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デスゲームサバイバー

「ほら見ろ。結局俺とあなたの戦いになった」

「優しいのね、ボウヤ。全員を殺さず、ただ倒すだけだなんて」

「デュエルモードだぞ?」

「あらそう。ふふ、いやいや、楽しくなってきたぁわ。知ってる? 災害獣がこの町に到達すると、私たちプレイヤーはプレイヤーに攻撃が出来るの」

「なに?」

「実証済み。きゃは、そしてそれはもう、始まってる!」

 短剣二刀流。もちろん、両手でソードダンスを扱えるクレナのような馬鹿げた力はないものの、動きが素早い。

 低い軌道を保ってぬるぬる動きつつ、下半身を執拗に狙う。

 そして、ソードダンス《グリムソード》発動。三連撃だが軌道がかなり防ぎにくい技だ。

 脇、股、急に首。

攻撃全てをオートガードで、それも斧で防いだクロンはオメガの腕を掴む。

「ほいさ」

 地面に倒す――同時に足に一撃喰らった。毒効果のある攻撃だ。

「ちっ」

「相変わらずの身のこなし。いやいや、クロン君、君はやっぱり最高の男だよ」

「お褒めに預かり……なに?」

 クロンは動きをぴたりと止めて、オメガに向き直った。

 不意に動きを止めたクロンを前に、オメガは戦闘態勢を解かなかった。

「自慢じゃないが俺のなりは美少女だ。なんで男だって気づいた」

 質問のあと数秒オメガは固まり、やがて声を上げて笑った。観念したような笑みだ。

 足元の部下たちも不思議そうにオメガを見上げている。

「いやあ、ごめんごめん、クロンっちが分からないのも仕方ないよね。ていうか隠れるの上手過ぎだし顔も違うから最初気付かなかった私が悪いか。

 君のこと知ってるよ、クロンっち。まず君は私の名前も知らないし、顔も見たくないだろうけどさ」

「何を言っている」

 質問の答えを知っているクロンは、それが嘘であることを祈って質問を続けた。

「私も君と一緒にあの世界にいたのよ。教えてあげてもいいわよ?

開放クリアされた後の世界を。そうそう、私はデスゲームサバイバー。あなたと違って生き延びた」

デスゲームサバイバー。

耳にするだけで反吐が出る単語に、クロンは眩暈を覚えた。

「あの世界を……」

「そう。そして私はあの世界でいうところのPKを専門にしていたユニット……ああ、違う。

 あっちの世界ではギルド、だったわね。PKギルドのリーダー」

気味の悪い笑い声を上げたオメガはナイフをプラプラとさせた。PK、つまりプレイヤーキル。死ねば死ぬ世界で殺害行為を行う。

どこの世界に行っても、いいや、ゲームだからこそ残虐な行為を行う最低な人間は多い。

オメガもその一人であり、しかも生き延びている。

「ゲームの中が監視されているわけでも録画されているわけでもない。あの世界は良かった。

 人を殺しても元の世界に戻れば一般市民。

 でもここに来てよかったわぁ。また、いっぱい人が殺せる」

「もう、喋るなよ、お前」

 剣を引き抜いて鍔迫り合い。生きていちゃいけない人間も、世界にはいる。

 いや、生きているべき人間が死ぬ世界に、自分たちはいる。

 不条理の中で生きていることは辛い。にもかかわらずオメガのような存在がのうのうと生きていることが許せない。

「はっは! いいねえいいねえ、その顔! 殺人鬼の血が流れてるよ、あんたも!」

「一緒にすんじゃねえ!」

「あんたの名前は知ってるよ。最期の最期でメンバー一人だけになっても戦いを止めなかった馬鹿。

 その上あんたはものの見事に横からかっさらわれて、超ウケる」

「ぶち殺す!」

「殺しの歴が違うのよ!」

 短剣と剣が上下でぶつかり合い、金属音がエフェクトと一緒に耳の横を通り抜ける。

 違う。もっとだ。

 音よりも早く、エフェクトよりも早く。

 皮肉にも、ふたりはこの世界始まって以来初めて、デスゲームサバイバーとデスゲーム脱落者との戦いを繰り広げていた。

 お互い最終局面まで生き延びていただけあって、あまりにレベルの高い戦いを繰り広げた。

 剣ではなく手をのものを執拗に狙ってくるオメガの脳天を銃弾でぶち抜こうと引き金を引くクロン。

 弾がなくなると同時に、別の手で持っている剣を振り落とす――

 オメガがこれを受け、激しい押し切りあいが始まった。

「ねえ、いっこ聞きたいんだけど、私はこの世界をクリアしたくない。だってこんなに素晴らしい!

 人がいっぱい殺せる!」

「気持ち悪いんだよサイコパスが」

「精神異常? 違う違う、私は人の本能に正直なだけ。人は支配される側か殺す側しかいないのよ!」

「うざったい二択をたらたらと!」

 クロンの剣をすり抜け、背中に斬撃を喰らえようとするオメガ。

クロンはすぐさま後ろ側に剣を回してこれを受け、逆に銃口を背中側に向ける。

 弾丸がいくつも放たれ、マガジンチェンジをするより捨てて再装備。二丁拳銃でとにかく撃ちまくる。

「でさ、質問の続き。あんたはこの世界の住人なんでしょ? 死んでるんだからさ。何のために戦ってんの?」

 クロンの腕が止まった。

「あはっ、ねえねえ、死ぬためにこの世界で必死に生きるってどういう気持ち?」

 銃口が震える。オメガを捉えられなくなる。

「俺は……」

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