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13話 チートの理由

良きにつけ悪きにつけ、なぜそうなのか理由が知りたいですよね。


すみません。天職とそれ以外のレベルアップに必要な経験値の比を2倍に変更します。

 大口買い取り室から廊下に出る。

「それでは」

 係官が、軽く会釈して去っていった。

「ありがとう」


「では、私もこれで、失礼致します」

「ああぁ、アデルさん。あなたに頼みたいことがあるのだが」


「私にですか? なんでしょう」

「それが。ちょっと、ここでは話しづらいのだが」

「はあ……」


 明らかに警戒している。

『ご主人様は、女と見れば、胸とか尻とか見ていますからね。気を付けた方が良いですよ、彼女達は口にしなくても、敏感に感じ取っていますから』

 うぅぅ。確かに元カノにもバレたし。


 それでも義務感なのか、何なのか。廊下を曲がり、人気のない所に連れてきてくれた。

「ここで良いですか?」


「申し訳ない。実は、昨日リーザという若い娘を引き取ることになったんだが」

「引き取るとは?」

「ああ、助けようとした奴隷商が亡くなって、なぜか相続することになったんだ」

「この世界に来られたばかりなのに、奇特なことですね。それで?」

 そりゃあ、最初はいやだったけれど。


「うん。そのう。俺には姉妹は居ないし、深い仲になった女とも同棲したことはないのだが……」

 アデルさんの表情がどんどん曇っていく。そりゃそうだ。


「それで、どうすれば良いのか、分からないんだ」

「何についてですか?」


 うっ。


「その娘が、そのう、女性特有の周期になってしまって」

「特有の周期?」

 眉間に皺が寄った。やばい。


「1ヶ月周期の……」


 アデルさんの、白い顔が真っ赤になった。

 やっと通じたらしい。


「はぁぁぁ」

 頭を振った。


「いや。彼女は初めてと言っていて……」

 手を前に出して止められた。


「それ以上は結構。状況は分かりました。念のために訊きますが。頼みとは」

「俺にはどうしてやったら良いか分からないし、ああいや、前の世界だったらなんとかなったかも知れないが。今は無理だ。頼む。助けてやって欲しい。アデルさんには、礼もする。同じエルフの子なんだ。なんとか頼む」


 俺は、深く頭を下げた。


「そこまで仰ったら断れませんね。分かりました。所長に許可を貰ってきます。しばらく、ホールで待っていて下さい」


     †


 アデルさんと一緒に宿へ戻ってきた。


「この部屋だ。ただいま」

 扉を開けると、ソファーの上でリーザが上体を持ち上げた。


「おかえりなさいませ。あのケント様。こちらは?」

「ああ、冒険者ギルドの……」

「アデルです」

 肯く。


「まあ、可哀想に」

 リーザにアデルさんが駆け寄って、抱き付いた。


「ケント様」

「ああ」

「2時間程、どこかへ行ってきて下さい」

「はっ?」


「あなたがここに居ては、できることもできません。はっきり言って邪魔です」

「なるほど。行ってくる」


     †


 仕方ないので城外に出た。魔鉱獣狩りをするためだ。


 さてどこまで行くかというと、特にアテはない。馬車も人通りも少ない街道をとりあえず歩いていると言う状況だ。

 聞いたところによると、城壁から1km以内位は、現れる魔鉱獣はごく稀なようだ。また、やはり街道沿いも少ないらしいから、街道を数km離れて、横に外れてみようと思っている。しばらく暇だな。


「なあ、アイ」

『はい。ご主人様』

「昨夜も今日もバタバタしていて、訊けていなかったが。俺には天職がないのに、体型がまとも以上になった理由は分かったのか?」

 天職がないということで、相当凹んだからな。ちゃんと訊いておかないと。


『はい。仮説はできました』

「仮説?」

『はい。元々天職レベルに体型やステータスが連動するという、定説そのものが誤解だったという説です』

「はっ? 誤解って、根本的に否定かよ!」


『ただ一般人は定説を当てはめても誤差は少ないのです。ご主人様が例外なのです』

「むぅぅ。まあいいや。それで?」

『この世界の人間は、職能(クラス)の中から生まれつき天職(モロス)を持ちます。昨日も申し上げたように、幼い頃は判然としませんが、10歳ぐらいまでには、分かるようになります。天職以外にも職能を持つ者が居りますが、精々2種まで。またレベルも天職よりが大きく下回ります』

