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22・石油発動機の完成のハズ?

 あれから二ヶ月、とうとう石油発動機が完成した。今日は初始動。


「では、いきます」


 俺は石油発動機特有の始動方法でエンジンをかける。

 石油発動機はディーゼルやガソリンエンジンの様に勢いをつけて回すのではなく、上始点から一回振り抜くだけ。これで一発始動させる。

 初めて石油発動機にさわった時はこの始動方法を知らず、必死に回し続けて笑われたものだ。


 さて、今回もその始動方法でパンという爆発音と共に始動した。

 が、おかしい。何時まで経っても回転が安定しない。


「おかしいな。一度止めます」


 俺はエンジンを止める。まず疑ったのはプラグ。お約束のセオリーとしてプラグを外してみる。

 キレイな燃焼と言える状態ではなかった。そもそも、プラグ自体が俺の知るモノと違う。一応、熱価が極端に違う品ではないようなのだが・・・

 火花を確認してみる。う~ん。悪くは無いと思うが・・・



 次にキャブを取り外してみる。製作に多少助言はしたが、数式等は解らないので、設計図と試作品の実験でなんとか造り上げた品だ。こっちも問題が無いとは言い切れない。


 実験機器にセットしてみるが、単体テストの時と違いはない。


 お決まりの掃除や調整をしてセット。エンジン再始動。


 やはり、安定しない。


 燃料を疑うが、そもそも、二ヶ月で用意できる品はこれしかない。それに、この石油発動機自体がそんな高品質を必要としない筈だから、問題ないはずだ。



 作ってみて、何の設備も用意も無いことに今更気が付いたのは浅はかだったか・・・


 愚痴ばかり言っても仕方ないので計測機器のデータから状態の解明を図るしかない。

 とりあえず、一日目はデータ取りと作動確認に明け暮れた。



 さて、データ解析には数日掛かるというので、俺はエンジンを分解してみることにした。


「あれ?」


 この手の分解は手馴れたもので、体と頭に構造や手順は刻まれている。

 だが、ヘッドを見たとき違和感を覚えた。何気ない差なのだが、バルブとバルブシートがしっかり密着していない様に感じた。

 ヘッドを分解してポートやバルブを観察すると、本来、密着して形がついて光っている部分が一部くすんでいる。きっとガスが抜けたんだと思う。


「こりゃダメだ」


 いくらプラグやキャブを確認しても意味はなかった。まさか、バルブから圧縮漏れを起こしてるなんて・・・

 ついでにピストンも抜いてみる。


「あ~」


 シリンダーやピストンに傷はない。ただ、ピストンリングの切れ目が一直線。あまり影響は無いとは思うが、これもガスが吹き抜ける原因となりうる。


 ちょっと考えてしまう。


 そこへ、開発チームの一人が現れた。


「おつかれさまです。どうなさいました?」


 何からどう答えてよいか悩む。


「え~っと、エンジン組んだのは誰ですか?」


 まず、其処を聞いてみる。


「エンジンは私ともう一人の整備担当です」


「では、呼んできてもらえませんか?」


 彼は呼びに向かう。さて、どうしたものか・・・



 二人にエンジンを組んだときの状況を聞いて余計に悩んでしまった。

 二人とも素人ではない、新開発に抜擢されるくらいの有能な者達なのは確かだ。しかし、素人でもある。


 何をいっているかわからない?いや、これがありのままだ。


 彼らは非常に優秀な技術者で間違いない。研究開発の知識も豊富だ。

 しかし、素人でもある。



 ん?わからない?


 彼らは蒸気自動車を作った蒸気機関のプロだ。しかし、内燃機関についてはその理解も深まってはいない素人同然の状態だった。


 まず、彼らは蒸気シリンダーと同じ感覚で組んだそうだ。

 しかし、内燃機関には内燃機関なりの知識や経験が必要な部分がある。


 蒸気機関は圧力を受け止めて往復運動に変える為にシリンダーやピストンがあるが、内燃機関の場合、気密を保って圧力を受け止める必要がある。ピストンリングは設計図の問題で、リングの配置はある意味経験の部分だが、バルブの当たりは完全に理解不足だと思う。

 彼らにとっては、スムーズな開閉が最優先で、密閉性まで考えていなかったらしい。


 彼らにその辺りの説明をしながらエンジンを組み上げていく。


 解析の結果、やはり分解した時の圧縮漏れが不調の原因だと分かった。

 そもそも、吸気も一定していなかった。


 そうなると、吸気バルブの問題まで考えられる。設計図だけではわからない微妙な経験則の世界なんだろうな、この当たりは・・・


 こうして結局、バルブ、バルブスプリング、ポートの様々なデータ取りや試験で一ヶ月を要した。


「さて、これで一つ問題は解決」


 そして、再度のエンジン始動。

 ちゃんとアイドリングするようになった。


「少し回転数を上げてみましょう」


 少し回転数を上げてしばらく運転していると排気ガスが嫌な白さを帯だしたので停止した。


 エンジンがある程度冷めるまで計測データを見たりしていた。


「一度分解します」


 周りは何で?という顔をしているが、あの白煙はオイルだ。バルブかピストンかは分解しないとわからない。


 結果から言おう。シリンダーに傷があった。しかも、致命的な傷が。

 ピストンリングをばらしてみて発覚したが、ピストンリングもダメだった。


「ピストンリングが圧力か膨張に負けて破損したみたいですね。もう、このピストン、ピストンリング、シリンダーは使えません」


 周りからも落胆の声が漏れた。



 設計図さえあれば出来ると思ったら、そんな簡単ではなかった。前世じゃ町工場ですら部品の製造も出来たのに、ここでは超一流を集めても試行錯誤の真っ只中。いつ完成するんだろう・・・

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