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4・お迎えとこの世界

 嫁が突っ伏してまだブツブツ言っている間に朝食が来たようだ。


 団子?だった。餅ではないと思うが、モチモチした食感だ。豊音ちゃんに聞くと芋を潰して作るらしい。一緒に出されたタレというか何かをすりつぶしたものをつけて食べる。あんこではないが、豆系だと思うよ?きな粉好きな俺の勘に過ぎないが。


「そうだ、父に話を伝えたからもうすぐ来るとおもう。来たらあれを持って会ってきてくれ」


 豊音ちゃんから記憶から抹消した懸念事項が放たれた。固まる俺、不思議そうに見る食いしん坊。口のまわりを拭きなさい。19でそれはないわ~


「見も知らん馬の骨に娘はやれんと怒られない?」


 漫画知識のテンプルを聞いてみる。


「婿の来手が無くて困っておったから喜ばれるだろ」

だと良いね・・・



 朝食から一時間くらいたった、豊音ちゃんは朝の儀式とかでどこかへ向かった。女官さんによると先祖と神に祈りを捧げるんだそうだ。毎日朝と日没前にやるらしい。

 っと、暇にしていたら義父が来たらしい。俺は女官さんの案内でそちらへ向かう。長い廊下の先にあった扉、その向こうに居るそうだ。


 女官はノックも声かけもなく戸を開け、俺に入るように手招きする。


 俺はそれに従い部屋に入ると音もなく扉が閉められた。う~ん、何だかよくわからんね。目の前は衝立があり、その向こうにまた扉があった。それを自分で開ける。

 目の前に座る男性。こちらを見て立ち上がった。かなり厳しい顔をしている。俺、歓迎されるんじゃなかったの?


「君が高鉢健太か」


 値踏みするように見る男性。固まる俺。


「はい」


 短くそれだけ答えた。


「私は巫女の父、三ノ宮調ととのえだ。因みに、君の名は通り名か?正名か?」


 ここでも繰り返されるこのやり取り。


「私には他に名乗る名はありません。三ノ宮さん」


 それを聞いた三ノ宮氏は「ふぅ~ん」と何やら考えてから口を開く。


「本当に違う国からの者なんだな」


 三ノ宮氏はそう納得して軽く説明してくれた。この国では、官職に就くものは本来の名前ではなく、役職名や職場のみで使う名前を持つそうだ。大人だいじんと呼ばれる貴族の場合、そもそも本名を知るのは家族だけらしい。あれか、江戸時代の武士が「丹波上総介昌明」みたいな感じに名乗って、周りが「上総介どの」と呼ぶみたいなアレだろうか。


「では、少々付き合ってもらおうか」


 そういって歩き出す。

 進行方向にまた扉があり、そこを開けるとまた部屋があり、より多くの人がいた。


「議へ向かう」


 周りの人々にそう言うと、ひとりが更に向こうの扉を開き、そこにはようやく視界が開けた空間が見えた。


「これは?」


 4トン車くらいの図体をした車がシュッシュシュッシュと蒸気を出しながらノロノロ動く。馬車の時代でなかった事に驚いている。


「車体に動力を積んだ馬車とでも言えば理解して貰えるだろうか?流石にここまで小さな機関は西方にも無いかもしれん」


 そう自慢されたのだか、俺は正直に答えた。


「大きさだけなら私の世界の車で4人乗り程度ならば、これの半分くらいでした。この大きさで人を乗せるのならば、20人くらいは楽に乗る車があります」


 義父が目を見開いている。


「そうだったか、それはかなり進んでいるんだな・・・」


 少し落胆して外をみやる。少しやり過ぎたろうか?


 この車が蒸気機関なことは音でなんとなく判ったが、大きな煙突や石炭庫が無いので聞いてみたが、石油ボイラーらしい。石炭ではないので煙突や燃料庫を小さく出来ているんだとか。液体燃料だったら何で内燃機関でないの?と思ったが、そんなものは無いらしい。


 そうこうするうちに目的地らしい。


 やはり建物は和風。目の前にあるのなんてお寺か大仏殿だよ。

 中に案内されると高い天井は見えなかった。普通の高さの1階。ここは宮と違って普通に窓がある。やはりこれが異世界でも一般的な配置なんだと安心した。


 そして、導かれるまま2階へあがり、一室に通された。

 そこそこ広い部屋で、既に多くの人が居る。ここもご多分に漏れず掘炬燵式なのは、この国のスタンダードなんだと納得した。あれ?よく見てなかったけど、1階はどうだっけ?


 さて、一応、車の中で義父にはスマホを見せて自分の状況は説明した。義父からザックリこの国について聞いたが、大人とは中央官庁の役人と大臣にあたる役職で、一応試験はあるが、ほぼ世襲らしい。豊音ちゃんが言っていた院とは、地方を治める役人が各地の行政運営や予算配分を調整するために都に置いた連絡、調整する機関の役人の事で、世襲の地方役人の引退者達が多く、地方院と呼ばれる事から所属役人を座す呼び名が院になったらしい。


 ま、どうやら外交や純粋に国政にあたる部署と内政を統括する部署が分離しているらしい。今居るのは国政を司る大臣府という所らしい。


 ずらりと並ぶ人たちは右が大人、大臣や省候、服はまさにお公家様。まあ、日本の大臣かな。左が院、服は豪商みたいな、豪華だが普通の着物な出で立ち。ザックリ国会議員みたいなもんかね。端の方に普通の着物姿があるのは俺の話を検証するために呼ばれた技術者らしい。


 こんな大勢の前でまた説明するんかいな・・・

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