14・少し遠出をしてみた
都周辺に唐箕と千石通しを広めたが、流石にそれだけでは少なすぎるので少し離れた地域にも普及させることにした。
まずは鉄道で行ける主基や象頭。
主基までは機関車で3時間ほどだった。都から主基までは丘陵地帯を機関車が走る。主基の駅で降りるとすぐ近くに大きな建物があり、これが主基の社だそうだ。
日本の神社みたいに鳥居があるわけではない。どちらかというと教会に近い。建物がデンと構えている感じだ。
ちなみに、この社の巫女は人前に出ても良いのだそうで、それが宮と社の違いとなっている。宮の場合は周りを塀で囲んでおり、お寺に近い。しかも、更に建物内部が外から見えない構造だ。
宮が都から隔絶された存在なのに対して社は街の中心である。
社に向かって道が延び、 道の両脇は様々な店があり、賑わっている。
そして、この地は内陸にも関わらず、海から続く渓谷があり、自然の運河として社の西には港がある。線路はその南側、綾川河口を渡っている。まったく河口の雰囲気が感じられない不思議な場所となっている。
主基から丘を越えた綾川沿いは扇状地であり、稲作が盛んに行われている。少し東は丘陵地帯で畑作中心なのとは雲泥の差だ。ただ、治水はまだ甘いようで、きちんと堤防や用水路を整備すればもっと水田を広げることが出来そうだ。
ここらでは既に田植え準備に入っている田んぼがちらほら見える。
そんな村の1つで新たな唐箕と千石通しの組み立てと講習を開いた。ここの庄屋によると、この東にある礼於馬という場所は本土中西部一の牛の産地で、ここから農耕牛が各地へ運ばれ、借耕牛と言われて活躍しているそうだ。主基の先、栗熊近辺では礼於馬の牛を使った麺類が名物となっており、農閑期には各地から観光客が訪れるらしい。主基から機関車で一時間弱なので、主基の社に雨乞いに来たついでに寄るコースが出来上がっているらしい。礼於馬では既に小規模ながら食肉研究が行われており、今後はこの研究を促進することで、礼於馬牛をブランド食肉として売り出せるかもしれない。
礼於馬というのは聞いたことがある。確か、同じ場所にレジャーランドがあったはずだ。
開演はバブルの終り頃で、瀬戸大橋や新空港の開港などで香川県が活気に満ちた時期だったと思う。その後、景気後退で一度は休園なんて事態まで起こったが、再度、リニューアルしてそれなりにやっているらしい。
しかも、あの周辺を訪れた時に聞いた話によると、あのレジャーランドが出来るはるか以前、近郊の酪農家らが現在のレジャーランド周辺を開墾、整備して、共同で大牧場を作る構想が持ち上がったことがあるらしい。つながりが無い筈の東とうどん県だが、実はどこかでつながりがあるのではないかと思ってしまった。
閑話休題
今日はそんな曰くのある主基で一泊し、明日は象頭に向かうことになっている。やはり、この土地でも俺を誘いに来る者は居なかった。
次の日は朝、主基を出て、途中の駅で昼食を食べてから昼過ぎに象頭に到着した。
主基と違い、街の中に社は無い。象頭の社は象頭山の中腹にあり、来訪者の多くは少し内陸なのに海の関係者ばかりで、宝物資料館には古今東西の珍しいものが陳列されていた。
この象頭にも土器川という大河が流れており、象頭よら上流ではかなり美味しい米が栽培されているらしいが、都までは流通していない。西へ来ると米所が多く、機関車は更に財田川沿いへ出ることになるそうだ。
こうした扇状地はかなり平坦であり、まず、耕うん機を試すなら西だなと確信を得た。