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お祭り騒ぎのダンジョンで

 【クレアドラ回廊】は既に攻略されていると言っても過言ではない。

 現に、クロンが来た頃には……立派な家が建っていた。

 さすがに始まりの町レベルで趣高い建物はないが、立派なコンクリで出来た四角い建物が幾つも立ち並んでいる。文明開化を感じさせる様相だ。

 至る所で店が開いており、中々の活気で満ちていた。土だらけの天井には祭りの飾りみたいな電飾がついて無理やり明るくなっていた。

「お祭り騒ぎだな」

「ま、ここも最初は殺気で満ちてたんよ~? ようやく生活できるレベルに落ち着いたって感じかな」

「なんでそんなことになってんだ?」

「あはは、アレ」

 苦笑したナギハの先には、ひときわ簡素だが存在感のある建物があった。

 門には番兵みたいなものも立っているし、中々物々しい。

「あー、ここの隊長、クレナの友達なんですけど」

「今会議中だ。終わるまで待て」

「でっきれば~、その会議を知りたいな~って。あらやだ、こんなところに大切な鍵が。君のだよね?」

 ナギハがちらつかせた鍵の束を見て番兵がハッとすると、すぐに追いかけっこが始まった。

 中々仕事が早いナギハに心の中で礼を言いつつ、クロンは建物の中に入った。

 入った途端――

「そんな作戦プランで死人が出たらどうするの! 私たちはリーダーの駒でもクラッススのものでもないのよ!」

「言葉を返すようだが、お嬢ちゃん。俺らはクライアントのクラッススに金を払われている。確かにあんたの命令に従うよう言われたが、速く攻略しないとアイテムを取られちまう。

 あんたがこの町を封鎖してくれるっていうなら話は別だが」

「それは許しません! 私たちは新しい場所を提供する必要があるんです。そうすれば、多くの人が強くなれる。ここは始まりの町以上に前線のアイテムが多く取れる」

「クレナさんの言う通りです。町を封鎖して利権を独占する。それはセカンダーのやり口ですわ」

「俺の父さんのことを思ってくれているなら、ここは従ってほしい」

「……邪魔が入ったな。休憩にしよう」

 クロンに気づいたらしいクラッススの部下が空気でも吸いに行ったか、外に向かった。

 明らかに場違いのクロンを見るクレナの瞳は険しかった。数か月前に見た者とは別物。それこそ、ショーウィンドウの中に並ぶ宝石がそっくり替えられたように。

「……会議はまたあとにしましょう。クロン君、どうやって入ったの?」

「ミュウル。ナギハも来てるから遊んでやってくれ」

 人払いと質問の答えを同時にしたクロンは会議室とは名ばかりの空間の中へ入っていった。

 洞窟の中にルームライトと机、地図や書類。掘っ立て小屋と変わらない。

「クロンさん、お久しぶりです。あとでまた、ゆっくり話しましょうね」

「当分はいるつもりだからそうさせてもらう」

 ミュウルはにっこり微笑むと、良い匂いを残して出口へ去って行った。

 さて、とクロンは長い髪を軽くといた。

「クレナ、調子はどうだ?」

 クロンはあえて、と言わんばかりに絵がをを浮かべて質問した。

 何か別のことを言われると思っていたのか、クレナは少し驚いたような顔をした後溜息を吐いた。

「どうもこうもないわ。彼のお父さんが無理を押し付けてくるの」

「それは君のリーダーも同じじゃないか」

「クラッススの息子、ああ君がゼスか。お父さんに言っておいてくれ。次、オメガを見つけたら潰す」

「……君に父さんが見張りを着けていると?」

「ああ。クレナにはアルファが付いているよ」

「あの鬱陶しい見張りには気づいていたわ。ずっと。私は潰さないから。それより、何しに来たの? クロン君」

「久しぶりに会ってつれないことを言うなよ。今日は様子を見に来たんだ。大丈夫か?」

「私は大丈夫。ずっと変わってないよ。まあ、この速さは疲れるけど、そんなこと言ってられない」

「そうだろうな。まあなんにせよ、焦らずにやれ。規律を重んじるのは結構。だが、アーサーやクラッススに挟まれた生活は止めておけ」

「なあ、悪いが、君は一体、誰だ?」

 ゼスがふたりの間に割って入った。彼にしてみれば、数か月共に戦った仲間と、急に出てきた美少女風の男、どちらの話を聞き、どちらを庇うべきかあまりにわかりきっていた。

「ああ、すまない。俺はクロン。クレナの友達だ」

「君にこんなかわいいお友達がいたとは。前線で見ない所を見ると、攻略組じゃない、よな?」

 ゼスの言い分は正しい。ミュウルでさえ前線に出ている。

 最早アーサーの側近以外は全員攻略に乗り出していると言っても過言ではない。

 つまり、身元を知られていないクロンは攻略組と言うよりは本当にただの友達でしかない。

「攻略する気はないが、友達を救う気はある。ここ最近、君から見て彼女はどうだった?」

「……想像も絶する速度で攻略している。さすがだと思う」

「そっか。次の攻略はいつやるんだ?」

「明日。でも、絶対的にカバーが足りないのに進めようとしてるのよ。上から急いで攻略しろって言われててね。ああそうだ、クロン君も参加してくれない?」

「ああ……なるほど?」

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