第8話 入団試験6
二人は先程のナギトの士官室に戻ってきた。
「…入隊を許可する」
彼は椅子に座るとそう切り出した。
二人はあまり驚いたという表情はせずにただ淡々と彼の口から発せられる言葉に耳を傾けていた。
その二人の様子に気付いてか気付かずにかナギトは額に手をやり、ゆっくりと言葉を紡ぎだした。
「リーゼと言ったね」
それにたいして
「はい」
と、だけ彼は答えた。
「君の師は?」
「…ジェクト=オルバル」
その言葉にナギトは口元に当てていた指先を離し、立ち上がった。
「ジェクト=オルバルだと!?
シャイニングナイト、『剣聖のジェクト』の弟子だと!?」
「正確には養父ですが…」
リーゼの言葉にナギトはなにか頭に引っ掛かった。
あらゆる記憶の断片からそれを引き出し、あるいはパーツを組み合わせる。
そして、それが組み合わさった。
「おまえ達はまさか!?
『ソード』なのか!?」
「「はい」」
二人は異口同音に答えた。
ジェクト=オルバル。
ディジフェニア帝国の騎士最高位『シャイニングナイト』の称号を持ち、王国や小国家を含む国家群で数人しかいない剣聖と呼ばれる者である。
ただし、剣聖の者はめったに公の場に姿を表すことはない。
ジェクトは何年か前から孤児を引き取りはじめた。
その中でも武に秀でた子供ーー特に剣技―――を徹底的に鍛え上げていた。
その子達のさらに精鋭四人をジェクトは『ソード』と名付けた。
その子供達はここ数年ジェクトの令により小国家に行き、紛争鎮圧や民を襲う山賊、海賊討伐を行なっていた。
「なぜ、来たのだ?」
当然の疑問だ。
「国境付近にて戦の兆しあり」
「?!」
ファルは世間話をするかのように呟いた。
帝国暦112年。
いまだ乱世の足跡も聞こえない初夏のことであった。
とりあえず、試験編終了