10話 リザとリーザ
作者の気合いが入りますので、ブックマークといいねを是非是非お願い致します。
美女が、ベッドで俺に覆い被さっている。
人相は成長したリーザに見えるのだが、なんというか彫りが深く、かつ睫が長くなって華やかな雰囲気になっている。表情の問題か?
それより何より、中身が違う気がする。
「ふーん。気が付いちゃうんだ。アタシは、リザだよ!」
「リザ……?」
「そう。もう一人の私。リーザが、何年と掛けて育んできた逃げ場」
逃げ場……。
さっぱり意味が分からない。
『ご主人様。どうやら、この者はリーザの別人格のようです』
『はぁ?』
『多重人格なのでしょう。逃げ場と言いましたから、おそらくは自分の身を儚んで、自分とは逆の人格を作り出して居たのではないかと』
……ディープな話だ。そうなのか。
「ふぅん、変わった顔だと思ったけど、よく見れば結構いい男振りだわ」
チュッ。
おっ! またキスされ……舌を入れてきた。
おおう。
負けるか!
すうぅ。
ああ、何だ。この良い匂いは?
リザの薫りが、鼻腔を貫いて頭を揺さぶってくる。
何秒か、何十秒か。互いを貪って居た唇が離れた。
「はぁ……ケントはキスが巧いのね。慣れている感じ」
「むぅ」
「さっきはリーザの初キス、こんどは……ああ、キスしたら何かアタシも好きになっちゃったかも。目の前で魔鉱獣を斬った時も、格好が良かったし」
「ああ」
「なぁにぃ? おっぱいばっかり見て、ケントったら可愛い。見ているだけで良いの?」
剥き出しの胸を、突き出してきた。
「さっ、触ってもいいのか?」
って、何言っているんだ?
相手は17歳のぅぅ……自制心が蒸発し、視界が狭窄していく。
「ええぇ。アタシはケントの相棒なんでしょ。いいわよ、触るぐらいなら」
そ、そうだな。
こんなに熟れているのだ、自然の摂理だって許しているはずだ。
それにここは異世界、条例もない!
ワケワカな理論が頭を過ぎる。我知らず生唾を飲み、僅かに褐色掛かった膨らみに手が伸びていく。
「アン……」
リザの感嘆とともに、指が丸みを歪ませた。
「やさしく、やさしくよ……まだ誰にも触らせていないんだからね」
ああ、やわらかい。
リザも興奮しているのだろう、掌に硬くなった尖りが当たる。
「あっ…………ふっ」
揉み込むと、リザの吐息が熱くなった。
「リザ……」
「うん、気持ち良いわ……んっ、あっ、あれ?」
閉じていた眼を大きく見開いた。
「おわっ!」
手の中の塊が縮んでいく。
みるみるリザの髪が短くなり、顔が少し丸くなった。
また幼女に戻るのか?
そう思ったが、そこまでは行かなかった。
「止まった」
二回りは小さくなったが、ちゃんと双丘は存在している。巨乳ではないが、胴がほっそりしているから、なかなかなカップだろう。
結局、中学生よりは、なんとか高校生に見えるぐらいの外見で若返りは止まった。
「キャッ、キャーーー」
「おっ、おおう」
慌てて飛び退いて、背中を向ける。
「ごっ、ごめん」
「あっ、いい、いいえ。ちょっと、びっくりしただけです。申し訳ありません」
「ああ、いや。大丈夫だ。ってことは、リーザに戻ったのか? ああ、これはだな……」
「あっ、リザの時のことは、憶えていますので」
「そっ、そうか。よかった」
襲ったと思われなくて。
「あっ!」
「はぁ?」
我ながら間抜けな声だ。
何か、リーザはモジモジとし始めた。
「どうした」
「あのう。申し訳ありません。夜伽は、しばらくご勘弁下さい」
夜伽って、アレのことだよな?!
逆に、しばらくしたら良いのか?
「あっ、ああ。わかった。今日はやめておこう」
よく分からないが、勢いに押されて承諾する。
「申し訳ありません」
「ああ……」
リ-ザは、なぜか小走りでトイレへ向かっていった。
「なるほど。来たのですね」
何がだ?
