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5・説明したりされたり

 俺の説明もこれで3回目。っても、殆ど司会の爺さんが説明したから単なる繰り返しに近かったけどね。


 一通り説明したら、末席のうち一人が呼ばれてコの字の内側から屈み歩きでやって来た。スマホを見せろと言うことらしい。


「失礼致します」


 そういってウヤウヤしくスマホを受けとるが、当然ながら何して良いか分からんわな。そこで扱い方を教えると、豊音ちゃんや義父とは違い、結構すんなり理解してくれた。


「これはなんでしょうか?」


 見せられたのは電話帳。連絡先を登録出来ると言ったら感心していた。ついでにメールとSNSも教えたら二度びっくり。


「会話に文字通信・・・」


 更に弄って電卓を発見し、勝手に騒いでいる。


「け、計算機が何故こんな小さい箱に、しかも複数種類も出来てしまうとは・・・」


 非常に、理解力があるというか・・・


「ん?」


 カシャッ

「し、失礼しました!」


 カメラ作動させたらしい。音がしたから壊したらと思ったらしいが、そうではないと説明すると落ち着いてくれた。


「おい、弄るばかりでなく、それがどんなものか分かるように説明せよ」


 横からそう声がかかり、ようやく我に返る技術者。


「失礼しました。まず、この箱は説明のあった、会話以外に電信も可能で撮影機までくみこまれており、さらに計算機まで付属しております」


 まあ、驚愕している末席の技術者以外は理解が及ばないらしい。


「会話とは誰と?電信とは何だ?撮影機だの計算機だの、そんな小さな箱に入るわけなかろう」


 まあ、それが正常だよね。


「会話と電信については我が国を含め、いくつかの国で研究が進められている連絡装置です。電信は既に有線においては検証試験が成功し、無線式の構想が進められているところです」


 この世界はどうやら19世紀中頃の地球程度の発展を遂げているようだ。


「ほう、電信というものは既に目処が立っているのか。ならば、何十年かしたらそれは出来るのだな」


 別の一人がそう発言する。


「それは無理だと考えます。この大きさには100年でも無理かもしれません。撮影機や計算機となると更に100年や200年は必要になるやも・・・」


「おい、そんなところにどうやって計算機を嵌め込むのだ?歯車数個ではろくな計算は出来まい」


 最初に発言した人物がそう否定する。確かに、アナログコンピュータと言われる歯車計算機はここに入るわけ無い。俺の時代でも無理だよ。


「ここに入っているのは我々の知る計算機では無いようです。電気を利用する未知の理論が使われていると思われます。まず、その理論を導きだし、必要になる器機を開発する必要があります」


 電子計算機が開発される100年前じゃ理論からして無いのか・・・


「ただ、我々が既に手にしている物もあります。この照明です」


 そういってライト灯ける技術者。イヤイヤ、LEDなんて150年先でっせ。

 と、俺は思ったのだが、技術者は違うようだ。


「これは我が国だけが手にしている照明と同じモノです」


 そう言ってのけた。何を言ってるのかワカラナイ


「すいません、その照明は私の世界でも初期の赤色の実用化が50年前、白は青色の開発以後なので、まだ20年やそこらの筈です。照明として初めて開発されたのは100年ちょっと前の真空球内で電極を光らせる白熱灯だったんですが、こちらにそのような装置は無いんですか?」


 技術者が俺の話に食い付く。


「そうなんですか?真空内で電極を光らせるのならば、焼損に時間的猶予が出来そうですね!早速やってみます!そのすまほの照明と同じものを我々が開発出来たのは、きっと偶然ですよ。たまたま、荘内島のサヌカイトから精製した物質が白色発光しただけです。我々もまだ、白と赤しか発見出来ていません」


 うん、イミフな単語が混じってる。俺は知ってるよ、サヌカイトって石器の材料ではあってもそんな鉱物含んじゃいないって。きっとこの世界は少し地球と組成が違うんだろう。地名が同じことはスルーしよう。だって嫁の名前は豊音だもん・・・


 この世界は既にLEDがあるらしい。それ以外はだいたい19世紀中頃で間違いない。今、電球の発明者が変わったのかもしれないが、異世界人の俺には関係無いだろう。LEDがあるのならと、技術者にスマホの充電電源を用意できないか聞いてみた。


「交流100Vですか?そんな低いのであれば用意出来るかもしれません。一度、充電器機をお貸しください」


 と言われたので明日にでも取りに来てもらうことにした。ん?何で普通に地球の単位が通用したんだろ?

 後でわかった事だが、俺は単位を変換して理解、伝達出来るらしい。文字と単位の違いから口頭でなければ変換して伝達出来ないのは不便だが、俺も相手も困らないのだから問題はない。


 大半の人はなに一つ理解が及ばないまま、俺はかなり未来の技術を持つ世界からの闖入者とだけは納得してもらえたらしい。さて、これで話は終わりだと思ったら終わらなかった。


「皆、彼の事はわかったな。では、もう一つの話だ。既に知っての通り、彼は『伝承の者』だ、伝承にある通り、巫女の検分に叶い名を知る者と相成った。通常とは違い、婚儀の結い前に巫女の名を知り、我が国の者ではないために、御前として得るべき知識が無いだろう。まだ婚儀の結いには半年は掛かるだろうが、我が国の歴史程度はこの場で高鉢公にお授けしたい」


 公とは大きく出たな。公爵?それとも大公?何れにしても実感湧かんな・・・


 で、教えられた事をザックリ言うと、2000年前に巫女の祖先一族がこの国を治める様に神から御神託が下り未来、或いは異世界から超越した知識と技術を持つものが現れたのだそうだ。


 その者が一族を助け、この国を統一したらしい。それから500年ほどは何もなく平和だったそうだが、突如、海面上昇が始り、海面上昇が500年前に安定するまで河口の扇状地を中心に150m近く海面上昇が起き、一気に平野が狭くなったそうだ。しかし、伝承の者が都を高台に置き、主要な拠点街もそうするように指示し、街造りもその方針で行われたため、国の発展はかなりペースが遅かったらしい。


 海面上昇が起きるまでに、伝承の者が伝えた技術も西の大国に並ばれた様だが、西の大国は古代文明以来の扇状地文明であり、海面上昇で国が混乱、これは世界規模での混乱で、それまでの文明地域の大半が流民と化し人類の発展は停滞したらしい。東も混乱はしたが高台に主要な街を構えていた事で海面上昇の影響は少なく、発展速度は遅かったものの、他地域が混乱するなかで着実に発展を遂げた事で、今や世界最先端に数えられるらしい。


 対外面では、200年前に海面上昇で島となり大陸から切り離された山地帯に進出し、今では特徴が台地形状のため、屋島と呼ばれている。広さは北海道程もあるらしく、ここからは石油や鉄鉱石が産出されている。この国はまるで香川県を40mくらい水没させたような形状で、屋島はマンマ屋島が北に移動し巨大化した感じ。アマゾンだかのテーブルマウンテンみたいな感じだろうか?


 東自体は平穏なのだが、海に沈んだ西の大国は扇状地にあって唯一沈まず九州くらいの面積がある島、中という国と元々扇状地ではない成立ちだった南の基、扇状地から都を西に移動させ続けた統、の3か国と北の草原地帯を支配する遊牧民ウルムが争っており、東にも将来的影響が懸念されている←イマココ


らしい。伝承の者という立場の俺に出来ることはこの時点ではよくわからなかった。

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