしてないぞ?」
『フフン! 同意しなくてもだ! 審査官が3回促せば同意したことになるのだな、これが! アッハハハ! お前みたいな強情なヤツが居るからな、非常措置ってヤツだ』
「このやろう」
『黙れ!』
くう。まただ、また喋れなくなった。目の前に居るのは本当に天使なのか?
『本当に天使か、だと? 舐めたこと考えるじゃないか! ああ、非常措置に移った段階で、サンプルの思考を読むことが解禁になるのだよ、ハッハハハ』
なんてやつだ、だから補欠なのか。
そう考えた刹那、何やら怒気が漂ってきた。
『残念だったな、正規の審査官は、今は別件で忙しいらしいからな。今がチャンスなのだよ。それはともかく、天使を馬鹿にしたヤツは赦さんぞ。どうしてやろうか。とはいえ、転移させないと、私の経歴に傷が付くか……マニュアル、マニュアル』
邪悪な感じしかしない。
『知能なんか持たない単細胞生物へ転生……ちっ! 今回は人間のまま転移限定か。じゃあ、行き先をもっと酷い星に変えて……これもできないのか、制約がガチガチだな。仕方ないな。えぇぇ、何々。被験者は転移先で適用できるようにボーナス能力を、ああ、あれか。この星だと≪天職≫ってヤツに色を付けるのか。ふぅーん、人間で我慢してやるのだ、能力は最低限に……いいや、そもそも天職なんて贅沢だな、罰だ! 天職はやらん。なしだ!』
この野郎!
『あとは……そうだ! そう簡単に死に戻りなんかできないようにしてやるからな、覚悟しろ』
ドッ、ドン。
何の音だ?
『おっと、もう帰ってきた。即行で転移だ! はい、逝ってこい! 天使を愚弄した罪、後悔しながら生きろ!』
そう聞こえた瞬間、意識が遠のいた。
†
『はいはい。聞こえていますって、今開けますよ』
『むっ! 被験者は? 居ないが』
『もう転移手続き終わりましたよ!』
『早いな』
『ええ。被験者が協力的でしたので。これが報告書です』
『転移先は問題なし。ん? 記載漏れがあるぞ』
『いや、そんなはずは』
『ここだ! ボーナス能力の欄が空欄になっている』
『ああ、それですか。それは記載漏れではないです。被験者が要らないっていうので、付けませんでした』
『いや、ボーナス能力だぞ』
『そうですが』
『ははは。冗談はよせ。転移先は試験空間7、31-1875562星系第2惑星なのだぞ』
『それが何か?』
『ここへ転移させるには、ボーナス≪天職≫付与が必須。マニュアルにそう書いてあるだろう。まずい、まずいぞ!』
『要らないって言ったのだから、いいじゃないですか、別に!』
『良い訳ないだろ! 事の重大さが分かってないのか。≪天職≫のポイントと言うのはなぁ……もういい! オマエと議論している場合じゃない』
『はあ?』
『大問題になる。とりあえず、オマエは拘束だ!』
『ううぅ!』
『堕天させないだけマシだと思うのだな。それより今は、歯止めだ、転移が完了する前に歯止めをーーーー!』
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