プロローグ
雨が降っている。大地が血に染まっている。死体が山のように転がっている。
そこに一人、女が佇んでいた。女は青年の死体に剣を突き刺したままぼーっとしていた。
死体の青年は少女の死体を大事そうに抱き抱えて死んでいた。
女はゆっくりとその死体を見た。その後、怒り狂ったように青年と少女の死体を突き刺し始めた。その死体は、既に傷だらけでズタズタだ。
その死体を女は無言で何時間も、何日も突き刺し続けた。
何日か経ったころ女は気が済んだのか死体に剣を突き刺すのをやめた。
死体は原型を留めていなかった。
女はその死体を見ると、口の端を吊り上げて狂ったような笑い声を上げた。
何日も、何十日も、狂った笑い声を止めなかった。
・ ・ ・ ・ ・
俺は目を開いた。そこには知らない天井が映っていた。
「糸和、生まれたぞ。俺達の子だ」
父らしき男の声がした。
「統真、私にもその子の顔を見せて」
そう言ったのは母だろうか。
俺は父に抱き上げられた。そして、母に手渡された。
「統真、この子の名前は命がいいと思うの」
新しい名は命か、悪くない。
「いいな、その名前。よし、今日からお前は命だ」
「よろしくね、命」
優しそうで仲のいい両親、そこそこ裕福な家庭。環境は最高じゃないか。これ以上何を望もうか。
だけど・・・、きっと彼女はいないんだろうな。
そうして彼女は狂っていった・・・