 ふむ。


『そして、ご主人様を観察した結果、天職と他の職能関わりなく、各レベルを2乗した平均値の平方根におおよそ能力が比例するようです』

 ふむふむ。

 それって実効値(RMS)じゃないか。


「確かに、その計算式に一般人のレベルを当て嵌めると、元々レベルが高い天職だけが目立って、それ以外の職能レベルが目立たなくなるよな。その所為で天職のレベルで決まるという誤解が生まれたということか?」

『その通り、流石です』


 ふん! これでも理系だ。その程度の数学は分かる。要するに定説は、普通の環境なら、相対性理論を持ち出さなくてもニュートン力学で十分説明できたっていう状態と同じだな。


「じゃあ結局、天職なんか意味なかったということだな」

『いいえ、違います』

「はっ? どう違うんだ!?」


『経験値には関係が有るのです。魔鉱獣を斃したり、何かの行動をしたりすると、得られますよね』

「ああ」

『経験値が溜まると、各職能(クラス)のレベルが上がっていくのですが……』

 普通のゲームと同じだな。


『……ただ、天職と他の職能では、レベルアップに必要な経験値が違うのです』

「なんだと?」

『天職に対して、その他は2倍必要です』

「えっ?」

『これによって天職のレベルアップは早く、その他は遅いのです』


 うへぇ。

「嘘だろう……」

 また凹んだ……んん? 待て待て。


「じゃあ、俺のレベルアップが人より早いと言っていたのはなぜだ。矛盾しているだろう! 説明できなくないか?」

『そこです』

 どこだよ!?


『経験値は、同じ経験しても天職レベルが低いほど、優遇されて得られます。足し算を3歳児ができたらすごいものの、大人ならできて当然です』


 つまり……

「賢人ちゃんは、赤ちゃんなのにすごいでちゅね、賢いでちゅねえ。そう、言われているってことか。なんかムカつく!」


『どうでも良いお怒りは置いておいて。経験値には、天職レベルが反映されて、重みがつきます。具体的には、獲得経験値逓倍値と言いまして、(1+個人定数/天職レベル値)です』

 今、どうでも良いって言っただろう!


「ふぅん。ちなみに俺の個人定数は?」

『下限値の0.0001です。悪意を感じますね』

 あぁぁぁ……ん?


「天職レベルは?」

『天職がないので0です!』

「おおおおおおお!!!! じゃあ。個人定数なんか無意味だ! 0で割るから逓倍値は無限大かよ!」

『いいえ、不能です』

 うっ!


『どうされたのですか、そんなところを押さえて? 痛いのですか? ご主人様』

「いや、痛いのは……心だ」

 それはともかく。確かに0除算は計算不能だったな。


『はい。ですが、不能などという現象は許されませんので、例外処理が適用されて、逓倍値は一律256倍となります』

「何回も不能と言うな。そうか、でも256倍か、まずまずだな。そういえば、戦闘終了後のアナウンスで、そう言っていたな。まあ無限大倍なら、どんな雑魚を斃しても即無敵となる。確かにそれはありえないか」

 大きい謎が1つ解けたな。すっきりした。


『まずまずではありません。相当すごいことなのですよ。経験値優遇は一般に天職レベルが低い間だけなのです。しかし、ご主人様は……』

「もしかして! 天職がないから、いつまでも256倍ってことか?!」

『おそらく』


 ほぉぉ。なるほど。

 俺以外は、天職レベルが上がるのにしたがって、逓倍値がどんどん1に近付いていく。


 初めて優遇された気がする。

 あの、馬鹿天使め! 見習いと言っていたからな。知らなかったのか。俺を虐めようとして墓穴を掘ったな。ざまあない。


「じゃあ、仮説検証の意味を込めて魔鉱獣狩り(レベリング)に励むかとするか!」

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

誤字報告戴いている方々、助かっております。


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴

2022/09/22 表現変え

2022/10/07 経験値の回りくどい表記変更「得られる」→「レベルアップに必要な」経験値が違うのです。よって……『天職に対して、その他は2倍必要です』(注:結論は変わりません)

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