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目覚

(熱い‥。苦しい息が‥。早く、楽にして‥)


熱くて、息が出来ない。早く意識を無くしたい。


助けて、お父様、母様、兄様。


‥様、お嬢様‥


「お嬢様、おきて下さいまし!リサです。お嬢様!」


う‥リサ‥何?天国?地獄? 

薄ら、目蓋を開けると若い女性が涙目で覗き込んでいた。大きく揺さぶられ、此処は何処?回りを見渡すと見覚えのある自分の自室。ここ1ヶ月は、部屋と言えば牢獄の壁しか見ていない。夢?どっちが、今、それともあの悪夢が?


部屋にいる女性は、自分がよく知っている幼少時代から処刑される迄の間、自分に付いてくれた侍女のリサだ。変ね、リサが若返ってるわ。30歳になり既に子供も二人いたと思ったけど、今のリサは何処から見てもまだ初々しい15か16ぐらいの少女に見えるわ。キョロキョロあたりを見渡すと確かに自分の自室には違いないが、何故か違和感がある。飾ってある物も本棚も幼少時代に使っていた物ばかりだ。


「お嬢様、ひどくうなされていました。何か怖い夢で

も見たのですか?あまりにも酷いうなされ方だったので、起こさせていただきました。」


「夢‥。夢だといいのだけど。私は、どうやって戻って来たのかしら?誰かに連れて来ていただいたのかしら?それとも‥」

と、ブツブツ呟いていると、リサの表情が段々青ざめていき


「お嬢様!お気を確かに、誰にも連れて来てもらうこともありません。確かに昨晩からお嬢様は、このベッドで過ごされておりました!お医者様をお呼びいたしましょう?いえ、奥様に先に報告を!いえ、旦那様にも‥。」

リサが慌てて部屋から出ようとし、私も慌てて止めにベットから飛び降りリサのスカートの裾を掴んだ手を見て驚いた!小さい。そして、リサが余りにも背が高い。ではなく、自分が小さい?

「リサ、その、待って。大丈夫よ。怖い夢を見てよくわからなくなっただけ、あの、その、えっと姿見よ姿見を持って来て。」

と、取り敢えずリサをなだめ今の自分の姿を確認する事にした。


姿見に写った自分を見て息を呑んだ。そこに映されていたのは、金髪で新緑の瞳のまだ、5歳ぐらいであろう幼女の立ち姿だった。正しく自分の幼少時代の姿である。深呼吸を何度したであろう。少しづつ状況を噛み砕いていく。死んだはずの私は、5歳の子供の頃に戻ったらしい。リサが若返ってるのと、本棚や部屋の装飾を見ると昔に戻って来ているようだ。

恐らく、過去に戻ったらしい。もしかして処刑になるまでの17年間が、夢だったのか。今の私の記憶は、余りにも鮮明で夢にしては膨大だと思う。考えられるのは、過去に転生した。誰が信じる?幼女の話など誰もが空想の世界だと思うだろう。気がおかしくなったのではと、それこそ一生病人扱いだろう。

「リサ、お父様、お母様、兄様は?」

と、恐る恐る聴いてみると、

「旦那様はご公務の為、王都に出かけております。奥様とアレク様は朝の支度後、お嬢様と朝食を召し上がる予定ですが、お嬢様がご気分がすぐれないようでしたらお伝えしますが‥」

「いえ、すぐに支度してすぐに会いたいわ!」

リサは、やはりまだまだ甘えたい盛りの幼い少女だと思ったのかにこりと微笑み支度にとりかかった。

胸の高まりが治らない。あれだけ会いたかったお父様、母様、お兄様に会える。沸き立つ心を押さえるのが精一杯だった。

ミュゼットの緩やかなウェーブのある髪にブラシを当て丁寧に梳いていくリサ、


「お嬢様、今朝ほどは酷くうなされておりましたが、体調の方は、良くないのでは無いでしょうか?本日の授業は、変更してはいかがでしょうか?」


一層の事、全てを話してしまおうか?信じてくれるだろうか?今のこの自分でさえ夢にいるとしか思えないのにどう、説明すればいい?王太子の命で処刑されました。そして、今、過去に転生しました。


無理だわ。きっとそのまま、病人扱いね。


「いえ、予定通り授業は受けるわ。たかが夢だもの。お兄様にきっと笑われるわ。」


「アレク様は、お嬢様を笑う事なんて決してありません。そうですね。恐らく本日より一緒に寝ると言い張るでしょうね。」


「きっと、そうね。」


「お嬢様は、少し周りの方が特殊な方に囲まれているせいでちっとも5歳のお子様に見えません。

お嬢様のお年の令嬢ならば、それはもう我儘言い放題の花よ蝶よと浮かれてもいい年齢でございます。悪夢で魘されたのなら、思いっきり奥様にしがみついていい年なのですよ。きっと、奥様ももちろん旦那様もさぞかし目が垂れてそれはもう、とろけるぐらいの‥。(中略)‥ですよ。」


「リサ、手が止まってるわ。支度を進めて頂戴、お母様とお兄様を待たせてしまうわ」


と、言いながらもこの幸せな会話を噛みしめていた。長い金髪のサイドを編み込みしハーフアップに結い、爽やかなモスグリーンの膝丈のワンピースに着替え食堂へリサと共に向かった。

食堂に着くと、お母様とお兄様が丁度席に着く頃だった。

思わず涙が溢れそうになった。

「母様、兄様」


「ミュゼ、おはよう」

兄様も母様も優しい笑顔で挨拶してくれる。何度も何度も見たいと思った光景。

「おはよう‥ございます。」


「ミュゼ?顔色が悪いわ、何処か悪いところは無い?」


母様が、心配そうに覗き込む。母様は、元辺境伯爵令嬢であり見事な銀髪にバイオレットの瞳を持つ、二人の子がいても今なおその美貌は、衰えない。辺境地育ちでもある為か、並の男性よりも剣術、馬術特に弓は得意としているらいしい。弓を引く姿に父は惚れ込んでしまいそれはもう、語り尽くせないアピールで母様と結婚出来たと未だ、事ある毎に聞かされている。 


「どこも悪いところはなくてよ。母様。きっと、お腹が空きすぎたのかしら」


「ミュゼ、きっとこの兄様と一緒に寝てないからかな?やはり、今夜から兄様が添い寝をしないと。」


「アレク、もうあなたは10歳になります。妹と添い寝なんて許しません。ミュゼ、添い寝なら母様がしてあげます。貴方は、まだまだ甘えたい年、遠慮はいりませんよ。お父様も、きっとミュゼが寝室に来たら泣いて喜ぶ姿が目に浮かぶわ‥ふふ」


「母様、ミュゼはまだ5歳、いくら私が10歳になったといえなんの問題もありません。妹を思う気持ちを分かっていただきたい。」


兄様アレクは、髪と目の色以外は、お父様譲りの姿。目は野性的でありますが、背も年の割には高く女性よりも美しい美貌を持ち魅了してやみません。

優しい姿でありながら鋭い視線は、やはりお父様の血を引いてます。


朝食を終えて、家庭教師により本日の授業がはじまった。前世で、全て習った事ばかりで少々退屈でしたが、今の自分の時代の把握と今現在、状況を把握するのに思わず気を取られ、先生方々が帰られる時には真っ青の様子。


「ミュゼット嬢を侮っておりました。5歳の知識、思考とは思えない。明日から、カリキュラムを変更しなければいけません。アレク様も素晴らしい才能ですが、ミュゼット様もまた素晴らしい。」


と、早速と慌てて部屋から出て行ってしまいました。










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