†
「ぅぅううう……ああ」
ふう。もう朝か。カーテンがない雨戸付窓の薄い隙間から、日の光が差し込んでいる。
よく眠れなかった。
ソファーで毛布を被って寝ているあいつの所為だ。
そのまま、起き出して身支度を調えると、外へ出た。
しばらくして部屋に戻った。噴き出てくる汗を、手拭いで拭きながら窓を開ける。
「ケント様、おはよう……ございます。こんな恰好で、すみません。気分が。こんなことは初めてなのですが」
リーザが、顔だけ出した。声からして具合は良くなっていないようだ。
「おはよう。ああ、起きなくっていいからさ。代官所とギルドは、俺1人で行って来る」
「申し訳ありません」
軽く水を浴びて、身支度を調えると、宿を出た。
ザルツホテルという看板が出ている。まあ数秒前はよく分からない文字が並んで居たのだが。昨夜は、暗くて分からなかった町並を見回す。全体的に建物は壁に日干し煉瓦を、柱や梁には木材が使われているようだ。
宿の周辺を憶えつつ、細い道一筋を出ると、広めの通りに出た。幅員が7m位有って、馬車が擦れ違える。
目抜き通りなのだろうか、石畳で舗装されており、両脇には店の看板が並んで居る。ここらは、まともな煉瓦造りのしっかりした建物だ。なんとなく中東ぽいような感じだ、まあ中東もテレビで視ただけだが。
えーと、右だ。
昨夜1回通っただけなのに、すらすらと道順が思い出せる。
『放浪者のスキルです』
「そうなのか?」
『天職が、放浪者だと困ったことになりますが。そうでなければ、中々に便利な職能だと言われています』
確かに、土地勘がすぐできるようだ。方向感覚が鋭敏になっている実感がある。
大通りに出た。
北にも南にも黄土色の城壁が見え、大通りとの交点に巨大な門がある。
つまり、このグラナートという町は、いわゆる城郭都市だ。
昨夜は、あの門を潜って入ってきたと思う。ざっと城壁の内径はざっと200m位か。
南に向かって角を曲がる。
大通りの両脇は店舗が並んでいる。
ちょっとした町とは思ったけど、人通りからして活気はそれほどないな。何の店かは分からないが、シャッターが閉まっていないのが良い。まあシャッターなんて無いけど。日本で言えば地方の過疎地にある駅前……よりはマシかという感じだ。
とはいえ、俺の居た日本と比べて賑わいを判断するのは、乱暴すぎるだろう。
ここの角を左。あった! 代官所だ。改めて見ると、石造りの立派な建物だ。無論辺りの建物に比べるとで、日本の町並と比べてではない。
近付いていくと、門番が俺を見付けて寄ってきた。
「ケント・ミュラー様。ご案内します」
「ああ、ありがとう」
三浦賢人なのだが、まあいいか。どうせ、こっちには三浦家なるものは存在しないしな。
昨日と同じ部屋に通された。
「こんにちは」
代官のアバース氏が居た。書類事務をしていたようだが、立ち上がった。
「これは、ケント様。お待ちしていました。ちょうど仕事の切りが良いので、ご一緒に冒険者ギルドに参りましょう」
ふむ。対応が良いというか、良すぎる。相当アイを怖れているなあ。
「すまない。そうだ! 女性の職員が居れば、頼みたいことがあるのだが」
「ああ、すみません。代官所には居ないのですよ。今から行くギルドにはたくさん居ますが。どうします?」
「じゃあ、ギルドで頼んでみよう」
代官と兵2人に順って、代官所を出る。
目抜き通りに出て左に進みと、直径50m程の丸い広場があった。そこを回り込んで街路を歩いていると、冒険者ギルドに着いた。
こちらは煉瓦造りの3階建てだ。
見上げると、看板があって冒険者ギルド・グラナート支部と書き換わった。
跳ね扉を開けて代官さんが入っていく。
「これは、お代官様」
1人が寄ってきた。濃紺の薄い布のベストを着ている。似たような服装が何人か居るところを見ると、制服らしい。彼らはギルドの職員のようだ。
「ああ、ギルマスは居るか!」
「はい。すぐ呼んで参ります」
「ああ、上に居るなら、こちらから出向こう!」
代官が、結構我が物顔で玄関ホールを突っ切っていくので、辺りを見回しながら続く。閑散としている。ぱっと見、銀行のカウンターみたいなのが並んでいて、奥に女性が座っている。さっきの男と同じ服装だ。
しかし、受付というのは若くて美人ってのが、ゲームでは相場だが、ここは……コメントを差し控えよう。
階段を上り、廊下を右に歩いていくと、突き当たりに重厚な木の扉がある。
文字が改変されて、支部長室と読めた。
代官がダンダンとノックすると応答があり、扉を開くと大股で入って行った。
「おお、アバースじゃないか。久しぶりだな……うぉっ、そちらの方は、まさか?」
こちらも40歳過ぎか、がっちりした体型の男が立ち上がる。
昔は相当男前だったのだろう、渋い感じの紳士だ。俺の方をぎっと睨む。視ているのはやはり俺の髪だ。
「その通りだ、ネレウス。転移者のケント様だ!」
名前で呼び合うところを見ると、結構親しい間柄のようだが。
「本当か? ああ、すみません。当支部を預かります、ネレウスです」
ギルドマスターらしい。
「本当も本当。昨夜、危うく死ぬところだったよ、はっはは……」
「ほう、確認したのか。相変わらず文官のクセに命知らずだな……おっと。立ち話では申し訳ない。転移者様。どうぞお掛け下さい」
デスクの前のソファーセットを勧めてくれた。
「ああ、どうも」
代官も俺の横に来た。
「おい、アバース。なぜ、座ろうとしているのだ?」
「はっ?」
代官は、座り掛けて止まる。
「お前は、この町を預かる身だ。暇じゃないだろう。転移者様は預かった。お前は、自分の職務へ戻れ!」
「むう。これは手厳しいが道理だな、わかった。くれぐれも粗相のないようにな! では、ケント様。失礼させて戴きます。何かありましたら、代官所の方へお越し下さい」
「世話になった、感謝する」
「では! ネレウス。また飲もう!」
代官とお付きの兵が帰っていった。
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訂正履歴
2022/09/20 申し訳ありません。特濃版見直しに伴い,4話から移動しました。
2022/09/27 細かく訂正
2023/09/15 誤字脱字訂正(ID:1576011さん ありがとうございます)