15・讃岐三白
レジャーランドの件以外にも香川へ行った時の事を思い出した。
香川には讃岐三白と言うものがある。塩、砂糖、綿の3つ。
塩は分かる。海が近いから。綿?砂糖?
香川で作っていたのだから、香川出身であろう初代がその3つを伝えているのではないかと聞いてみた。
「綿ですか、確かに更に西へ行った所で作っていますよ。初代様の号令で大陸南西部沿岸からもたらされたものです。適度に温暖で晴れが多く水を使える所が良いので、あまり耕地に適して居ない井関湖沿岸で栽培されています。砂糖は三本松あたりですね。東の南岸や引田に自生していた物を品種改良しています。あと、女木にはまた種類の違う砂糖が栽培されています。こちらは南方から伝来した物で、本土では栽培に適しません」
あったよ、マジで。
「じゃあ、オリーブはありますか?」
「おりーぶとは何でしょうか?」
オリーブは通じなかったが油の採れる木の実をつけると説明したら心当たりがあるらしい。
「油木ですね。元は西方ルーテシアの南方沿岸原産で、初代様の号令で東にもたらされたそうですが、初代様の言う通りに小頭で育てても上手くいかず、牟礼や荘内島に植えたものが上手くいったそうですよ。荘内島では今に伝わり、相応に栽培されています」
ん~、オリーブを探せと号令できるのであれば、少なくとも大正以降、下手をしたら戦後の人物だったかもしれない。
考え込んでいると技術者さんにどうかしたかと尋ねられたが、どうと言うことはない。
日本に綿花が伝来したのは8世紀らしいが、定着せず、実際に栽培が始まるのは再度中国から伝来した戦国時代の事になる。
砂糖きびが讃岐で栽培されて和三盆として商品化したのは江戸時代。きっと初代の来訪時にはどちらもなく、オリーブと共に探し求めたのだろう。そうだ、パスタは無いがぴっぴにオリーブ油かけたら新たなメニューが増えたりしないか?
「油かけですか?屋体料理にありますが、高貴な方々はあまり好まないようです」
あるんかい!何でもあるな。釜玉や生醤油の代わりか?え?しかも、内容は鶏そぼろと香草をオリーブ油で煮たものをかけて食べるらしい。店によっては唐辛子でピリ辛に仕上げるんだとか。パスタに無かったか?あと、本番ジャージャー麺あたりか。ベトナム料理の次はイタ飯か四川料理かよ、おい・・・
さて、そうこうしているうちに象頭での講習も終わった。
唐箕と千石通しはホイホイ広めている。来週は砂糖の町三本松に出向く予定だ。しかし、本来同時に広めて良さそうな千歯こきはまったく伝えてすらいない。確かに既に脱穀機の試作は依頼している。来月の麦刈り時には村へ持っていき試験を予定しているが、それはある重大な話を実証するためでもある。
その話は、試験の時で良いだろう。何せ一人でどうにかできる話ではない。今後に大きな影響がある話だけに・・・
仕事を終えた後は象頭の社に登ってみた。社の北には清水寺みたいな造りの展望台があり、ここは年に一度の祭りには巫女が海に祈りを捧げる場所なんだそうだが、常には参拝者もここから海へ祈るらしい。参拝先が社でないのがイミフ・・・
そもそも象頭の社は巫女の住居兼常の祈りの祭壇であって、祭神は海自体だから、社に招けない神をこの高台からいつも祈るという考え方らしい。確かに、酷いときには年に1mも海面上昇が起きたそうだから、こんな内陸の高台にあるというのも納得だ。
で、ここから見える島が讃岐富士と言われる飯野島だ。うん、島なんだよ、海面上昇を実感する。