魔人族の街
えーと、うん。とりあえず隠れるか。後先考えずに実行してしまうのは俺の悪い癖だ。二度とこんな失敗をしないように注意していこう。
気配遮断を使い、近くにあった岩陰に身を隠しながら街の様子を伺う。
が、何も反応はない。静かに夜が過ぎていく。
……何も反応は無いな。ひょっとして俺の声届いてない?それか俺と同じように気配遮断を使ってるのか?
ちょっと近づいて気配察知を使って確かめてみるか。あまり使いたくないんだよなこれ。情報過多でしばらく頭が痛くなるんだよなぁ……
気配察知を使ってみたが、僅かだが反応はある。動いている様子は無い。
ふーむ。やはり俺の声が届いて無かったのかな。結構大きかった気がするのだけど。まぁいいや。
結構街に近づいた事だし街がどうなっているかを見てみるか。念の為気配遮断を使っておこう。
街の真ん中にギルドっぽい建物があり、それを囲むように住宅街や商店街っぽいものが見える。
土地はそれなりに広いのだが、街を囲む門が無い。街の入口が整備されているだけで詰め所などの建物が見えない。
ここの世界は比較的平和なのかな?でも魔物とかいるし……
ここの街が危機的意識が低いだけかもしれない。いや、この街は独立していて交易などが無いという可能性もある。とりあえず街に入ってみて何かないか探ってみよう。
俺は街に入り、まず商店街っぽい所に行った。この世界では何が売られているか気になったからだ。が、今は夜なので商品は仕舞われている。
店の看板に書いてある文字も読めないので何が売られているか分からなかった。無念。
次に住宅街を見て回ったが、全ての家がレンガで作られており、貧富の差が見られない。しかも土地も均等に分けられていて、この世界の計量は確立されてるのだと分かった。
ちらっと家の中を見て見た。そこには親子がひとつのベッドで寝ている姿が見えた。
一見、人に見えるが鑑定してみると、
「魔人族の『鑑定』に成功しました。
魔人族とは生まれつき魔力を自在に操ることが出来る人族で、好戦的ではあるが他種族と共存している。」
へー。魔人族って言っても人と全然変わらないんだな。魔人族は生まれつき魔法が使える人ってことね。おーけー。他の家の人はどうだろう。
次々と人様の家を覗き込む変態と化し、鑑定してみた結果全員魔人族だった。
うーん。鑑定でステータスとか見れたら楽なんだけどなー。
「レベルアップボーナスで『鑑定』の権限を増やしますか?」
!?突然来たな!レベルアップボーナス?俺いつレベルアップしたの?まぁいいや。鑑定さんが更に便利になるというのなら答えは当然YESだ。
「レベルアップボーナスの確認……成功しました。
これにより、『鑑定』は『****』となりました。」
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〇LV 37
〇NO NAME
〇STATUS
・HP 950
・ATK 770
・DEF 2060
・MP 1040
〇SKILL
・『憑喰』
・『****』
・『空中浮遊』
・『叡智』
・『管理者』
・『心体操作』
・『精魂強化』
・『夜目』
・『気配遮断』
・『気配察知』
・『魔族特攻』
・『精魂操作』
・『魔力操作』
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待て待て待て待て待て
何でこんなレベルアップしてるの?
鑑定さん意味不明になったんだけど?
何でスキル増えてるの?
……魔族特攻って何?
嫌な予感がした。背中に何かがのしかかってくる。
これじゃあまるで俺が
違う違う違う違う違う違う!そんなはずは無い。俺は何もしていない!
一軒一軒見て回った魔人族達の寝顔が浮かび上がってくる。とても、安らかな顔だった。
そんなはずは無い。そうだ。俺はただ大きな声を出しただけ。それだけで人が死ぬはずがない。そうだろう?
[お、急激に力が戻ったと思ったらいい感じに魔人族の街を滅ぼしたね。これからもその調子で頼むよ。ノロマ。]
頭の中に幼い女性の声が響く。俺の行為を肯定するように。
魔人族の街を滅ぼした?何を言っているんだ?何を?
ナニヲナニヲナニヲナニヲ?
俺が?魔人族を?滅ぼした?
オレが?
あの人たちを
殺した?