王太子について語らう
屋敷に着くと玄関扉の前には、アルバートと侍女達が3人お爺様の執事ランスが私たちの帰りを出迎え来ました。ランスは50半ば程のアルバートに年を重ねた感じの方です。冷たい感じのイケメンさんですが隙は一切ありません。そこはアルバートと共通事項ですね。アルバートよりランスの方が先輩執事なのでランスが先に声を掛けてきます。
「お帰りなさいませ、オーランド様。」
「うむ、商会の契約書等は、昨日、指示した通り見直しが出来たか?」
「はい、オーランド様がおしゃっていた通り、既に公爵様が、見直し後の契約書は出来ておりました。」
「ヨハネの奴の事だ抜かりない準備をしてたのであろう。」
「なら、こちらの用事はほぼおわってるな。ランス、王都に急用が出来たな。明日には出発したい。」
「明日ですか?しかしながら宜しいのでしょうか?せっかくご子息様達と過ごされる予定でしたのに‥。」
「良いのだ。まぁ、久々にランスにも動いて貰わないといけない事も出来た。後で私の部屋に来てくれ細かい話をする。アルバートも一緒に来てくれ。」
「畏まりました。」
ふたりは、息ぴったりの返事をします。
そしてお爺様は、朝早く屋敷を立ちました
予定より早く出ていかれるので、流石にお父様も難色を示されていましたがお爺様は、気にも留めず行かれました。
寂しいです。が、きっと転生した事での用事なので文句は言えません。
その日の夕食時ですが、王太子殿下の話題になりました。お父様が話題を切り出しました。
「二週間後の王太子殿下の訪問は対話であると思うが、趣旨としては王族の親戚としてのご訪問となっている。アレクとミュゼは又従兄弟の関係だ。仲良くしてやって欲しいと言うのは私も願いたいところだが‥‥‥。」
お父様も母様もとても難しい顔しています。前世では婚約者と言えども殿下と私は一線置いた関係でした。
と言うのも王妃も王太子殿下も外国語が苦手であったらしく外国からの訪問がある度に接待は、私が呼ばれてましたのでその内、料理から部屋の準備の相談まで持ち込まれ毎日、宰相の方に連れ回される日々でした。
殿下と話したのは、入城の時の挨拶と夜会開始のエスコートと夜会等の時は婚約者のダンスは一回は踊らなければいけないのでその時ぐらいです。後は直ぐに宰相の方が私を接待の方へ連れていかれてしまいます。
なので、顔を知っていても王太子殿下の事は、良くは知らないと言うのが事実です。まぁ、イケメンさんだった事は覚えていますが、あまりいい印象ではなかったので話さなくてもいい状況は都合が良かったです。
小さい頃もご訪問は何度かあったようですが、余り覚えていません。当時の私は全く興味がなかったからだと思います。
「アレクは何度か会ったことがあるから知っていると思うがミュゼは、知らないであろうが少々、難しい方だ。心して迎えなければいけない。まぁ、年も近い事もあるからアレク、頼むぞ。しかしながら王太子とは言え平伏する事はない。相手の理不尽な要求を飲む事はない。その時は拒否をしても構わん。ただ、無駄な揉め事は避けてくれ。いろいろ面倒だからな。アレク、お前なら上手く交わせると思うがミュゼに火の粉がかからないよう、兄として守ってやってくれ。」
お父様、分かりやすいです。つまりは王太子殿下は我儘なのですね。肝に銘じます。兄様は心配そうに私を見つめます。
「ミュゼ、兄様は心配だ。ミュゼ程、可愛いらしい令嬢は、王都にはいない。お父様、きっと、あの王太子殿下は‥‥お父様!一層の事、ミュゼはノアル叔母様の所に避難した方がいいです。今からでも遅くないです!」
「義姉様のノアル夫人のところかぁ。アレクそれはいい考えだ。ここからだと半日程度、ちょくちょく様子も見に行ける。」
お父様、兄様そろそろ止めないと、まずいでよ。今まさにお母様が切れようとしています。
「いい加減になさい二人とも!王太子と言えどもまだ9歳ですのよ。特に貴方!仮にも元王位第一継承者であったオーランド・ブルーラー元公爵の子息であり現公爵でありながら娘、一人も守れず我が姉上を頼るなんて情けない。アレクも年だけが上で妹すら守れず、次期領主を継ぐなど夢の又夢。情けなさすぎですわよ。」
あー、撃沈ですね。お父様も兄様も顔が真っ青です。母様、正論過ぎてカッコいいですが、普段お父様も兄様も頑張っている分少しかわいそうです。
「はっはっ、少しふざけただけだ。ミュゼを怖がらせてしまったみたいだ。まあ、そのつまりは、堂々とせよ。だ。」
心得ましたお父様、お爺様とお話をして私はもう王太子殿下を怖がる事はありません。
「兄様は、王太子殿下とは仲が良くないのですか?」
「仲が良くないと言うか、やたら絡んでくると言うか、会えば分かるよ。さっきあんな事言ったけど、大丈夫、僕も父上も全力でミュゼを守るから。」
母様もう、呆れてます。
「ミュゼもまだまだ先の話ですが、いずれは社交界に出ます。あれぐらいあしらえなければ生き延びれません。お二人とも余りミュゼを甘やかさないように、いざとなれば私が間に入るのでミュゼもこれも社交界の勉強と思いなさい。」
母さまの、お言葉痛いです。何故か、とばっちり受けてた気分です。一番怒らせていけないのは母様かもしれません。