表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/82

15話 人の温かみ

男は無力なことが多いですよね。

 宿へ戻ると、リーザが起き上がっていた。

 見たことがない服を着ている。

 アデルさんが自分の物をくれたのかな? ギルドからここに来るまでに、いくつか店に寄ったが、服は買っていなかったはずだ。


「お帰りなさいませ。ケント様」

「おお、ただいま」


 雰囲気的に回復しているようだが、一応訊くか。


「もう身体はいいのか?」

「ああ、はい。アデルさんに薬草茶を戴いたら、だいぶ気分が楽になりました」

 カップが、ソファーの前のテーブルに置いてある。あの強烈に甘い……いや薬草茶だから違うのかな?


「それで、アデルさんは?」

「あの方は、ギルドに戻られました」

「そうか……」

 ありゃ。

 明日にでもギルドへ礼を言いに行こう。


 ソファーの隣に座る。

「それで、これを預かっております」

「ん?」


 大銀貨8枚および小銀貨2枚。それと折り畳まれた紙を受け取った。

 買う物があると言ったので、ギルドで小金貨を1枚渡した。余ったら、アデルさんが受け取ってくれと言ってあったのだが。この分だと18セルクしか使っていない。

 要するに、金を受け取ってくれなかったのだ。


 紙の方は。広げると、書かれた文字がぱらぱらと日本語に変わった。

 これは、リーザに買ってやるべき物のリストだ。

 ご丁寧に売っている店名とその通りと番地が書いてある。この町は、基本的に放射状の通りと環状の通りで構成されているので、わかりやすい。


「ああ。アデルさんは、親切だな」

「はい。とても親身になって下さって、色んなことを教わりました」

 そうかそうか。


「初めて会ったのに、なんだか昔から知っているような……」

「そうか、よかったなぁ」

 同じエルフ族というのもあるのだろう。

 肯いている。


「それと」

「ん」

 大きな瞳が上目遣いで、俺を見つめてきた。本当にかわいいな。


「ケント様にもお礼を申し上げるようにと」

「俺に?」

「私のことを、アデルさんに真剣に、そして懸命に頼んでくれたそうですね」

 (にじ)り寄ってきた。


「ああ、まあな」

「ありがとうございます」

「いやいや。大事な相棒のことだからな。当たり前だ……それより、その服は?」


 よく見ると、生成りのドレスみたいな物を身に着けている。なんか不自然な感じもするし、いつ買いに言ったのか。ここに来る時にいくつか店には寄ったが、アデルさんは持っていなかったよな。


「ああ、これは。アデルさんが、この宿から、シーツを分けて貰って」

「それはシーツなのか!」

 それで違和感が。

「ええ、ここで結んで……」

 首の後ろに結び目がある。身体に巻き付けて、あそこで留まっているのか。器用だな。


「えぇと。じゃあ、外には出られるか?」

「えっ、ええと、そのぅ。あっちの方は大体終わったみたいです。念のために処置はしましたので……」

 リーザは真っ赤になった。

 えーと。これは、セクハラではないよな?


『セクハラってなんですか?』

 アイだ。

『性的な……いや、この世界にないならいいや』


 テーブルの上に、いくつか見知らぬ紙包みが置いてある。何が入っているかは考えないようにしよう。


「あのう……今夜は無理ですが、明日にはできます」

「ん? 何が?」

「伽……夜伽です」

「うっ、いや。そういう意味で訊いたのではないのだが……まあよかった。気分が良くなっているなら、これを食べよう」

 肉串の包みを出す。


「ああ、失礼しました。退けます」

 リーザは置いてあった包みを移動した。テーブルの空いたところに肉串の包みを広げる。


「私も食べてもよろしいのですか?」

「もちろん」

「高価ですよね?」

「ん。安かったぞ、確か一本50ペリーだった」


 1ペリーは、1万円見当である1ヴァズの1万分の1。つまり、1本50円見当だ。少なくとも食料品は安いようだ……何の肉かは知らないが。

 その値段で結構なボリュームがあるし、タレが掛かり香ばしい匂いがしている。


「50ペリーも……アデルさんが仰っていた通り、ケント様はお金持ちなのですね」

 価値観に相違があるな。

「そんなこともないが。まあ喰え」

「はい……では。おいしい」

 小さい口で囓り始めた。こうして見ると高校生ぽい。何か和む。


 俺も一本取って齧り付いた。

 やや固いがイケる。全部赤身肉だな。塩と何かの香辛料で辛みがある味だ。和牛の蕩ける肉質も良いが、歯ごたえがあって、野趣溢れる(ワイルド)肉も嫌いじゃない。


 やっぱり、誰かと一緒に食べるのはいいものだ。

 それも、これだけの美少女となると、なおさらだ。


「もう一本ぐらい食べられるだろう?」

「ああ、はい。では遠慮なく」


「おわっ!」

 リーザの身体が一回り大きくなって、リザに変わった。

 思いっ切り胸の体積が増えて、シーツドレスがパツパツになっている。


「びっくりした! 変わる時は一言言ってくれよ」

「だって、おいしそうなんだもん。ああ、胸が苦しいわ」

「また体調が……」

「じゃなくて、リーザの体型に合わせて結んだから、締まっちゃって。背中の結び目を緩めて欲しいのだけど」

「ああ、そうか。待っていろ」

 椅子の後ろに回り込んで……おおう、背中がパックリ空いて露出している。ホルターネックってやつだ。綺麗な肌だな。

 おっと。


 手拭いで手を清めてから、背中の結び目を解く。

「ふぅぅ」

 安堵の吐息。


 おっ、おおぅぅ。胸元に隙間が開いて、くっきりとした谷間が……。もう少しで尖端が……

「ねえ、ケント」

「ん?」

「おっぱいは後でゆっくり見せてあげるわ。今はお肉を食べたいから、背中をそろそろ結んで欲しいな」


「ああ、あっ。ごめん」

 慌てて元のように結ぶ。

「ああん、キツい」

「悪い悪い」

 思わず力が入った。慎重に……。


「これぐらいでいいか?」

「うん。ありがとう。さて、アタシも食べよ」


 嬉しそうだな。

 食べ終わった。


 リザの嬉しそうな顔を見ていたら、あっという間に食べ終わった。


「ああ、おいしかった。やっぱり、身体を乗っ取って食べると、おいしいわ」

 もしかして、リザとしては初めて食べたのかな?


「むうぅ。いいけど、リーザと喧嘩しないようにな。それと部屋ならいいけれど、人目に付くところでは、変身するなよ」

「わかったわ」


 結局、リーザ/リザは2本で満腹となり、俺は4本食った。流石に女子は小食だ。

 辛かったから喉が渇いた。この宿には、お茶なんて気の利いた物はなく水しかない。いや、この世界では水も高価かも知れないが。ともかく陶製のピッチャーから注いで飲む。グラナードは地下水が豊富らしく、それなりの味だ。


「その服も良いが、リザの服や必要な物を買わないとな。しばらくしたら行ってみるか?」

「うん」


 アデルさんが書いてくれた店にへ行こう。

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

誤字報告戴いている方々、助かっております。


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴

2022/09/24 少々加筆

2023/09/23 誤字訂正(ID:2582126さん ありがとうございます)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