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第六話 美容の道も一歩から

『まあ、つまりはアンタのその野暮ったい見た目を第一になんとかしようって訳。それから心もね。アンタ、自分に対して結構卑屈でいるでしょう? 案外そういうのって、相手にも伝わるのよねえ。どうせ自分は〜とか思ってるんじゃないの? アンタだって、おどおどとしている人より、ハッタリでも堂々としている人の方が魅力的に見えるでしょう?』

「う……確かにまあ、そうですけれども……!」


 魔女のような高笑いをした後、どことなくスッキリとした面持ちになったマーリオは、まずはミーアの弱点もとい、卑屈に歪んだ心根について細やかに指摘してくれます。心に乙女を宿しているからでしょうか。マーリオの話す言葉は一つ一つが的確でした。


 対してミーアの方では、まるで見えないナイフで心をグサグサと抉られているような気さえしてしまいます。

 思い当たる節があり過ぎる。確かにいつも自分に自信が無かったし、それにつられて背筋もまるまっていた気がするもの。


「そうですよね……あっ! わかりました……! 常に強気でいれば良いって訳ですね? これからは会う人会う人、私と視線があったらはっ倒しに行ってきます! そうだっ! 早速今日から……!」

『ちっがうわよーっ! ちょっとアンタ! なんでそう言う時だけ思い切りが良いのよ……? それじゃ唯の危ない奴じゃないの! モテる前に捕まるわよ! ……はあ。まあいいわ。まずは見た目からいきましょうか? アンタにはまだ、心根の話は早かったかしらね?  ……なんだか、ごめんなさいね……?』

「また謝られた……? えっと……? 釈然としないのですが……?」


 依然として納得がいかないとばかりに首を捻るミーアでしたが、外見についての手の加え方には興味を惹かれました。彼女の周りには美容に詳しいものは居ませんでしたし、両親でさえも見た目には拘らない質でしたから尚更に。


「そ、それで……その、美容? についてですけど、具体的にはどのようにするのですか?」

『そうねえ〜』


 頬に手を当てながら、マーリオは『う〜ん』と考え込みました。目の前のこのお嬢ちゃんには、唸るような資金がある訳ではありません。やるからには徹底的に。庶民的にスマートに行うべきでしょうか。まずは———


『よっし! 今日は学園がお休みよね? 刺繍用のハンカチ、持ってるかしら?』

「はい? 古いのでしたら持ってますけど……そんなもの、どうするんですか?」

『じゃあ、早速だけど、それ繋ぎ合わせて覆面をお作りなさい。今日一日で作るのよ? それから、この辺りにも薬草が採れるわよね? 今から教えるもの全部採ってきてすり潰すの。いいわね?』

「はあ……? わかりましたけど……」

『じゃあ朝ご飯を食べたら、早速薬草摘みへ出発よ!』


 と、本日の予定をあっさりと決めたマーリオに従いながら、ミーアは芋の収穫を終えた両親と合流し、屋敷に戻ったのでした。



 ーーー

 ーーーー



「あのう……これって、ちゃんと効果があるんですよね……?」

『あるある! 勿論あるわ? アタシを信じて頂戴? ……んふっ!』

「…………マリー様、笑ってますよね?」

『やぁねぇ! そんな訳ないでしょう? こんなにも頑張ったアンタを誰が笑うもんですか! ……んふふっ!』

「ちょっと! やっぱり笑ってるじゃないですかーー! ……これ、本当に効くんですよね?」



 お日様がすっかり顔をだし、午後の穏やかな光が差し込む部屋の中、古びてだいぶガタがきている鏡台の前に座る芋っこ令嬢と、その隣でふわふわと浮かびながら明後日の方向を見て笑いを堪える半透明のオネェの姿がありました。


 令嬢の方は顔に密着する部分だけを薬液に浸した覆面を被っています。顔だけ緑の怪しげな色に染まる、野草の香り漂う怪しい女。今の彼女の姿をみたら、きっと誰もが警備隊へと通報するでしょう。


「もう! こんな格好までして効かなかったらいくら私でも怒りますからねっ!」

『あら〜! 大丈夫よ? アタシを信じて頂戴? なにしろこの組み合わせ、現役時代のアタシが実際試して効いた配合なんだから! 効果は間違いないわ?』


 まずは肌質の改善から、という訳で、マーリオが昔行っていたという薬草パックから美容の特訓は始まりました。千里の道も一歩からというように、美容の道も1日にしてならず。


 何事も投げ出さずに、コツコツ出来ることから始めて見る事。一見地味なこの作業ですが、毎日地道に頑張れば、一月後には効能が出るのだとマーリオは言います。


『後は……さっきのノラ仕事? かしら。あれ毎日やってるんでしょう? お肌が日に当たったら元も子もないんだから、出来るだけツバの広いお帽子と顔に布巾でも巻いときなさい? アンタは日に焼けて肌色がマダラになってるんだから、明日から絶対やるのよ? いいわね……?』

「あ、はい……」


 流れるように指示をだすマーリオに、ミーアはただただ頷きます。ちなみにこの覆面、半刻はお顔に貼り付けていないといけないらしく、流石に両親に見せる訳には……! と切に思ったミーアは鏡台の前を動けずにいます。


 待っている間というのも結構暇です。そういえば……自分の事を先にやってもらっているけれど、マーリオの願いである思い人について詳しく聞いていなかったな、とミーアは思い出しました。


「あのう……マリー様のお慕いしている方って、どんな方なのですか?」

『やだぁ〜! それ聞いちゃう? 彼はね、すっごく素敵だったのよ?』


 聞かれたマーリオは顔を綻ばせ、瞳をキラキラと輝かせました。大層その想い人が好きだったのでしょう。恋する乙女のように両手を合わせながら、ほう、と夢見心地でマーリオは口を開きます。


『今でもあの時の事を鮮明に思い出せるわ……! 彼とはね、アタシが縛られていた例の図書室で出会ったの』


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