王子様は孤独です
昨日の母様の思惑は、別として王太子殿下に近づく口実が出来ました。当時の殿下の記憶に全く無いのはどうもお父様と兄様の仕業だった事は分かりました。
前世では気づいていない事もまだまだありそうですね。
今朝は、リサから昨晩、王太子との件の事を知ったお父様と母様のやり取りの詳細に教えてくれました。どうもお父様、始めは頑張って母様に抗議したらしいのですが。結局のところ言いくるめられ「そんな小さな事でグダグダ言う殿方は嫌いです!今日から寝室は別々です!」と、言われ渋々折れたとの事です。お父様、少し可愛そうです。
それにしても、侍女の情報網は凄いです。
さて、王太子殿下とどう接しようかと考えます。まだ外見は5歳児なのでやはりここは子供らしさをアピールして‥‥。5歳児って、子供らしいて‥‥。困りました。兄様以外と遊んだ記憶がありません。兄様様も子供らしく無いと言われてますよね。
「リサ、私って、子供ぽっい?」
「お嬢様が子供っぽいなら王太子殿下は赤子ですね。」
「ねぇ、リサ、私とその辺の子供ってそんなに違うの?」
「それはもう、お嬢様と同じ年頃の子はもっと好きな事好きな時に話して手に入れるのが不可能な物でも欲しい物は欲しいと強請るのが普通です。アレク様もそうですがお嬢様も聞き分けが良すぎるかと思います。」
さっぱり分かりません。我儘いうほど不満ないし欲しいものを人に強請ったところで手に入るのでしょうか?自分で手に入れられないなら他人でも難しいのではと思うのですが‥‥。
考えても仕方がないので取り敢えずは我儘とか言った方いいのね、ある程度の事までは許されるなら精一杯子供を演じなければいけないですね。
ドアのノックの音とともにアルバートが入って来ました。
「ミュゼットお嬢様、殿下がお呼びです。お庭の散歩をご一緒されたいと言われてますが‥‥。」
「アルバート、すぐに行けるわ。」
「畏まりました。本日は、私とリサがご一緒させて頂きますね。」
アルバートも一緒になんて珍しいですね。
心が強いです。
一階の庭に出れるテラスへ行くとまだ、陛下は来ていないようです。
「間もなくお越しになるしと思いますので、あちらの椅子で座って待っていましょう。」
アルバートに誘導されテラスにあるテーブルセットに腰をかけます。
「ねぇ、アルバート子供らしいてどう事を言うのでしょうか?」
アルバートは表情は全く変わりませんが瞳孔が少し開いたのを見逃しませんよ。驚きましたね。少し考えて
「お嬢様、それは今から殿下に対してのご対策でしょうか。中々、良い考えとは思いますが残念な事に私には子供らしい子供は殿下だと思ういますが。子供に子供の演技は通用するのでしょうか?」
「アルバート、わかったわ。殿下のように自分の事ばかり言えばいいのね。」
リサが小声で(二人とも殿下をデスッてる。)と言ってたみたいですが、そんなのはするーです。
アルバートは困った顔をしましたが、
「お二人とも、子供ですと会話が成立しない可能性はありますが、少々、思った事を言っても許されますよ。」
「そうかしら‥‥。」
と話していると何やらゾロゾロとやってくるではないですか。
「ミュゼット嬢、お待たせしたね。」
殿下とお付きの人と近衛の騎士さんに囲まれてやって来ました。
「ご機嫌よう殿下、今日はその‥大勢なんですね。」
殿下は周りキョロキョロしながら回りを不思議そうに見ています。
「誰もいないが‥‥。」
う、言ってもいいのでしょうか?子供らしく、子供らしく‥‥。と、言い聞かせて。
「騎士様達、あまり近くて拝見した事が無くて‥。」
「怖いのか?」
怖くはありませんが、散歩ごときにゾロゾロと少し鬱陶しいです。コクリと頷いてみましょう。
「そうか、ミュゼット嬢はまだまだ、小さいし近衛をあまり見たことがないのか、お前達、20歩くらい離れろ。」
やはり、連れて行くのですね。ゾロゾロと‥‥。
目の前に何やら手が‥。ああ殿下の手ですね。エスコートしていただけるのでしょうか?
「では、行こう。」
断る理由もないので手を置きます。殿下の耳が真っ赤ですが、熱でもあるのでしょうか?
「ミュゼット嬢はまだ幼いので理解出来ないかもしれないが私は将来国王になる身、いわゆる第一王子であり第一王位継承権持っておりらうらの国では特に重要なそんざいであり、将来、私と結婚するものは王太子妃という存在であり《中略》と、言う事だ。理解出来なかったかも知れないが、ミュゼット嬢にはよくよく知っていて欲しい。そして‥‥。」
まだまだ、続きそうでいい加減にソロソロ切り上げ良いでしょうか?後ろについてた、アルバートに顔でサインを送ると頷きます。
「殿下、私には難しいし過ぎでちょっと‥‥。もっと今より大きくなったらもう一度お話して欲しいです。私、殿下の事聞きたいです。そう、殿下のお友達のこととか、王妃様の事とか、聞きたいです。」
いい過ぎましたか?殿下固まっていますよ。
「私は王太子であるから、特別に仲かいいものはいない。母上は、王妃であるからいつも忙しいので中々会わないが私は寂しくはない。王太子だからな。」
あー、寂しいのですね。いつも、おひとりなんですね。だから、取り巻き令嬢とか近衛の騎士さんを連れているんですね。幾ら人に興味のない私でも分かります。でも、ここは少し持ち上げましょう。何としてもまずは処刑は逃れたいですものね。
「では、殿下は私と一緒ですね。私も、屋敷からはあまり出てないので同じぐらいの子供と遊ぶ機会がなくて、では、殿下が私の友達なって下さい。」
友達は、処刑にしませんよね。と、言う意味を込めて見つめました。
「友人かぁ。友人よりも‥。」
更に、じっと見つめます。更に目もうるわせて、もうひと押しです。
「あっ、いや、まだ幼いそなたなら友人からだな。今の段階は友人で良い。特別にそなたを私の友人にしてやろう。」
お友達には、優しくしなければいけませんよ。お友達に処刑を言い渡してはいけませんよ。お友達の家族にも優しくいたわってあげないといけませんよ。
私はこの時、処刑の回避に気を取られ別の回避をすることをすっかり忘れていました。




