第5話 入団試験3
ナキとファルはお互いに正面に向かい合い、礼を交わした。
無言のまま視線を合わせ、ゆっくりとした動作でファルは腰に下げている鞘から剣を抜いた。
同時にナキは左手に鞘を持ち、これまたゆっくりとした動作で右手で剣を抜く。
ナキの剣は片刃剣で正規兵が扱う剣よりやや小さくできている。
一方のファルの剣はナキが持つ剣とほぼ同じ大きさだ。
ただ、違う点は両刃で厚みがややあることのみ。
二人の身長は女性ながら高い部類にはいる。
身長差はさして違いはないことからリーチも違いはない。
「いきます」
そう言ってナキは鞘を放り投げながら一足―――否、飛び込んだ。
「……!」
驚きを隠せずにファルは後手に回ってしまった。
一瞬にして間合いを詰めたナキはまず、小手調べに剣を左に切り上げた。
甲高い音とともにファルはそれを防ぐとすぐさま返す剣で横へ薙ぐ。
後方へステップしてそれを交わしたナキは次にファルの首元へ刺突を繰り出す。
左へ体を斜めに傾けながら剣で防いだファルは刺突で隙を見せたナキの右側から左へ切り上げる。
それを後方へ飛びながら剣を刈る。
その衝撃に態勢が崩れ、直ぐ様構えるのとナキが着地するのは同時だった。
着地したナキは半身になり右手でのみ剣を持ち、腰を軽く落としていた。
「……」
(強い……まったく剣が当たる気がしない)
無言のナキがより一層ファルへプレッシャーを与え、剣を持つ手が自然と力が入る。
(……上には上がいることはわかっていたがこれほどとは)
ファルの頬を汗が滴り落ちる。
一方のナキは一切の汗をかかず、無駄な力をこめずファルの動きを見ていた。
(しかしその眼、気にいらない……なら!)
今度はファルがナキへ飛び込んだ。
度重なる袈裟斬り、切り上げの連続斬りを繰り出すが全て打ち払われていく。
「くっ!」
「終わりにしましょう…」
ファルの声とナキの声が重なったと同時にファルの剣が床に叩き落とされた。
ナキの剣がファルの喉元に突き付けらる。
「待て!」
そこにはナギトの声を聞くことなく脱力し、床に膝をつけた彼女の姿があった。
女性同士の個人戦