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2・異世界らしいがファンタジー世界ではない。だと!?

 あづまと言ったJCはもう説明は済んだ気でいるようだ。


「どうやら俺は、別の世界に飛ばされたらしいな」


 落胆する俺、何故か嬉々として俺を見つめるJC。悪いな、さすがにJCは理性が許さんのだよ。


「やはり。そなた、『伝承の者』だな。我が名は豊音。よろしく頼む」


 うん、いきなりどうした?ってか、そんなに身を乗り出すと見えちゃうよ?控えめなアレでもさ。


「とよねって言うの?俺は高鉢健太。よろしくな。」


「けんた、か。よろしく。豊音は豊かな実りの音という願いが込められた正名だ。そなたの正名はどんな願いが込められているのだ?」


 しょうめいって何だ?多分、豊音なんだな。日本に似た国だから、漢字か、それに近い文字が使われているんだろうな。うん、そうなると異世界あるあるを聞いて見なきゃならん。


「この世界に魔法とかある?あと、猫や犬の耳生やした人間と獣のハーフみたいな種族とか」


 うん、察した。「魔法」の時点で何言ってるの?な目をしているんだもん・・・


「まほうとは、術師や占師の技か?中にはなにか得たいの知らない力を持つと言われる者が出ては来るが、大抵は何の力も持たない者たちだぞ?そなたの世界には猫や犬の耳を生やした人間が住んでおるのか?」


 期待の眼差しを向けられたが、居るわけ無いだろ・・・


「残念だが、昔話や物語な中にしか居なかったな」


 小声で「居らんのか」と呟くのが聴こえたが、聞き流すことにした。この世界にも居ないって事なんだろうからな。


「俺さ、夕飯食ってないんだ、なんか食物もらえないかな」


 もう、逃げた方が良い頃合いだ。腹は減るし精神攻撃に疲れたから休みたい。豊音はふと何かを見た。その視線の先には見知ったアナログ時計と同じ様なモノが置かれている。時間は既に夜中、もうすぐ0時になる頃だ。


「俺の時計を見てくれ」


 俺はスマホのアナログ時計を開けて見せた。その時刻はまだ8時少し回ったばかり。時差が4時間あった。


「そなたはまだ晩の卓を食べておらんのか。わかった。余り物くらいしかないと思うが、待っておれ」


 豊音は四つ足歩きで時計の近くまで這っていく。うん、太もも見えてますよ、豊音さん?

ほどなく戸を引く音がして見ると仲居服に似た身なりの女性が現れて俺を見て固まった。


「な、何者だ!」


 身構える仲居さん。狼狽える俺。


「騒々しい。この者は『伝承の者』じゃ、それとも、その方は我が寝所に不埒者が忍び込むのを見逃したか」


 さっきまでのJCっぼい豊音ちゃんではない。他者に表情を読ませない、貴族や王族みたいな顔としゃべり方だ。


「我が警備をすり抜ける術を持つ不埒者など居りませぬ。巫女の言われる通り、尋常ならざる術を持つ『伝承の者』でありましょう」


 仲居さんは恭しく礼をし、俺を見る。


「この者は高鉢、我が名を知る者じゃ、その様に応対せよ」


 威厳と威圧ある豊音ちゃんの言葉に俺がビビる。JC相手ななんたる失態だろう。


「失礼致しました、高鉢様」


 仲居さんは再度礼をし、俺に侘びの言葉をかけてきた。


「高鉢は晩の卓がまだじゃそうでな、無理は言わんが何か用意してもらえぬか。降臨してすぐで疲れておるらしい。寝所の用意も頼む」


 豊音ちゃんは仲居さんにそう告げるとトコトコこちらに戻ってくる。いや、だから、正面からだとアレがさ。小さく形成された谷間を見せながら近づいて来て小声で俺に言う。


「我が名は他人の前で言うな。聴かれてしまえばそなたの身の保障は出来んからな?」


 何の脅しだよ。そりゃ、命は惜しいから従うけどさ。


 俺は仲居さんに付いて部屋を出る。そういえば履いてた靴が新品みたいにきれいになってるのにようやく気が付いて急いで脱いだ。


「高鉢様は神との理で食せない物はございますか?」


 仲居さんに聞かれたが、神さまに断られた食べ物は知らない。わ、わかってるさ、今のは冗談だ。冗談だ!宗教の戒律だろ?


「ない」


 さも、知ったかカマして堂々と答えた。し、知ってたからな!


 通された部屋は掘炬燵みたいな構造をしたテーブル席。豊音ちゃんや仲居さんは昔ながらの和装に見えるが、この部屋は少し時代が違う気がする。


 お茶を出されて少し待つと食事が運ばれてきた。昔ながらの中華そば、或いはソーキそば?そんな麺類だ。

 食べた感じは鶏出汁素麺と言えばわかるかな?

 鶏出汁素麺と葉もの野菜。生ではなくこれも炊いたのだろう。味がついている。


 夜中にようやく夕飯、夜食?にありついた俺は仲居さんが用意した寝所へと向かった。


 板の間に畳らしき敷物があり、その上に布団がある。何だか時代が違う気がするが、ここは日本ではないのだと自分に言い聞かせて眠りについた。

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